ホテルの稼働率(OCC)とは?経営成功の鍵となる稼働率向上のポイントを解説!

「なかなか予約が埋まらない…」
「競合よりも客入りが悪い気がする…」
「利用者は多いのに、収益が伸びない…」
このような悩みをお持ちではありませんか?
近年の宿泊施設経営は、客室を用意するだけでは安定した売上を確保することが難しくなってきています。成功しているホテルや旅館の多くは、数値データに基づいた戦略的な運営を行っており、その中でも特に重要視されているのが客室稼働率(OCC) という指標です。
客室稼働率を正しく理解し上手に活用することにより、売上の安定化や収益アップが期待できるでしょう。
本記事では、宿泊稼働率の基本的な考え方から、業界平均値の比較、客室稼働率を高める具体的な施策までを分かりやすく解説していきます。
ホテルの稼働率(OCC)とは?
客室稼働率は「OCC(Occupancy rate)」とも呼ばれ、宿泊施設の経営状況を把握するうえで、基本かつ重要な指標の一つです。
本章では客室稼働率の概要に加え、施設経営を安定させるために把握しておきたい、その他の指標についても解説していきます。
OCCの定義
客室稼働率(OCC)とは、宿泊可能な客室のうち、実際に利用された客室の割合を示す経営指標です。この数値が高いほど予約状況が良好で、客室がしっかりと稼働していることを意味し、反対に稼働率が低い場合は、宿泊利用が少なく経営に課題がある可能性を示しています。
OCCは収益に直結する非常に重要な指標のため、日々のチェックを習慣化することが大切です。定期的に確認することで、集客施策やキャンペーンの効果を数字で把握・評価することも可能になります。
さらに、一般的に稼働率が安定している施設は、経営が健全と見なされる傾向があり、銀行や投資家からの資金調達において有利になる点も、OCCが重要視される理由の一つです。
他の経営指標
宿泊稼働率を高めることは重要ですが、その数値だけを追いかけても、安定した経営につながりません。宿泊施設の運営を健全に保ち、収益パフォーマンスを最大化するには、客室稼働率以外の指標にも注目し、バランスの取れた経営を目指すことが大切です。
ここでは、特に重要な2つの経営指標「ADR」と「RevPAR」について解説します。
ADR(Average Daily Rate)
ADRとは「客室平均単価」を意味し、実際に宿泊利用された客室の1室あたりの平均販売価格を表す指標です。基本的に、ADRは1日ごとに算出され、以下の計算式で求められます。
ADR=宿泊売上合計÷販売した客室数 |
例:
1日の宿泊売上が100万円、販売した客室が100室の場合、
1,000,000円÷100室=10,000円
このとき、ADRは「1万円」となります。
ホテルの宿泊料金は、予約経路(自社ホームページやOTA)、宿泊プラン内容、部屋タイプなどによって異なることが一般的です。ADRはこうした価格のばらつきを平均化した指標なので、適切な料金相場を把握するのに役立ちます。
RevPAR(Revenue Per Available Room)
RevPARは「販売可能な客室1室あたりの収益」を表す指標で、客室稼働率(OCC)と客室平均単価(ADR)の数値を最適化させて、収益を最大化するために用いられます。
RevPAR=客室稼働率(OCC)×客室平均単価(ADR) |
この計算式からも分かるように、RevPARはOCCとADRのバランスに大きく左右される指標です。どちらか一方に偏った運用をしてしまうと、経営全体のバランスが崩れ、収益の最大化が難しくなります。
たとえば、稼働率を高めようとして宿泊料金を低く設定しすぎると、収益が十分に確保できません。一方で、客室単価を上げすぎると予約数が減り、稼働率の低下を招くリスクがあります。
RevPARの向上を意識しOCCとADRの適正なバランスを保つことが、収益性の高い経営を実現する重要なポイントです。
ホテル稼働率の計算方法と目安
客室稼働率(OCC)を日々確認することが、宿泊施設の利益を最大化するために重要です。続く本章では、客室稼働率の算出方法と、目指すべき稼働率の目安について、国内の平均稼働率のデータをもとに詳しく解説します。
稼働率の計算式
客室稼働率は、以下の計算式で求めることができます。
客室稼働率(OCC)= 宿泊利用された客室数÷販売可能な客室数× 100(%) |
具体例として、ホテルAの事例を見てみましょう。
- 宿泊利用された客室数が50室
- 販売可能な客室数が100室
この場合の計算式は次のようになります。
50室÷100室×100%=50%
つまり、ホテルAの客室稼働率は50%ということです。
稼働率が高ければ高いほど客室が有効に活用されており、空室が少なく収益性が高い状態だと言えます。また、客室稼働率をもとに「空室率」を算出することも可能です。
