ホテルの閑散期とは?売上を守り、繁忙期に備えるための対策を解説

ホテルの閑散期が経営にどのような影響を与えるのか、不安や疑問を感じる方は多いのではないでしょうか。
本記事では閑散期について、以下のような項目を解説します。
・年単位で見た一般的な閑散期と繁忙期 ・閑散期に売上を落とさないための対策 ・繁忙期へ向けて準備しておくこと |
閑散期はどうしても売上が減少しがちです。だからこそ、落ち込みを最小限に抑えつつ利益を確保するためにも、ホテル経営に携わる方はぜひ最後までご覧ください。
ホテルの閑散期と繁忙期はいつ?
ホテルの閑散期と繁忙期について、以下の項目毎に具体的な時期や理由をそれぞれ解説します。
- 閑散期とは
- 繁忙期とは
- ホテルの種類や立地で時期は変動する
順に詳しく見ていきましょう。
閑散期とは
一般的にホテルの閑散期は、おもに正月休み明けの1月後半から2月、ゴールデンウィーク明けから梅雨入りするまでの時期、お盆明けから9月にかけての期間が該当します。
これらの時期は長期休暇がなく旅行の予定を立てにくい上、気候が不安定で観光に適さないため、旅行需要が減少しがちです。
ただし、上記は一般的なホテルの場合です。リゾートホテルなど、ホテルの種類によっては閑散期の時期が異なる場合もあります。
繁忙期とは
ホテルの繁忙期はおもに春休み(3月後半〜4月上旬)やゴールデンウィーク、夏休み(7月下旬〜8月)や年末年始などの長期休暇期間が該当します。
これらの期間は学校や仕事が休みとなるため、旅行やレジャーを楽しむ人が増え、宿泊施設の需要が急増します。
ただし、閑散期の場合と同様に、ホテルの種類や立地によって繁忙期の時期も異なるため注意が必要です。
ホテルの種類や立地で時期は変動する
ホテルの閑散期と繁忙期は、ホテルの種類や立地により大きく変動します。すべてのホテルが一律に同じ時期に閑散期を迎えるわけではありません。
たとえばビジネスホテルは、出張などのビジネス需要が高まる平日に稼働率が上がります。一方、土日祝日は出張者が減るため、閑散期になりやすい傾向があります。
一方、リゾートホテルは、レジャー目的の宿泊客が増加する週末が繁忙期となります。逆に、平日は利用客が少なく、閑散期となるのが一般的です。
また、ホテルの立地も閑散期や繁忙期に影響します。たとえば、スキー場周辺のホテルはシーズンである冬場が最も利用客が多く、繁忙期を迎えます。一方、ビーチリゾートにあるホテルは海水浴シーズンの夏が繁忙期です。
それぞれのホテルの利用目的や立地の特性によって、閑散期と繁忙期が変動することを把握しておきましょう。
閑散期の売上を底上げする集客戦略
閑散期の売上減少に効果的な3つの対策をご紹介します。
- 新しい顧客層に響く宿泊プランを打ち出す
- リピーターに特別な体験を届ける
- 価格設定で宿泊需要をコントロールする
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
新しい顧客層に響く宿泊プランを打ち出す
閑散期の売上を底上げするためには、新たな顧客層をターゲットにした宿泊プランで新しい需要を掘り起こすことも効果的です。
以下に具体的なプランをいくつか紹介します。
プラン | 内容 |
ワーケーションプラン | ・長期滞在でテレワークしつつ、バケーションも楽しみたい層へ向けたプラン ・通信環境の整備など宿泊者が作業しやすい環境を整える |
おひとり様限定プラン | ・増加傾向にある一人旅の需要に応えるプラン ・シングルルームの充実化や、一人でも楽しめるアクティビティなどを盛り込む |
限定グルメプラン | ・閑散期にしか味わえない旬の地元食材を活かした料理を提供 ・旅館など「食」が目的の宿泊客に対し効果的 |
ワークショップ付きプラン | ・普段体験できない特別なワークショップ(例:伝統工芸体験、料理教室など)と宿泊をセットにする ・体験価値を重視する顧客層にアピールできる |
