ホテル業界の課題とは?いま直面している問題とその解決策を徹底解説

日本政府観光局(JNTO)発表資料によれば、2025年2月の訪日外客数は東アジア圏からの観光需要が堅調であると報告されており、ホテル業界は好調な動きを見せています。
しかし増加する需要に業界が対応できているかというと、必ずしもそうとは限りません。慢性的な人手不足やDX化への遅れなど、さまざまな課題に直面しています。
今回はホテル業界に共通する課題や、解決のための方法などを詳しく解説します。ホテル運営や新規参入でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
ホテル業界の現状と動向
ホテル業界はコロナ禍で宿泊需要が激減しましたが、現在は回復傾向にあります。中でもインバウンド需要は水際対策の緩和で急速に回復しており、今後も増加が見込まれます。
国内旅行需要も底堅く、高価格帯ホテルを中心に好調です。これらの観光需要が好調な理由の1つに、インバウンド需要の増加と政府の支援策があります。
帝国データバンクの「旅館・ホテル市場動向調査」では、2024年度の国内旅館とホテル市場は事業者売上高ベースで5.5兆円に達すると報告しています。
コロナ禍の低迷が回復した後は、インバウンドの増加や国内旅行支援策も相まって前年比で増収となった旅館やホテルが増加。過去最高を大幅に更新すると報告しています。
またコロナ禍で加速したのが、デジタル化です。非接触型サービスやスマートロック、AI活用のコンシェルジュサービスなど、効率化と顧客体験向上の両立を目指す動きが活発です。
業界の人手不足が深刻化する中、デジタル技術による省人化は喫緊の課題となっています。加えて経済情勢や感染症の再流行など、不確実な要素も考慮しなければなりません。
今後はインバウンド需要の本格回復とデジタル化の進展が、ホテル業界の成長を牽引すると予想されます。
ホテル業界に共通する5つの課題
ホテル業界に共通する課題は、おもに以下の5つです。
- 人手不足と採用難
- デジタル化対応の遅れ
- 建物・設備の老朽化
- 稼働率・収益性の低迷
- 多様化する顧客ニーズ
それぞれ詳しく解説します。
人手不足と採用難
ホテル業界は人手不足と採用難に直面しています。背景にはサービス業特有の長時間労働と、それに見合わない給与水準が挙げられます。
とくに転職の選択肢が多い若年層の離職が顕著です。現場では人手不足により残業時間が増加し、スタッフが疲弊して退職するという悪循環が続いています。
また給与水準が他産業と比較して低い傾向にあることも、人手不足に拍車をかける要因の1つです。
厚生労働省が発表した「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、宿泊業と飲食サービス業の年収は、最高値で男性が約324万円、女性が約229万円となっています。
これらの課題が複合的に作用し、慢性的な人手不足を誘発。サービス低下や従業員の負担増につながり、離職につながっています。
デジタル化対応の遅れ
ホテル業界におけるデジタル化対応の遅れは、オンライン予約システムやモバイル対応のニーズの高まり、データ分析や活用の課題として顕在化しています。
オンライン予約システムに関しては導入が進んでいますが、モバイルフレンドリー化していないなど対応が十分ではありません。
またデータ分析・活用においては、顧客データの収集は進んでいるものの、分析不足でマーケティングやサービス向上に活かせていない現状があります。
課題を克服するためには、オンライン予約システムの改善やモバイル対応の強化、データ分析基盤の構築とデジタル人材の育成が不可欠です。
建物・設備の老朽化
中小規模のホテルを中心に、建物や設備の老朽化も深刻な課題です。長年の経年劣化により客室の内装や水回り、空調設備などが老朽化し快適性を損なっています。
とはいえ設備更新には多額の費用がかかるため、経営体力に課題のある中小規模ホテルでは改修が進みにくいのが現状です。
ただし設備の老朽化は、顧客満足度を大きく左右します。集客力の低下に直結するため、競争力を維持するためにも設備の改修は不可欠です。
今後は省エネ性能の高い設備の導入や、バリアフリー化など時代のニーズに合わせた改修が求められます。
政府や金融機関による支援策の活用や、クラウドファンディングなどの新たな資金調達の方法も検討する必要があるでしょう。
稼働率・収益性の低迷
稼働率と収益性の低迷も課題の1つです。稼働率は季節や地域イベントの開催状況に左右されるため、閑散期には大幅に低下し収益を圧迫します。
また収益性を悪化させている要因として、客単価の下落に加え、オンライン旅行代理店(OTA)の手数料や広告費、各種販促費などを含む集客コストの増加が挙げられます。
