リロホテルソリューションズ

コラム

2025.08.20

ホテルにクレームが入ったら?とるべき対応とNG対応、防止策を解説

ホテルにクレームが入ったら?とるべき対応とNG対応、防止策を解説

お客様からのクレーム対応に、不安やお悩みをお持ちではありませんか?

ホテル業はサービス業の最前線に立つ仕事です。たった1件のクレームでも、対応を誤ると大きなトラブルに発展する可能性があります。

この記事では、よくあるクレームの具体例や状況別の適切な対処法、未然に防ぐための体制づくりまでを解説します。

お客様満足度を高めたい、スタッフの対応力を向上したいとお考えのホテル経営者や運営担当者の皆様に、実務に活かせるヒントをお届けします。ぜひ最後までお読みください。

3カ月で黒字化するサービスガイド

ホテルで発生するクレームの種類と具体例

ホテルに寄せられるクレームにはさまざまな種類があり、その背景や対応方法も異なります。まずは代表的な「物的クレーム」と「人的クレーム」に分けて、具体的な事例と注意点を見ていきましょう。

設備や料理が原因の「物的クレーム」

物的クレームとは、施設の設備や提供されるサービス・商品自体に対する苦情のことです。たとえば、客室の清掃不備、エアコンやシャワーなどの設備の故障、食事に異物が混入していたなどのトラブルが該当します。

これらは目に見える問題であるため、比較的対応しやすいケースが多いものの、初動を誤ると「対応が悪い」と受け取られ、人的クレームに発展するリスクがあります。

丁寧かつ迅速な対応が求められる分野であり、問題を発見したらすぐに改善策を講じる必要があるでしょう。

スタッフ対応が原因の「人的クレーム」

人的クレームは、スタッフの言動や接客対応に関する苦情です。たとえば、フロントでの不適切な対応、チェックイン時の予約情報の誤り、説明不足による誤解などが代表的な例です。

物的クレームと比べて表面化しにくく、本人が気づかないうちに不満が蓄積しやすい分、いったん表面化すると深刻なトラブルに発展しやすい傾向があります。

「言った・言わない」といった争点になりやすく、スタッフ一人ひとりの対応力が問われる分野でもあります。感情的な問題に発展しやすいため、日頃からの接遇教育が欠かせません。

クレームの原因は必ずしもホテル側だけにない

すべてのクレームがホテル側の過失によるものとは限りません。誤解や事前説明の行き違い、個々の期待値のズレ、あるいは過度な要求によって発生するケースもあります。

こうした場合でも、丁寧な説明と共感の姿勢がトラブル回避につながります。

ホテルがとるべきクレーム対応とは

クレーム対応は単なる「謝罪」ではなく、信頼回復と再発防止につなげる重要な業務の一つです。ここでは、基本的な対応ステップや、状況に応じた適切な対処法を解説します。

  • クレーム対応の基本ステップ
  • ホテル側に「非がない」場合の対応方法
  • 非対面クレームへの対処法

順に説明します。

クレーム対応の基本ステップ

クレーム対応では、感情的になっているお客様に真摯に向き合い、冷静かつ組織的に対応する姿勢が求められます。以下の5ステップを意識して行動すれば、トラブルの長期化や悪化を防ぐことが可能です。

ステップ1:傾聴と事実確認

まずはお客様の話を最後まで遮らずに聞きます。感情的な言葉の裏にある本質的な問題を把握するには、丁寧な傾聴が欠かせません。早とちりせず、客観的な情報を収集しましょう。

ステップ2:共感と謝罪

クレーム内容の正誤にかかわらず、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」といった共感を込めた謝罪が、信頼回復への第一歩になります。ただし、あくまで不快な思いをさせてしまったことへの謝罪であり、『すべての責任がホテルにある』と誤解されないよう注意しましょう。

ステップ3:原因究明と状況整理

表面的な事象だけでなく、なぜその問題が起きたのかを見極めることが重要です。現場の状況、スタッフの対応履歴なども確認し、冷静に原因を整理します。

ステップ4:解決策の提示

お客様がどのような対応を望んでいるのかを確認したうえで、可能な範囲で代替案や補償内容を提案します。「できること」と「できないこと」を明確にし、誠意をもって説明しましょう。