空室率=100%-客室稼働率(%) |
たとえば、客室稼働率が70%であれば、空室率は30%となります。
国内ホテルの平均稼働率
過去の宿泊施設データを参考に、全国および地域別の客室稼働率の目安を把握しておきましょう。客室稼働率は、地域や宿泊施設のタイプによって大きく異なるため、自施設の立地や業態に合ったデータを参考にすることが重要です。
まずは、都道府県ごとの2024年の客室稼働率を見てみましょう。
【都道府県別の客室稼働率(2024年1月~12月)】
順位 | 都道府県名 | 客室稼働率 |
---|---|---|
全国平均 | - | 60.5% |
1位 | 東京都 | 76.3% |
2位 | 大阪府 | 75.8% |
3位 | 福岡県 | 71.7% |
4位 | 石川県 | 67.5% |
5位 | 愛知県 | 66.8% |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
43位 | 新潟県 | 45.4% |
44位 | 群馬県 | 45.4% |
45位 | 山梨県 | 43.3% |
46位 | 和歌山県 | 40.9% |
47位 | 長野県 | 39.8% |
1位の東京都(76.3%)と、47位の長野県(39.8%)を比べると、30%以上の開きがあることが分かります。このように、客室稼働率は地域によって大きな差があるため、地域特性を考慮した戦略設計が不可欠です。
特に大都市圏では高稼働率の傾向が見られ、東京都・大阪府・福岡県などの都市では70%を超える水準となっています。近年ではインバウンド(訪日外国人旅行者)の増加も影響しており、国際空港に近い地域やアクセスの良いエリアでは、稼働率が高くなる傾向があります。
一方、観光地があっても都市圏からのアクセスが不便な地域では、稼働率が低いケースも多いため、地域ごとの課題や戦略の違いを理解することが重要です。
続いて、宿泊施設のタイプ別に稼働率の傾向を見ていきましょう。
宿泊施設タイプ別 宿泊稼働率(%)
年度 | 全体 | 旅館 | リゾートホテル | ビジネスホテル | シティホテル | 簡易宿所 |
2015年 | 60.3 | 37.0 | 56.0 | 74.2 | 79.2 | 27.1 |
2016年 | 59.7 | 37.1 | 56.9 | 74.4 | 78.7 | 25.0 |
2017年 | 60.5 | 37.5 | 57.5 | 75.3 | 79.5 | 28.0 |
2018年 | 61.2 | 38.8 | 58.3 | 75.5 | 80.2 | 30.2 |
2019年 | 62.7 | 39.6 | 58.5 | 75.8 | 79.5 | 33.4 |
2020年 | 34.4 | 25.0 | 30.0 | 42.8 | 34.1 | 15.5 |
2021年 | 34.3 | 22.8 | 27.3 | 44.3 | 33.6 | 16.6 |
2022年 | 46.6 | 33.1 | 43.4 | 56.7 | 50.1 | 21.2 |
2023年 | 57.0 | 36.7 | 51.9 | 69.2 | 68.8 | 25.1 |
2024年 | 60.5 | 36.8 | 54.6 | 73.9 | 72.4 | 29.0 |
2020年から2022年は、新型コロナウイルスの影響で全体的に稼働率が落ち込み、宿泊施設タイプによる差も小さくなりました。しかし、それ以外の年では施設のタイプごとにはっきりとした傾向の違いが見られます。
近年ではビジネスホテルの稼働率が最も高く、次いでシティホテル、リゾートホテルと続いています。一方で、旅館や簡易宿所は、稼働率が低めという傾向があり、差別化やマーケティングの工夫がより求められる状況です。
採算ラインとなる稼働率の目安
宿泊施設の経営では、施設タイプごとに「採算が取れる稼働率(損益分岐点)」が異なる点に注意が必要です。先ほどお伝えした通り、2024年の日本全国の稼働率は60.5%ですが、以下のように施設タイプごとの採算ラインは大きく異なります。
- シティホテル:72.4%
- ビジネスホテル:73.9%
- リゾートホテル:54.6%
- 旅館:36.8%
- 簡易宿所:29.0%
自施設のタイプに応じて、どの程度の稼働率を目指すべきかを明確にしておくことが重要と言えます。
宿泊業では、季節ごとの需要の波に合わせた年間計画の策定が不可欠です。まずは過去の実績データをもとに、繁忙期と閑散期を明確に把握しましょう。
<繁忙期の例>
- ゴールデンウィーク、夏休みなどの大型連休
- 地域の祭りやイベント開催月
- 紅葉シーズン、行楽シーズンなど
<閑散期の例>