ホテルの立地や種類、顧客層などを総合的に考慮し、自ホテルの特性を活かした魅力的なプランを検討してみましょう。
リピーターに特別な体験を届ける
既存顧客であるリピーターに特別な体験を提供することも、閑散期の戦略として効果的です。新規顧客の獲得には多くのコストがかかる一方、ホテルに好感を持っているリピーターへのアプローチは、より少ない費用で高い集客効果が期待できます。
リピーターへの具体的なアプローチの方法は、おもに以下の通りです。
アプローチの方法 | 内容 |
特典付きの案内 | ・過去に宿泊した顧客へ閑散期限定の割引や特典が付いたダイレクトメールやメールマガジンを送付 ・「また行きたい」という思いを刺激し再来訪を促す |
誕生日特典 | ・顧客の誕生日が近い時期に特別なプランや割引を案内する ・個別のアプローチで顧客が「大切にされている」と感じることで、宿泊意欲を高める |
積極的なコミュニケーション | ・SNSや公式サイトに寄せられた口コミ対応で、顧客との良好な関係を築く ・誠実な対応はホテルのイメージアップにつながり、リピーターの定着に貢献 |
上記の対策は、単に集客につながるだけでなく、顧客満足度を高め、長期的なホテルのブランド価値向上にも寄与します。
価格設定で宿泊需要をコントロールする
新規プランの作成やリピーターへのアプローチとあわせて、価格設定によって宿泊需要をコントロールし、売上の底上げを図りましょう。
需要に応じて価格を変動させる「ダイナミックプライシング」を導入することで、収益の最大化を目指せます。需要が低い日には料金を下げて集客を図り、需要が高まる兆しが見えた際には適正な価格に戻すなど、状況に応じて柔軟に対応できるためです。
また閑散期の予約を安定させるためには、早期予約割引や長期滞在割引も有効です。利用客は費用を抑えつつ計画的に旅行を楽しめるため、ホテル側は安定した稼働率を確保できます。
ただし、安易な値下げはホテルのブランドイメージを損なうリスクがあります。単に宿泊料金を下げるのではなく、食事や特別な体験など「付加価値」を提供して、価格以上の満足感を出すことが重要です。
具体的には、地元の食材を使った限定メニューやホテル主催のワークショップなどを宿泊プランに組み込み、お得感や特別感を演出します。閑散期でもホテルの魅力を損なうことなく、売上の向上を目指せます。
閑散期はホテル運営を見直すチャンス
閑散期はホテルの運営を見直すチャンスでもあります。繁忙期に備えて、以下の項目を見直すと効果的です。
- サービスの質を高める業務の見直し
- スタッフ教育とチーム力の強化
- 施設のメンテナンスとリニューアル
- 自社に合った戦略が成功の鍵
順に詳しく解説します。
サービスの質を高める業務の見直し
ホテルの閑散期を、サービスの質を高めるための業務見直しに活用しましょう。閑散期は、日々の業務に追われて手が回らない部分にじっくりと取り組む絶好の機会です。
具体的なポイントをいくつか紹介します。
見直すポイント | 内容 |
チェックイン・アウト業務 | ・手続きに無駄な要素はないか ・待ち時間を減らす工夫はできないか ・顧客アンケートに指摘点がないか |
客室のアメニティやレストランのメニュー | ・現在の顧客ニーズに合ったものが揃っているか ・顧客からの要望はないか |
館内の掲示物やWebサイトの情報 | ・最新の情報を掲載しているか ・インバウンド需要に合わせているか(4か国語表記に刷新) |
上記のポイントを参考に、改善できる箇所がないか一つひとつ総点検しましょう。こうした地道な改善を積み重ねることで、サービス品質が向上し、次の繁忙期に向けた土台を築くことができます。
スタッフ教育とチーム力の強化
スタッフ教育やチーム力の強化に時間を充てましょう。閑散期に集中的な教育を行うことで、サービス品質の底上げを図り、次の繁忙期に備えます。
具体的な研修内容は、以下の通りです。
研修内容 | ポイント |
接客スキルやクレーム対応 | ・座学のみではなく、ロールプレイング形式で実践的に練習 |