ステップ5:情報共有と再発防止

一連の対応内容は必ず記録に残し、スタッフ間で共有しましょう。同様のトラブルを防ぐためにも、クレームを「資産」と捉え、改善につなげる姿勢がホテル全体の信頼につながります。

ホテル側に「非がない」場合の対応方法

クレームの中には、お客様の誤解や事実に反する内容である場合も少なくありません。しかし、そのような場合でも、まずは「不快な思いをさせた」点に対する謝罪が基本です。

決してお客様を否定せず「ご案内がわかりにくかったようで申し訳ありません」など、相手の気持ちに寄り添った言葉を選びましょう。そのうえで、事実やルールを丁寧に説明し、誤解を解くことが重要です。

ただし、過剰な要求や明らかに不合理な主張には、柔らかい表現を用いつつも、毅然とした姿勢で「対応できかねる」旨を伝える必要があります。スタッフが判断に迷う場合は、上司や管理職が前面に立つことも必要です。

非対面クレームへの対処法

メールや口コミなどの非対面クレームは、不特定多数の目に触れる可能性があるため、対面以上に慎重な対応が求められます。

まず、24時間以内の返信を心がけることで、誠実な印象を与えられます。返信文では個人名や内部事情を明かさず、ホテルとしての見解を丁寧に伝えることがポイントです。

また、謝罪と改善の意思を明確に示すことで、他の閲覧者に対しても信頼感を損なわない対応が可能となります。定型文だけで済ませず、一件一件に応じた柔軟な文面を心がけましょう。

悪質クレーマー・カスハラへの対応方法

通常のクレームと、過剰な要求や暴言を伴うカスタマーハラスメント(カスハラ)は明確に区別する必要があります。カスハラに該当する行為としては、土下座の強要、宿泊料の返金や無料対応の執拗な要求、長時間の拘束、暴言・威圧的な態度などが挙げられます。

こうした対応は現場スタッフ個人に任せるのではなく、責任者や複数名で対応することが原則です。感情的な対立を避け、組織として一貫性のある姿勢で対応すれば、スタッフの心理的負担も軽減できます。

丁寧な言葉を用いながらも、不当な要求には毅然と対応し「そのようなご要望にはお応えできかねます」と明確に伝えましょう。

2023年12月に施行された「旅館業法の一部を改正する法律(令和5年法律第57号)」により、悪質なカスタマーハラスメント(カスハラ)に対して宿泊拒否が可能であることが明文化されました。

具体的には、旅館業法第5条の2で定められた「特定要求行為」を繰り返す宿泊者に対し、ホテルは正当な理由があれば宿泊を断ることが認められています。この法改正により、ホテル側の防衛策が法的に裏付けられ、従業員と他の宿泊客の安全確保が強化されました。

カスハラからホテルとスタッフを守るためには、平常時から対応マニュアルを整備し、スタッフに研修を実施する必要があります。トラブルが発生した際に迅速かつ適切な判断ができるよう、組織全体で備えておきましょう。

参照:厚生労働省 |旅館業法改正

ホテルのクレーム対応Q&A

クレーム対応は、現場の判断ミス一つで大きなトラブルに発展する可能性があります。ここでは、クレーム対応に関するよくある質問を3つ紹介します。

  1. Q1.やってはいけないクレーム対応にはどんなものがありますか?
  2. Q2.宿泊費の割引や返金を要求されたらどうすればいいですか?
  3. Q3.お客様が嘘をついていると感じた場合、どう対応すべきですか?

順に見ていきましょう。

Q1. やってはいけないクレーム対応にはどんなものがありますか?

まず避けるべきは「言い訳」や「責任転嫁」、そして「感情的な反論」です。これらの対応はお客様の不満を増幅させ、クレームを長引かせる原因となります。

また、誠意を見せようとして安易に全面謝罪してしまうと、不要な責任を認めたと受け取られ、トラブルが拡大するリスクもあるため注意が必要です。

さらに、クレームを上司に報告する際に事実を誇張したり、都合の悪い内容を隠したりするのもNGです。正確な情報共有ができなければ、事態の本質を見誤り、正しい対応ができなくなる可能性があります。

Q2. 宿泊費の割引や返金を要求されたらどうすればいいですか?