- 冬季(12〜2月)、梅雨時期
- イベントや連休が少ない月
年間計画の立て方としては、以下のステップが効果的です。
- 月ごとの予想稼働率を設定
- 売上・経費・利益の月別シミュレーションを実施
- 繁忙期には収益最大化、閑散期には稼働率維持を意識した戦略を組み立てる
計画的に稼働率を管理することで、通年を通した安定経営につながります。
また、新しくホテルを開業する場合、開業初年度は実績データがないため、稼働率の予測が難しいのが現実です。そこで、以下のようなステップで目標稼働率を設定しましょう。
- 開業予定エリアの宿泊需要を調査
- 同地域の競合施設の稼働率・価格帯をリサーチ
- 繁忙期・閑散期の見込みをもとに価格戦略を設計
初年度は「目標」と「実際の稼働率」を毎月比較・検証し、柔軟に戦略を見直すことが重要です。最初から高い稼働率を狙いすぎず、認知度向上とリピーター獲得に注力することが長期的な成功につながります。
ホテル稼働率を上げるための基本戦略
ホテルの稼働率を向上させることは、安定した経営を継続するうえでとても大切なポイントです。ここでは、客室稼働率を高めるために欠かせない、基本的な戦略について解説します。
料金設定の最適化
客室稼働率を高めるためには、ダイナミックプライシングの導入が非常に効果的です。
ダイナミックプライシングとは、需要と供給の変化に応じて客室価格を柔軟に調整する価格戦略のことを指します。「変動料金制」や「価格変動制」とも呼ばれ、収益の最大化を目的とした料金管理手法として、多くの宿泊施設で活用されています。
この手法を導入することで、その時々の需要に応じた最適な価格設定が可能となり、結果として稼働率の向上や売上の最大化が実現できるでしょう。
料金を変動させる主な要素としては、以下のようなものがあります。
- 季節や曜日(繁忙期・閑散期)
- 連休やイベント(年末年始、ゴールデンウィーク、シルバーウィークなど)
- 周辺の競合施設の価格動向
たとえば、
- 年末年始や大型連休など、宿泊需要が高まる時期には価格を引き上げる
- 平日や閑散期には価格を下げて集客を図る
- 地域のイベント開催に合わせて価格を調整する
このように需要の増減に合わせて価格を調整することにより、収益機会を逃さず、稼働率の底上げにつなげることができます。
さらに、自社の価格設定が適切かを見極めるためには、競合施設の価格を定期的に調査・分析することも重要です。競合と比較することで、自社の市場ポジションが明確になり、適正価格の見直しにも役立ちます。
マーケティングとプロモーション戦略
近年では、旅行者の多くがインターネットを通じて情報収集し、宿泊予約をするのが当たり前になっています。そのため、宿泊施設を経営するうえでは、デジタルを活用した集客戦略が欠かせません。
中でもSNSの活用は顧客との接点を増やし、ホテルのブランド認知やサービスの魅力を広める効果的な手段です。日常的に情報発信を行うことで、潜在顧客との関係性を築きやすくなり、集客にもつながります。
さらに、新規顧客の獲得と同様に重要なのが、宿泊施設の”ファン”を育てることです。リピーターが増えることで安定した稼働率の確保につながり、経営の基盤が強化されていくでしょう。
そのためには、顧客情報の蓄積と分析が不可欠。予約履歴や属性、滞在中の要望などの顧客データを蓄積し活用することで、以下のような取り組みが可能になります。
- ターゲットに合わせた最適なプロモーションの企画
- 一人ひとりに寄り添った、特別感のある接客や体験の提供
- 滞在満足度を高め、「また来たい」と思ってもらえる常連客の育成
こうした施策によって顧客満足度が高まり、長期的な稼働率の安定化につながります。
サービス品質の向上とブランディング
客室稼働率を高めるためには、宿泊サービスの品質向上が有効です。サービスの質が高まることで顧客満足度が向上し、「また泊まりたい」と感じるリピーターを増やすことができます。
また、SNSやOTAなどにポジティブな口コミが投稿されれば、新規顧客の獲得にもつながるでしょう。口コミは、現代のホテル選びにおいて重要な判断材料のひとつです。
顧客満足度を高めるための具体的なポイントは、以下のような取り組みが挙げられます。
- 顧客情報をもとに、一人ひとりのニーズに合った柔軟なサービスを提供する
- スタッフへの定期的なサービストレーニングを実施し、接客品質を継続的に向上させる
- 客室内の快適性、アメニティの質や使い勝手を見直し、細部まで配慮する
- 滞在後のフィードバックを収集し、サービス改善に活かす
さらに他施設との差別化を図るには、独自のブランディングが重要です。たとえば、
- サウナやグランピングなど、近年注目されている観光トレンドを取り入れる
- 地元の食材や文化を活かした地域密着型の体験を提供
