ホテル開業の前に知っておきたい!稼働率の基本と成功するホテル経営の全体像とは?

近年、観光需要の回復・増加に伴い、ホテルの新規開業を検討する企業が増えています。
ホテルの開業に必要な費用の種類や資金の目安、実際に開業するまでの流れなど、開業にあたって知っておくべきことは豊富にあります。
本記事では業界の現状や資金関係、開業までの流れなどをわかりやすく解説します。ホテル開業を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
まずは知っておこう!ホテル業界の現状と将来性
ホテル開業にあたり把握しておきたい業界の現状と将来性を、以下2つの観点から解説します。
- コロナ禍を経てどう変わった?市場動向と今後の見通し
- 追い風となるか?インバウンド需要と国内旅行のトレンド
では、1つずつ詳しく見ていきましょう。
コロナ禍を経てどう変わった?市場動向と今後の見通し
コロナ禍初期には、国内外の旅行需要が激減しました。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2020年の延べ宿泊者数は前年比で約5割減という壊滅的な状況でした。
ただしコロナ禍を経てからは、観光需要も回復しています。国内旅行では体験型コンテンツやホカンスなど、多様なニーズに対応する傾向が見られます。
またインバウンド市場の成長が著しいのも、需要を後押しする要因です。円安の影響もあり、今後も増加傾向が続くと考えられるでしょう。
追い風となるか?インバウンド需要と国内旅行のトレンド
インバウンド需要は増加傾向にあり、とくにこれまで訪日客数が多かったアジア圏からの回復が顕著です。
日本政府観光局(JNTO)発表資料によると、2025年2月の訪日外客数は、韓国、中国、台湾などの東アジアからの回復が引き続き堅調であると報告しています。
一方、国内ではコロナ渦では近場で気軽に楽しめる「マイクロツーリズム」が定番となり、現在では地域との交流や地元体験を楽しむ旅行スタイルが注目されています。
また、自然や文化を活かした「体験型旅行」、環境に配慮した「サステナブルツーリズム」なども人気を集めており、旅行ニーズはますます多様化してきています。
どんなホテルがある?知っておきたい宿泊施設の種類と特徴
宿泊施設の種類や特徴はさまざまです。ここではホテル開業の基礎知識として、宿泊施設の種類や特徴を以下2つの要素から解説します。
- 宿泊施設の主な分類
- 多様化するニーズに応える新しいカタチ
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
宿泊施設の主な分類
旅館業法に基づき、宿泊施設はおもに以下の5つに分類されます。
分類 | 内容 |
ホテル | ・西洋式の施設・宿泊、食事、宴会など多様なサービスを提供 |
旅館 | ・日本式の施設・宿泊、日本料理、温泉などを提供 |
簡易宿所 | ・カプセルホテルなど、簡便な設備かつ低料金で宿泊を提供 |
下宿 | ・1ヶ月以上の滞在期間を単位とした施設 |
民泊(※) | ・個人宅やアパートの1室などを宿泊施設として提供・営業日数が一定期間(原則180日)を超える場合は簡易宿所営業の許可が必要 |
※民泊の始め方については、別途コラム等でご紹介します。
またおもな宿泊施設とターゲット層は、以下のとおりです。
宿泊施設の種類 | 特徴 | ターゲット層 |
シティホテル | ビジネス、観光、宴会、婚礼など幅広いニーズに対応 | ビジネス客、観光客、地域住民など多岐にわたる |
ビジネスホテル | シングルルーム主体で、ビジネス利用に特化 | 出張利用のビジネス層 |
リゾートホテル | レジャーやリラックスなど滞在に特化 | 観光客、ファミリー層、カップル |
宿泊特化型ホテル | 客室機能に特化。食事やサービスを簡素化し、安価で提供 | ビジネス層や個人の観光客 |
多様化するニーズに応える新しいカタチ
宿泊需要の多様化に伴い、宿泊施設もさまざまな形態で運営しています。とくに注目されている宿泊形態と、その特徴を紹介します。
宿泊施設の種類 | 特徴 | ターゲット層 |
カプセルホテル | ・カプセル状の寝室が特徴・シャワーやトイレは共用 | ・終電を逃した会社員・個人旅行客 |
