リピーターを増やすには?ホテル経営を安定させるためのポイントとは

ホテルの売上向上や安定化のためには、リピーターの獲得強化が欠かせません。とはいえ、リピーターの獲得は決して簡単ではないため、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
本記事では以下のような項目を解説します。
・リピーター戦略がホテルの経営にもたらすメリット・リピーターが増えない施設の特徴・リピーターを増やすための具体策 など |
リピーターの獲得で苦労しているホテル業界の方は、ぜひ最後までご覧ください。
ホテル業界における「リピーター」とは?
ホテル業界におけるリピーターとは、2回以上ホテルを利用してくれる顧客のことです。彼らは単なる再訪客にとどまらず、優れたサービスや体験を通じてホテルへの愛着を深めていきます。
さらに、こうした顧客は単に再訪するだけでなく、SNSや口コミサイトで積極的に良い評判を広める「ファン」へと成長するのが特徴です。
ホテルの価値を理解し、新規顧客の獲得にも貢献する「ロイヤルカスタマー」となるため、ホテルにとって非常に重要な存在と言えるでしょう。
リピーター戦略がホテルにもたらすメリット
リピーター戦略がホテルにもたらすメリットは、以下の3つです。
集客コストを大幅に削減できる閑散期でも売上の基盤を安定させられる信頼性の高い口コミで新たな顧客を呼び込める |
それぞれ詳しく解説します。
メリット1:集客コストを大幅に削減できる
ホテルにとってリピーター戦略は、集客コストを大幅に削減する上で不可欠です。一般的に新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの約5倍かかる(1:5の法則)と言われています。
その点リピーターは利用経験があるため、新たな広告宣伝費や営業活動が不要です。加えて予約や問い合わせにかかる人件費も抑えられます。リピーターを増やすことで効率的に集客でき、その分、経営資源をサービスの向上や顧客満足度の向上に注力できるでしょう。
メリット2:閑散期でも売上の基盤を安定させられる
閑散期でも売上の基盤を安定させられるのも、リピーター戦略の大きなメリットです。新規顧客が減少する閑散期でも、ホテルに愛着があるリピーターは時期を問わず利用してくれる可能性が高く、安定した予約をもたらします。
また、一般的にリピーター比率が高いホテルは、客室稼働率も高い傾向にあります。安定した売上基盤は急な市場変動の影響を受けにくいため、ホテルの持続的な成長に不可欠な要素です。
閑散期でも売上予測が立てやすく、より効率的に経営計画を立てることができるでしょう。
メリット3:信頼性の高い口コミで新たな顧客を呼び込める
ホテルにとってリピーター戦略は、信頼性の高い口コミで新たな顧客を呼び込む強力な手段です。顧客は企業の広告よりも実際に体験した人々の声、特に知人や友人の勧めを信頼する傾向があります。
リピーターはSNSやレビューサイトで自発的に好意的な口コミを広めてくれるため、ホテルは広告宣伝費をかけずに信頼性の高い宣伝効果を得られます。
リピーターによる信頼性の高い口コミは、新規顧客獲得の効果的な方法の1つと言えるでしょう。
ホテルのリピートにつながる顧客心理
ホテルのリピートにつながる顧客心理は、「満足」「感動」「愛着」の3つのステップを経て形成されます。
最初のステップである「満足」は、顧客がホテルに抱く基本的な期待を満たすことで達成されます。清潔で快適な客室、迅速かつ丁寧なチェックイン・チェックアウト、美味しい料理の提供など、提供すべきサービスが過不足なく提供される段階です。
次に「感動」のステップです。これは顧客の期待を上回る体験が提供された際に生まれます。例えば記念日を祝うサプライズや、特別なリクエストへの柔軟な対応などです。
予期せぬ心遣いや特別なおもてなしは、顧客の記憶に残りやすく、宿泊以上の価値を生み出します。この「感動」が、次回の宿泊先としてそのホテルを選ぶ強力な動機付けとなります。
最終ステップである「愛着」は、感動体験が繰り返されることで顧客がホテルに対して親近感や信頼を抱き始める段階です。
この段階のリピーターは、他施設を検討することなく自ホテルを選び続けるようになります。さらに積極的に周囲にホテルの良さを伝え、新規顧客を呼び込む「ファン」へと成長します。
リピーター戦略は、この「愛着」を生み出すためのプロセスを構築することに他なりません。
リピーターが増えない施設に見られる共通の原因
リピーターが増えない施設に見られる共通の原因はさまざまです。代表的な原因は以下の3つです。
一度きりの関係で終わっている価格だけで選ばれている顧客からのサインを見逃している |