- 記念日プランや、ファミリー・ペット連れ向けなど、ターゲットに応じた特別なサービス
パーソナライズされた顧客体験を提供することで、旅行者にとって忘れられない思い出をつくることができ、結果として高い稼働率とブランド価値の向上につながります。
最新トレンドとDXで変わるホテルの稼働管理
ここまで、客室稼働率を向上させるために欠かせない基本戦略について解説してきました。これらの施策を踏まえたうえで、社会の変化や旅行者のニーズの多様化に対応することも、今後のホテル経営において重要な視点です。
自施設の基本方針を固めたうえで、ここから紹介する最新トレンドやDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用事例も、ぜひ戦略の参考にしてみてください。
コロナ後の新しい旅行トレンドへの対応
新型コロナウイルスの影響を経て、旅行のスタイルにも大きな変化が見られています。たとえば、自宅から1~2時間程度でアクセスできる近場の観光地を楽しむ「マイクロツーリズム」もその一例。
このような旅行者に向けては、地元の文化や特産品に焦点を当てた体験型アクティビティの提供が効果的です。地域ならではの魅力を体験できるサービスは、「また来たい」という気持ちを喚起し、リピーターづくりにもつながります。
また、近年注目されているのが、ヘルスツーリズムやウェルネスツーリズム。これは、心身のリフレッシュや健康維持を目的とした新しい旅行スタイルです。
【宿泊施設として取り入れたい具体的な取り組み例】
- ヨガやストレッチなどのアクティビティの提供
- 自然の中でのウォーキングツアーや朝の散策
- 地元食材を活かしたヴィーガンやグルテンフリー対応のヘルシーメニューの開発
- 温泉やサウナとの組み合わせによるリラクゼーション体験
これらの取り組みにより、宿泊の付加価値を高めると同時に、他の施設との差別化を図ることができます。
テクノロジー活用による効率化
ホテル経営において、テクノロジーの導入は業務の効率化だけでなく、収益の最大化や顧客満足度の向上にもつながる取り組みです。たとえば、AIを活用した需要予測は、従来の人間による経験や勘に頼った予測と比べて、高い精度で稼働状況や予約傾向を把握することができます。
リアルタイムで需要の変動を分析し、最適な価格調整のタイミングや価格幅の設定を自動で行うことにより、ダイナミックプライシングの効果を最大化できるでしょう。
また、セルフチェックイン機の導入により、フロント業務の無人化・省力化が進み、人件費の削減と業務効率の改善を同時に実現できます。チェックインやチェックアウトの自動化で、スタッフは本来注力すべき接客や施設管理といった価値の高い業務にリソースを集中することも可能です。
さらに、チャットボットやAIコンシェルジュの導入により、カスタマーからの問い合わせに24時間自動対応できるようになります。
サステナビリティへの取り組み
近年、持続可能な観光(サステナブルツーリズム)への関心が高まる中、宿泊業においても環境や地域社会に配慮した運営が求められています。たとえば、再生可能エネルギーの活用や、省エネ設備・節水型機器の導入は、エネルギー消費の削減に貢献し、環境負荷の低減につながる取り組みです。
プラスチック製アメニティの削減を目的に、客室に常備せずフロントで必要な分だけ提供するスタイルを導入したり、食品ロス削減として、提供した料理の残りを堆肥化して再利用する取り組みに変更する施設も増えています。また、バリアフリー設備やユニバーサルデザインの導入など、多様な背景を持つ宿泊者や地域住民への配慮も、現代の宿泊施設にとって重要な要素です。
これらの取り組みは、環境保護や社会貢献といったCSR(企業の社会的責任)を果たすだけでなく、旅行者からの信頼や共感を得るブランド価値の向上にもつながります。
サステナビリティはコストではなく未来への投資と捉え、地域や社会とともに成長していく姿勢こそが、これからの宿泊業に求められる経営スタンスです。
まとめ
客室稼働率(OCC)は、宿泊施設の経営状態を示す重要な指標です。稼働率を高めることで収益の安定化が期待できますが、RevPAR(販売可能客室収益)の数値を確認しながら、ADR(平均客室単価)とのバランスを意識することが必要になります。
客室稼働率を上げるためには、以下の3つの施策が有効です。
- 料金設定の最適化
- マーケティングとプロモーション戦略の強化
- サービス品質の向上とブランディングの構築
特にこれから開業を予定している方や収益改善を目指す方は、OCCを基軸とした計画的な運営とデータに基づく価格戦略・集客施策を実践することが成功の鍵となります。
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