ホステル | ・ドミトリー式の相部屋が基本・宿泊客同士が交流しやすい雰囲気 | ・バックパッカーや長期旅行者・他の旅行者との交流を楽しみたい層 |
B&B (Bed&Breakfast) | ・個人経営の小規模施設で、家庭的な雰囲気が魅力・朝食が含まれていることが一般的 | ・個人旅行やカップル・アットホームな雰囲気を好む層 |
ブティックホテル | ・独自のコンセプトやデザインが特徴・個性的な滞在体験ができる | ・記念日利用のカップル・SNS映えを好む層 |
いくら必要?ホテル開業に必要な費用の全体像
ホテル開業に必要な費用は、大きくわけて以下の2つです。
- 最初に用意すべき「初期費用」
- オープン後にかかる「運転資金」
ただし具体的な金額は規模や立地で大きく変動するため、あくまで金額は目安です。では、それぞれ詳しく解説します。
最初に用意すべき「初期費用」
ホテル開業にはさまざまな初期費用が発生します。おもな内訳と費用目安は以下のとおりです。
初期費用の種類 | 内容 | 費用目安 |
物件取得費 | 土地や建物の購入資金 | 数千万円〜数十億円以上 |
賃料、保証金 | 物件を賃借する場合の初期費用 | 月額数十万円〜数百万円以上 |
保証金(敷金・礼金含む) | 物件を賃借する場合の初期費用 | 賃料の数ヶ月分(3ヶ月〜10ヶ月程度が目安) |
設計・デザイン費 | 設計やデザインにかかる費用 | 総工事費の5%〜15%程度が目安 |
内装・外装工事費 | 客室やロビーなどの内装工事と外装改修にかかる費用 | 坪単価で数十万円〜数百万円程度 |
厨房設備 | レストランの厨房設備一式 | 数百万円〜数千万円程度 |
客室設備 | ベッドや家具などの客室設備一式 | 1室あたり数十万円〜数百万円程度 |
什器・備品 | 事務機器やリネンなどの備品一式 | 数百万円〜数千万円程度 |
許認可申請費用 | 営業許可申請などの行政手続きにかかる費用 | 数十万円程度 |
広告宣伝費(開業前) | サイト制作やパンフレット作成などの広告宣伝費用 | 数百万円〜数千万円程度 |
ただし上記費用は目安のため、実際はホテルの立地や規模により大きく変動します。
オープン後にかかる「運転資金」
ホテルオープン後にかかる運転資金も、多岐にわたります。おもな費用の種類と目安は以下のとおりです。
運転資金の種類 | 内容 | 費用目安 |
人件費 | 従業員の給与や社会保険料など | 売上高の20%〜30%程度 |
水道光熱費 | 電気、ガス、水道料金 | 売上高の3%〜7%程度 |
仕入れ費 | 食材、リネン、アメニティなどの仕入れ費 | 売上高の10%〜20%程度 |
広告宣伝費 | サイト運営費やオンライン広告費など | 売上高の2%〜5%程度 |
予約サイト手数料 | OTA(Online Travel Agent)経由の予約に対して発生する手数料 | 予約金額の5%〜20%程度 |
維持管理費 | 建物や設備の保守点検費用、清掃用品費、事務用品費など | 売上高の2%〜5%程度 |
修繕費 | 建物や設備の修理、改修にかかる費用 | 売上高の2%〜5%程度 |
借入金の返済 | 金融機関からの借入金に対する元金と利息の返済 | 借入金額や返済期間で大きく変動 |
また開業初期は稼働率が安定しないため、運転資金に余裕を持たせておきましょう。資金がショートしないよう、最低でも数ヶ月分の運転資金は必要です。
資金はどうやって集める?主な資金調達方法
ホテルの開業資金や運転資金を用意する方法は、おもに以下の4つです。
- 自己資金
- 金融機関からの融資
- 補助金・助成金の活用
- その他の調達方法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
基本となるのは自己資金
ホテルの開業資金で基本となるのは、自己資金です。一般的には、開業に必要な初期費用の3割以上を目安に用意することが望ましいとされています。
自己資金が多いことのメリットは、「融資の受けやすさ」と「経営の安定性」です。自己資金の割合が高いほど、金融機関からの信用が高まり融資を受けやすくなります。
また自己資本比率が高まると、金利負担が軽減し経営の安定性が増します。外部環境の変化や予期せぬ支出にも対応しやすく、長期的な事業継続につながりやすいのもメリットです。