順に詳しく解説します。
原因1:一度きりの関係で終わっている
リピーターが増えないホテルは、顧客との関係が一度きりの宿泊で終わってしまっていることが原因です。多くの施設はチェックアウト後、顧客との接点が完全に途絶えてしまいます。
なぜなら顧客は日常に戻ると、そのホテルでの体験を徐々に忘れるためです。そのため、次の旅行や出張の際にホテルの存在を思い出せず、選択肢にすら入らなくなってしまいます。
宿泊後も顧客と継続的にコミュニケーションをとり、関係性を維持する努力をしなければリピーターの獲得にはつながりません。
原因2:価格だけで選ばれている
価格競争に陥り、顧客に価格以外の価値を提供できていないことも原因の1つです。顧客は「たまたま安かったから」という理由で宿泊するため、他に記憶に残る体験がありません。
その結果、より安い料金を提示する競合施設が現れると簡単に乗り換えられてしまいます。このような顧客はホテルへの愛着を持たないため、リピートの動機が薄く、持続的な関係を築くことができません。
価格や割引を主軸に集客するのではなく、価格以外の独自の魅力を創出し顧客の心に響く体験を提供することが不可欠です。
原因3:顧客からのサインを見逃している
顧客が発するサインを見逃しているのも、リピーターが増えない施設の共通点です。アンケートやレビューサイト、SNSなどに寄せられる要望や不満を放置し改善に活かせていないケースが多く見られます。
顧客からの声は、サービスの弱点や改善点を教えてくれる貴重な情報源です。中でもクレームは真摯に対応することで、顧客の不満を解消し信頼関係を築く絶好の機会となり得ます。
こうした意見を放置すると、リピーターになる可能性のある顧客をみすみす逃してしまうことになります。顧客の声に耳を傾け迅速かつ丁寧に対応することが、リピーターを増やす鍵です。
ホテルのリピーターを増やすための具体策
ホテルのリピーターを増やすための具体策を3つ紹介します。
【仕組み作り】再訪を自然に促す仕掛け【体験価値の向上】記憶に深く刻まれるおもてなし【関係性の構築】お客様との繋がりを維持するコミュニケーション |
1つずつ詳しく見ていきましょう。
【仕組み作り】再訪を自然に促す仕掛け
ホテルのリピーターを増やすためには、顧客が「また来たい」と自然に思えるような仕掛けを戦略的に構築しなければなりません。
まず着手すべきなのが、公式サイト経由などによる直接予約の強化です。日本交通公社(JTBF)「JTBF 観光経済レポート Vol.15」によれば、「リピーターが多い施設は、旅行会社経由比率が小さく直接予約比率が高い」との調査結果が出ています。
リピーターを育てるために、ベストレート保証や公式サイト限定のアメニティ、特別なサービスなど、公式サイト経由が1番お得に予約できるようにしましょう。公式サイトの利便性を高めることで、再訪を検討する際に公式サイトへ直接アクセスしてもらえるようになります。
また公式サイトの強化とあわせて、魅力的な会員制度やポイントプログラムを導入することも有効です。会員ランクに応じた特別サービスを提供することで、顧客の「特別感」を演出します。宿泊ごとに顧客の満足度を高め、再訪へのモチベーションを維持させましょう。
さらに、リピーター限定の特別プランも用意します。例えばDMなどで特定のパスワードを顧客に通知し、公式サイト経由でリピーター限定プランを販売するといったものです。
顧客に特別感を感じてもらい、「あなただけのための特別なサービス」を提供することで、ホテルに愛着を持ってもらうことが重要です。
参考:日本交通公社(JTBF)「JTBF 観光経済レポート Vol.15」
【体験価値の向上】記憶に深く刻まれるおもてなし
ホテルのリピーターを増やすためには、顧客の記憶に深く刻まれるおもてなしを提供することが不可欠です。鍵となるのが、スタッフ一人ひとりの「おもてなし力」です。
リピート率が高いホテルの多くが、その魅力として「スタッフの対応」を挙げています。マニュアル通りの応対にとどまらず、顧客の名前を覚え、些細な変化に気づいて声をかけるなど、「自分は大切にされている」と感じてもらうことが重要です。
心温まる対応は宿泊体験を超えた価値を生み出し、リピートへとつながる強力な動機となります。スタッフの自主性を尊重し、顧客に寄り添う行動ができる人材を育成しましょう。
加えて、トラブルを「感動体験」に変えるリカバリー力も大切です。どれだけ準備をしても、顧客からのクレームは避けられないものです。クレームに迅速かつ誠実に対応することで、顧客の不満を解消するだけではなく、ホテルへの信頼を一層高められます。トラブル時の真摯な対応は顧客に安心感を与え強い信頼感を生み出します。