OTA経由の予約で発生する送客手数料を始めとした集客コストは、利益を圧迫する要素の1つです。OTA依存からの脱却を目指し、自社予約システムの強化やリピーターの育成が求められます。
さらに需要が低く競合も多い状況下では価格競争に陥り、客室単価も下がります。
稼働率の平準化と収益を高めるためには、年間を通して魅力的なプランを開発し、ワーケーションなど新たな顧客層を開拓するなどの対策が必要です。
多様化する顧客ニーズ
顧客のニーズがますます多様化している中で、たとえばワーケーションの形態も変わってきています。
以前は「旅先で仕事ができれば十分」といった考え方が一般的でしたが、今では高速Wi-Fiや静かな作業環境を求める声が増え、
長期滞在でも快適に過ごせる設備が重要になっています。
また顧客層は単身のビジネス客やファミリー層、カップルやシニア層など多様です。それぞれニーズが異なるため、画一的なサービスでは満足を得られません。
今後は各顧客にパーソナライズされた、サービスの提供が求められます。ニーズに合わせた客室や食事の提供など、顧客の嗜好や目的に合わせた対応が重要になります。
ホテル運営に求められる課題対応の4つの視点
今後のホテル運営に求められる課題への対応策を、以下の4つの視点から解説します。
- 人材の確保と定着支援
- 業務の効率化とIT活用
- 差別化できるサービスの導入
- 効果的なプロモーション施策
1つずつ詳しく見ていきましょう。
人材の確保と定着支援
人材の確保と定着のためには、従業員が長く働き続けられる魅力的な職場づくりが不可欠です。充実した教育体制の構築はスキルアップと成長を支援し、従業員の定着率を高めます。
具体的にはOJTだけでなく、階層別の研修や専門スキル向上のための外部研修など、個々のキャリアパスに応じた成長機会を提供することが重要です。
また深刻な人手不足を補うためには、外国人労働者の積極的な活用も視野に入れるべきでしょう。受け入れのための環境整備や、コミュニケーションを支援する体制を構築します。
さらに業務内容によっては、予約受付や事務作業などのリモート化も有効です。柔軟な働き方を採用することで、新たな人材の獲得にもつながります。
業務の効率化とIT活用
業務効率化とIT活用は、人手不足の解消と顧客満足度向上に効果的です。
人手不足の解消を目的に、大手ホテルチェーンなどでは自動チェックイン・アウト機の導入や、モバイルアプリを活用した手続きの簡略化などが進んでいます。
またDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した、ホテル全体の業務プロセスをデジタル技術によって変革する取り組みも始まっています。
たとえばAIを活用した問い合わせ対応やコンシェルジュサービス、IoTセンサーによる客室管理の自動化などです。
顧客側にとっても待ち時間の短縮やスムーズな手続きにつながるなど、デジタル技術を活用したサービスは利便性を高め、顧客満足度の向上に貢献しています。
差別化できるサービスの導入
ホテル間の競争で優位性を確立するためには、差別化できる独自のサービスの導入が必要です。画一的なサービス提供では埋もれてしまい、顧客の記憶に残りません。
差別化を図るためには、その土地ならではの文化や自然を体験できる体験型プログラムの導入が有効です。
地元の食材を使用した食事プランや伝統工芸体験など、同業他社との差別化につながり、顧客の記憶にも刻まれやすいプランをイベントを企画します。
また近年注目のワーケーション需要に合わせた企画も効果的です。さらに特定の趣味を持つ顧客向けのプランなど、ニッチな需要に応えるのも差別化のポイントとなります。
効果的なプロモーション施策
効果的なプロモーション施策は集客力を高め、収益向上に直結します。中でも自社サイトの強化やSNSの活用、OTAの集客バランスの調整などは増収に有効な手段です。
自社サイトの強化は、直接予約を増やす重要な基盤となります。使いやすい予約導線を構築したり、予約アプリの開発でホテル同士の比較に持ち込まないといった対策が効果的です。
加えて自社サイトの強化は、OTAの手数料削減にもつながります。とはいえ、OTAの高い集客力はメリットになるため、OTAと連携しつつ直予約の比率を高めるのが効果的です。
またSNS発信はターゲット層へのリーチを広げ、エンゲージメントを高めます。ユーザー参加型の企画やイベント情報の告知のほか、インフルエンサーとの連携なども有効です。
業界課題の解決は「外部の知見」を取り入れることから
ホテル業界の課題解決には、外部の知見を取り入れるのも効果的です。以下の2つの要素をもとに解説します。
- 専門家の知見を活用するメリット
- ホテル運営のパートナー「リロホテルソリューションズ」とは?