金融機関からの融資
自己資金のみで開業資金を用意できない場合は、金融機関からの融資を検討します。代表的な融資制度は、以下の3つです。
融資制度 | 内容 |
日本政策金融公庫 | ・新規開業支援に積極的な政府系金融機関・低金利で長期の融資が受けやすい |
制度融資 | ・地方自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する・中小企業や小規模事業者の資金調達をサポート |
民間金融機関(銀行、信用金庫など) | ・プロパー融資や信用保証協会の保証付き融資などがある・融資条件に取引実績などが考慮される場合がある |
補助金・助成金の活用
国や自治体が提供する補助金を活用するのも、有効な資金調達の方法です。以下におもな補助金や助成金の制度を紹介します。
制度名 | 内容 |
事業再構築補助金 | ・コロナ禍からの事業転換や新規事業立ち上げを支援する制度・ホテル業態の転換や新たなサービスの導入などに活用 |
IT導入補助金 | ・ITツールの導入費用を補助する制度・予約システムや顧客管理システムなどの導入に活用 |
ものづくり補助金 | ・革新的なサービス開発や生産プロセスの改善を実施する事業者を支援する制度・新たな宿泊体験を提供する設備の導入などに活用 |
自治体の補助金・助成金(例)東京都:宿泊施設経営力向上推進事業補助金 | ・各自治体(都道府県や市区町村)が独自に提供する補助金や助成金制度 |
各制度は、経済産業省や各省庁のWebサイトで情報収集できます。なお補助金や助成金には申請期間があります。早めに情報収集し、申請漏れがないよう注意しましょう。申請の代行やサポートをしている支援会社もあるので、プロの力を借りるのもひとつです。
その他の調達方法
自己資金や金融機関、補助金以外で資金調達する方法をいくつか紹介します。
資金調達の方法 | 内容 |
クラウドファンディング | ・多くの人々から少額ずつ資金を集める方法・明確な資金使途とリターン設計が必要 |
ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング) | ・個人投資家から集めた資金を事業者に融資する・リターンは金利 |
事業承継・引継ぎ支援 | ・後継者不足に悩む既存の宿泊施設を譲り受け、リニューアルして開業・M&A仲介サイトなどを活用 |
ホテルの特性や事業計画に合わせて、上記の方法も検討してみましょう。
夢を実現へ!ホテル開業までの具体的なステップ
実際にホテル開業までの流れを、以下の8つのステップにわけて解説します。
- STEP1:ホテルの骨格を作る「コンセプト設計と事業計画」
- STEP2:計画を実行に移す「資金調達」
- STEP3:成功を左右する「物件探しと契約」
- STEP4:理想を形にする「設計・内装工事」
- STEP5:快適な空間を作る「備品・設備の導入」
- STEP6:おもてなしの要「人材採用と育成」
- STEP7:法的手続き「許認可申請と各種届出」
- STEP8:開業に向けた最終準備「集客準備と最終チェック」
1つずつ詳しく見ていきましょう。
STEP1:ホテルの骨格を作る「コンセプト設計と事業計画」
ホテル開業の成否を左右する根幹となるのが、明確な「コンセプト設計」とそれを具現化する「事業計画」です。
コンセプト設計では、誰にどのような価値を提供するのかを明確にします。ターゲットを理解し、ニーズに応える独自の特徴で競合との差別化を図るのがポイントです。
事業計画では、コンセプトを実現するための道筋を事業計画書で示します。収支や資金の計画、マーケティング戦略など実現可能性が高く、説得力のある事業計画を作成しましょう。
STEP2:計画を実行に移す「資金調達」
作成した事業計画書をもとに、資金調達を図ります。金融機関からの融資を検討する場合は、作成した事業計画書が融資の可否を決定します。
複数の金融機関に相談し、事業計画の内容を丁寧に説明したうえで最適な融資条件を引き出しましょう。
また補助金や助成金を活用する際も、事業計画書が申請の根拠となります。申請書の作成では事業計画の内容を具体的に落とし込み、事業の実現可能性を明確に示すことが重要です。
STEP3:成功を左右する「物件探しと契約」