また、サービス面だけでなく、五感に訴える快適な空間づくりも忘れてはなりません。選べる枕や質の高い寝具など、顧客が心からリラックスできる環境を構築しましょう。宿泊体験の核となる睡眠の質を高める工夫は、顧客の心に残り再訪のモチベーションを生み出します。
【関係性の構築】お客様との繋がりを維持するコミュニケーション
ホテルのリピーターを増やすためには、関係性を継続的に育むコミュニケーションが不可欠です。一度きりの宿泊で終わらせず、顧客の記憶に残り続けるための工夫が求められます。
例えば宿泊後のお礼状やメールの送付は、再訪のきっかけを作る上で効果的です。その際は定型文ではなく、宿泊日や利用したサービスに触れるなど、顧客ごとに合わせた一言を添えることで、よりパーソナルな印象を与えられます。
またSNSやメルマガで定期的に情報発信することも重要です。顧客はチェックアウト後、ホテルでの体験を徐々に忘れていきます。イベントやキャンペーン情報などを定期的に発信し、ホテルの存在を思い出してもらうきっかけを作りましょう。
さらに、顧客の声(フィードバック)を積極的に集め、それに応える姿勢も継続的に示します。宿泊アンケートやレビューサイト、SNSなどに寄せられた要望や不満をもとに、サービス改善に活かすサイクルを構築しましょう。
中でも口コミへの返信は、ホテルが顧客一人ひとりの声に真摯に向き合っている姿勢をアピールする絶好の機会です。コミュニケーションを通じて、顧客は自分が大切にされていると感じ、ホテルへの信頼感を深めていきます。
リピーター獲得施策を成功に導くための2つの重要ポイント
リピーター獲得施策をさらに成功させるために、重要なポイントを2つご紹介します。
ターゲット顧客を明確にする従業員全員で目標を共有する |
順に詳しく見ていきましょう。
ポイント1:ターゲット顧客を明確にする
リピーター獲得施策を成功させるには、「どのような人に」リピーターになってほしいのかを明確にしましょう。ビジネス客、ファミリー層、カップルなど、ターゲットによってホテルに求める価値や響くサービスは大きく異なります。
例えば、ビジネス客には快適な作業環境や迅速なサービスが、ファミリー層には子ども向けのアメニティや広々とした客室が重要です。ターゲットを絞り込み、そのペルソナに合わせた独自のサービスやコミュニケーション戦略を構築しましょう。
ポイント2:従業員全員で目標を共有する
リピーター獲得施策を成功させるには、従業員全員が「なぜリピーターを増やすのか」という目的を共有し、一丸となって取り組む体制が不可欠です。
リピーターはフロントの対応だけでなく、清掃スタッフの丁寧な仕事やレストランスタッフの心温まるサービスなど、ホテルでのすべての体験から生まれます。
全スタッフが共通の目標を持つことで、部門間の連携がスムーズになり、顧客の期待を上回るサービスを提供できるようになります。ホテル全体で顧客満足度を高め、リピーターの安定的な増加につなげましょう。
リピーターを増やすための対策はプロに相談!
「何から手をつけるべきか分からない」「客観的な視点でアドバイスが欲しい」といった方は、専門家への相談を検討しましょう。
ホテルの専門家であれば、課題分析から具体的な施策の実行支援、運営代行に至るまでホテルごとのニーズに応じて具体策を提示できます。
リロホテルソリューションズでは、リピーター獲得に課題を抱える施設向けに「宿の健康診断」を無料で実施しています。
価格設定やプランの適正化やマーケティングツールなど、項目ごとにホテル運営のプロフェッショナル集団が分析し、5段階(A〜E)で判定したうえで、その根拠と対策案を提示します。
リピーター獲得でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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まとめ
ここまでホテルのリピーター施策について、リピーターを獲得するメリットや具体策、リピーターが増えない施設の特徴などを解説してきました。
リピーターの獲得を積極的に推進すれば、集客コストを大幅に削減でき閑散期でも売上の基盤を安定化できます。
リピーターを増やすためには、顧客との関係性を一度きりで終わらせないことが重要です。宿泊後もお礼状やサンクスメールなどで定期的に施設をアピールし、次回の旅行先として自ホテルを選んでもらえるような工夫をしましょう。
自ホテルに合ったアドバイスが欲しい方は、ぜひお気軽にリロホテルソリューションズまでご相談ください。
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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。