語学研修 | ・英語や中国語など需要の高い言語の習得・頻出フレーズやQ&Aなど、最低限習得すべきフレーズをリストアップする |
新システムの導入 | ・予約システムや清掃システムなど、新システム導入に関するトレーニング ・繁忙期のシステム移行は移行時の混乱を招くため避ける |
上記のような対策は、スタッフのスキルアップだけでなく、チーム内でのコミュニケーションを促進し、結束力を高めます。組織全体のパフォーマンスを向上させ、ホテルの総合的な競争力強化につなげましょう。
施設のメンテナンスとリニューアル
閑散期は、施設のメンテナンスやリニューアルを実施するのに最適な時期です。宿泊客が少ないため、工事や清掃による影響を最小限に抑えながら、集中的に作業を進めることができます。
下記の項目を参考に、施設のメンテナンスとリニューアルを検討しましょう。
メンテナンスの項目 | 内容 |
客室・共用部分 | ・カーペットや壁紙の張り替え・家具の入れ替え・絵画や置物など調度品の見直し |
厨房機器・空調設備 | ・大掛かりな設備の点検や整備・新規設備の購入も検討 |
館内のリニューアル工事 | ・客室、レストラン、ロビーなど現在の需要に合わせた仕様にリニューアルする |
特に大掛かりな設備の点検やリニューアル工事などは、閑散期を利用して集中的に実施します。また、設備の劣化がなくても、客室の枕元にコンセントを追加するなど、現在の需要に合わせたリニューアルも検討しましょう。
自社に合った戦略が成功の鍵
閑散期を活用し、自社の特性を分析したうえで、売上向上や将来への投資に向けた戦略を立てましょう。
具体的には、ホテルの種類(ビジネス、リゾートなど)、立地、規模、ターゲット顧客といった要素を深く掘り下げます。たとえば、都心のビジネスホテルであれば法人契約を強化して平日の需要を高めつつ、週末の稼働率を上げるためのプランを企画する、といった具合です。
また、競合ホテルの動向を調査し、自社との差別化を図ることも効果的です。競合が提供していないサービスやプランを自社で提供することで、閑散期でも稼働率を維持できる戦略を立てることができます。自社の現状と市場の動きを正確に把握することが、効果的な戦略立案の鍵となります。
閑散期の対策はプロに相談しよう
ここまで、ホテルの閑散期での対策方法などを紹介してきました。しかし、未経験の場合、「何から手をつければいいか分からない」と感じることも少なくありません。
またここまで紹介した対策方法はあくまで一例ですので、「より自社に合った客観的な意見がほしい」とお考えの方も多いでしょう。
リロホテルソリューションズでは「90日で黒字化」をスローガンに、ターンアラウンドを通じて全国40か所以上のリゾート地や過疎地の宿泊施設を運営してきた実績があります。
ホテルの閑散期対策に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。下記の「宿の健康診断」から、自ホテルの現状と対策を無料で簡単に分析できます。
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まとめ
ホテルの閑散期は需要が低下し、稼働率も落ち込みがちです。しかし、閑散期を活用して適切な対策を講じることで、売上の底上げを図ることができます。
集客を増やすためには、新しい宿泊プランの提供や既存顧客への販売促進、SNSやメルマガを活用した情報発信、イベントやキャンペーンの実施などが効果的です。
また、繁忙期にはできなかった大規模なリニューアル工事や、従業員の集中的な研修なども、ホテルのブランド力向上につながり、競争力を高めます。
自ホテルに合った具体的な対策方法を知りたい方は、ぜひホテル運営のプロ集団であるリロホテルソリューションズまでお気軽にご相談ください。

【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。。