物件探しと契約での判断が、その後のホテル運営を大きく左右すると言っても過言ではありません。
とくに立地は宿泊客や従業員の確保、収益性に直結します。交通機関のアクセスや周辺環境など、念入りに確認すべきです。
また物件には、おもに「新築」「居抜き」「賃貸」の選択肢があります。メリットとデメリットを踏まえ、事業計画に合う物件を探しましょう。
物件の種類 | メリット | デメリット |
新築物件 | コンセプトに合わせて自由に設計できる | 建設期間と高額な初期費用 |
居抜き物件 | 初期費用の軽減 | ホテルのコンセプトと合わない可能性がある |
賃貸 | 初期費用の軽減 | 改装の自由度が低い |
STEP4:理想を形にする「設計・内装工事」
ホテルの設計と内装工事は、機能性とデザイン性を両立させ法規制を遵守することが重要です。消防法や建築基準法など、各法規制の遵守を徹底しましょう。
また設計やデザインは、ホテルの顔となる大切な要素です。ターゲット顧客層のニーズや嗜好を反映させ、ブランドイメージを確立するデザインを追求しましょう。
業者を選ぶ際には、宿泊施設の設計や施工実績が豊富かどうかを確認します。工事後の保証やメンテナンス体制など、長期的な視点で任せられる業者を選ぶのがポイントです。
STEP5:快適な空間を作る「備品・設備の導入」
ホテルの備品と設備は、顧客と従業員双方にとって快適で機能的な空間を実現するものです。コンセプトに合わせ、各エリアに必要な備品と設備をリストアップしましょう。
選定においては、デザイン性だけでなく、耐久性や機能性、安全性を考慮します。とくに顧客が直接触れるベッドやアメニティグッズなどは、妥協せずに選ぶのをおすすめします。
加えて搬入経路の確認や設置場所の確保、配線工事の有無なども計画しておくと安心です。
STEP6:おもてなしの要「人材採用と育成」
ホテルの印象を大きく左右する「おもてなし」の質は、働く人材によって決まります。必要な人員を洗い出し、開業に向けての研修や教育体制を構築しましょう。
ホテルの規模や提供するサービス内容などを考慮し、必要な職種と人数を具体的に洗い出します。各部署に必要なスキルや経験を持つ人材の要件を明確化しましょう。
また研修体制の構築では、業務フローなどを覚える初期研修に加え、サービスの質を維持するためのスキルアップ研修なども実施すべきです。
STEP7:法的手続き「許認可申請と各種届出」
事業を開始するために必要な法的手続きと許認可申請、そして各種届出などを確認します。手続きを怠ると開業遅延や営業停止になる恐れがあるため、確実に実行しましょう。
ホテル開業に不可欠な主な許認可は、下記のとおりです。
旅館業法に基づく営業許可消防法に基づく消防用設備等設置計画届、消防設備士による点検報告食品衛生法に基づく飲食店営業許可(レストラン・カフェ併設店)その他関連法規に基づく許可・届出 |
法的手続きや許認可申請は、時間と手間がかかりがちです。開業に間に合うよう計画的に進めましょう。
STEP8:開業に向けた最終準備「集客準備と最終チェック」
最終ステップでは、集客の本格始動とスムーズなオペレーションのための最終確認が重要です。
開業日の告知と予約受付を開始するため、ホテルのWebサイトを公開します。魅力的な写真や情報を掲載し、予約の導線をわかりやすく設計しましょう。
また開業後のスムーズな運営のために、従業員によるオペレーションの最終確認を実施します。プレオープンを実施し、実際に顧客からのフィードバックを得るのも効果的です。
スムーズな開業に不可欠!必要な許可・届出の種類
ホテルの開業に不可欠な許可や届出の種類は、おもに以下のとおりです。
- 「旅館業法」に基づく営業許可
- 「食品衛生法」に基づく営業許可
- 「消防法」関連の手続き
- ホテル開業に関連するその他の法規
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「旅館業法」に基づく営業許可
旅館業法に基づく営業許可は必須で、無許可で営業すると罰則の対象となります。申請先はホテルの所在地を管轄する保健所です。
なお営業許可を得るためには、旅館業法および関連法規、地域の条例で定められた以下のおもな要件を満たす必要があります。