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
専門家の知見を活用するメリット
専門家の知見を活用するメリットは、おもに5つあります。
客観的な視点での課題分析最新の業界動向や成功事例の知識専門的なノウハウ自社リソースの補完早期の課題解決 |
まず内部にいるだけでは気づきにくい課題を、客観的な視点から分析できます。業界全体の動向や他社事例と比較し、現状の課題を洗い出せるのが強みです。
また常に最新の情報を収集・分析しているため、課題に合わせて最適な戦略を立案できます。テクノロジーの進化や顧客ニーズの変化などにも、いち早く対応できます。
さらにマーケティングや人事、財務といった個別の領域における専門的なノウハウがあるのもメリットです。
マーケティングなら効果的なプロモーション戦略を、人事なら人材確保や定着のための制度などをアドバイス。財務であれば、収益改善やコスト削減のための施策を提供します。
加えて専門家が課題解決に取り組むことで、内部スタッフの時間と労力を節約できます。人材不足が課題のホテル業界では、有効な手段です。
とくに新規事業の立ち上げや大規模な改革プロジェクトにおいては、外部の専門家のサポートが不可欠です。効率的な戦略実行により、早期に成果が出やすくなります。
ホテル運営のパートナー「リロホテルソリューションズ」とは?
「リロホテルソリューションズ」は、ホテルが抱えるさまざまな課題を解決へと導く、ホテル運営のプロフェッショナル集団です。
「90日で黒字化」をスローガンに、ターンアラウンド(事業再生)を通じて全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団が、宿泊業のあらゆる課題を解決します。
具体的な支援内容は、以下のとおりです。
支援内容 | こんなお悩みに… |
売上改善支援 | ・公式・直販比率を上げたい・Web集客を強化したい・SNSの活用方法がわからない…など |
利益改善支援 | ・各部門の適正コストを知りたい・水光熱費を抑えたい・人件費率を改善したい…など |
業務効率 | ・基幹システム(PMS)を見直したい・自施設に最適なシステム運用を知りたい・IT補助金でDX化に着手したい…など |
施設運営全般 | ・施設開業までのプロセスやタスクが不明・遊休スペースを活用したい・金融機関への計画書について相談したい…など |
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まとめ
ホテル業界はインバウンド需要の増加と政府支援策の後押しもあり、今後も成長する見込みです。ただし慢性的な人手不足やデジタル化への遅れなど、いくつかの課題もあります。
今後のホテル運営では、「人材の確保や定着支援」「業務の効率化とIT活用」「差別化できるサービスの導入」「効果的なプロモーション施策」などが求められます。
また課題の解決には、外部の知見を参考にするのも効果的です。内部からは気づきにくい課題を、専門家であれば客観的な視点から的確に分析できます。
「リロホテルソリューションズ」は、ホテル運営のプロフェッショナル集団です。運営面でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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