まず前提として、金銭での解決に安易に踏み切るべきではありません。宿泊料の返金や割引は、お客様に「当然の補償」と受け取られ、その後さらなる要求やクレームが増え、対応がかえって難しくなる可能性があります。

まずはクレームの原因を丁寧に調査し、ホテル側に明確な非がある場合には、返金よりも先に部屋の変更やサービスの追加など、代替案を提示するのが基本です。

仮に経営判断として返金する場合は、明確な基準を設けておく必要があります。

あくまでも誠意ある対応を心がけながらも、ホテル全体として一貫した基準による対応が信頼回復につながります。

Q3. お客様が嘘をついていると感じた場合、どう対応すべきですか?

たとえ疑わしい内容であっても、まずはお客様の話を最後まで傾聴しましょう。感情的に否定するのではなく、予約記録や過去のやり取りなど、客観的な事実をもとに冷静な状況説明が必要です。

相手を否定せず、事実を軸にした説明をすれば、不必要な対立を避けながら誤解を解消する方向へ導けます。

ホテルのクレームを未然に防ぐ体制づくり

クレームを減らすためには、発生後の対応だけでなく、発生自体を防ぐ体制づくりが重要です。クレームを未然に防ぐ対応策は、下記の3つです。

  1. 全社共通の「対応マニュアル」を整備・更新する
  2. スタッフの対応力を底上げする「研修」を実施する
  3. 専門家の視点から「客観的な課題」を洗い出す

順に見ていきましょう。

全社共通の「対応マニュアル」を整備・更新する

クレーム対応における方針を統一するためには、全社で共有できるマニュアルの整備が不可欠です。対応の流れや判断基準が明確であれば、スタッフは自信を持って行動でき、現場での混乱を防げるでしょう。

また、過去の事例をもとに、起こりうるクレームを想定し、それに対する具体的な対応例を記載しておくことも有効です。

マニュアルは一度作って終わりではなく、定期的に見直し、実態に合った内容へ更新し続けることが求められます。

スタッフの対応力を底上げする「研修」を実施する

マニュアルだけでは不十分で、スタッフ一人ひとりのスキル向上も欠かせません。定期的な研修やロールプレイングを通じて、接客対応の引き出しを増やすことで、現場での柔軟な対応力が養われます。

自社だけでクレーム対策を進めていると、どうしても主観的な視点に偏りがちです。第三者である専門家に現場を見てもらうことで、サービスの見落としやマニュアルの抜け、研修内容の改善点など、客観的な課題が明らかになります。

定期的な外部チェックの導入により、常に最新かつ効果的な対策を維持できるでしょう。特にリピーターの多い施設では、細かな改善が顧客満足度の向上につながるため、専門家の意見は貴重な資源となります。

クレームに強いホテル運営はプロに相談!

クレーム対応のマニュアルを整備しても、現場で形骸化してしまえば意味がありません。実際のオペレーションに即したマニュアル作成や、スタッフが主体的に動けるような運用には、実務に根ざしたノウハウが求められます。

また、効果的な研修プログラムを構築するには、接遇や心理対応、リスク管理など多角的な知見が必要です。

そこで頼れるのが、ホテル経営の支援実績が豊富な「リロホテルソリューションズ」です。全国の宿泊施設を支援してきた実績をもとに、現場に即した課題抽出から研修設計、運用支援まで一貫してサポートしてくれます。

第三者の視点から課題を客観的に整理し、ホテルの魅力を損なうことなく対応力を高める提案ができるのは、専門家だからこそ。クレームに強いホテルづくりを目指すなら、プロへの相談が近道です。

まとめ

ホテル経営において、クレーム対応は避けて通れない課題<ですが、正しい対応と体制づくりによって、宿泊者の信頼を高めるチャンスにもなります。設備や接客に関する苦情への適切な対処だけでなく、非がない場合や悪質なクレーマーへの対応も、状況に応じて冷静かつ組織的に進めることが重要です。

また、マニュアルの整備やスタッフ研修、外部専門家の意見を取り入れた体制づくりによって、クレームを未然に防ぐことも可能になります。

現場任せにせず、ホテル全体で仕組みとして対応力を高めていく姿勢が求められます。
自社だけで対応に限界を感じている方は、豊富な支援実績をもつ「リロホテルソリューションズ」への相談を検討してみてください。実情に合った改善策やサポートを受けることで、クレームに強く、選ばれるホテルづくりが実現できるでしょう。

株式会社リロホテルソリューションズ
株式会社リロホテルソリューションズ

【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。。