構造設備基準衛生基準その他(都道府県や自治体の独自条例で追加要件が定められている場合あり) |
事前に管轄の保健所に確認し、計画段階から基準を満たすように準備を進めましょう。
「食品衛生法」に基づく営業許可
ホテル内で食品を提供する場合は、食品衛生法に基づく営業許可が別途必要です。対象施設は厨房やレストランのほか、食品を扱う宴会場や売店なども含まれます。
申請先は、ホテルの所在地を管轄する保健所です。旅館業の許可とは別で手続きが必要なため注意しましょう。
また食品衛生法では原則として、食品を扱うすべての施設への食品衛生責任者の設置が義務付けられています。対象者は栄養士や調理師などの有資格者か、食品衛生責任者養成講習会を修了した者です。
「消防法」関連の手続き
ホテルは消防法に基づき、適切な設備の設置や定期的な点検と報告、そして防火管理体制の整備が義務付けられています。
消防法関連で必要な手続きは、以下のとおりです。
消防用設備等の設置義務防火対象物点検報告防火管理者選任 |
消防用設備等の設置では、ホテルの構造や収容人員に応じて、消火器や自動火災報知設備、スプリンクラー設備等の基準が定められています。
また防火対象物点検と防火管理者選任には、それぞれ資格が必要です。一般的にはホテルの支配人が防火管理者に選任されます。
ホテル開業に関連するその他の法規
ホテルの事業内容や物件の状況によっては、以下の関連する法規の届出も必要になります。
建物の用途変更や大規模修繕に関わる建築基準法深夜営業や遊興施設の設置に関わる風営法 |
事務所や商業施設など異なる用途の建物をホテルに変更する際は、建築基準法上の用途変更の手続きが必要です。
またホテルのバーなどで深夜0時以降に酒類を提供する場合は、深夜酒類提供飲食店営業の届出も求められます。警察署などに相談し、届出に漏れがないか確認しておきましょう。
失敗しないために!知っておきたいリスクと成功のポイント
ホテル開業で失敗しないために、知っておきたいリスクと成功のポイントを以下の3つの要素にわけて解説します。
- よくある失敗例
- 事前に検討すべきリスク対策
- 成功するホテルの共通点
1つずつ詳しく見ていきましょう。
よくある失敗例
ホテルの開業でよくある失敗例は、おもに以下のとおりです。
失敗例 | 原因 |
集客不振 | ・マーケティング戦略不足・競合分析不足・ポジショニングを確立できていない |
資金ショート | ・初期費用や運転資金の見積もり不足・予期せぬ支出や収入の遅れに対応できない |
人材の採用難定着率の低下 | ・採用戦略が甘く適切な人材を確保できない・フォロー不足によるES(従業員満足度)の低下 |
予期せぬトラブル | ・設備の不具合・クレーム発生によるCS(顧客満足度)の低下 |
魅力不足 | ・ホテルのコンセプトや強みが曖昧・ターゲット顧客が不明確 |
よくある失敗例でとくに多いのが、集客不振です。どんなに魅力的なホテルをオープンしても、ターゲット顧客に認知されなければ集客にはつながりません。
独自のポジショニングを確立できないと顧客を獲得できず、開業後も低稼働に苦しむことになります。
また資金ショートによる経営破綻もよくある失敗事例です。初期費用だけでなく、開業後の運転資金を甘く見積もってしまうと、予期せぬ支出や収入の遅れに対応できません。
ホテル開業の際には余裕を持った資金計画と、不測の事態に備えた準備金が不可欠です。
事前に検討すべきリスク対策
安定したホテル経営を実現するためには、事前に潜在的なリスクを洗い出し、適切な対策を講じることが不可欠です。以下に必要なリスク対策を解説します。
おもなリスク対策 | 内容 |
綿密な事業計画と市場調査 | ・市場調査に基づき、実現可能性の高い計画を立てる・ターゲット顧客、競合状況、収益予測などを徹底的に分析する |
余裕を持った資金計画と運転資金の確保 | ・初期投資だけでなく、開業後の運営に必要な運転資金も確保する・不測の事態や収入の変動に対応できるよう、最低でも数ヶ月分の資金を用意する |
効果的な集客戦略と予約管理 | ・ターゲット顧客に合わせたプロモーション展開(専用プラン作成など)・OTAとの連携強化(リスニング広告出稿など)・自社サイトの流入強化(OTA手数料の削減)・オーバーブッキングやノーショーを防ぐ予約管理システムの改善(サイトコントローラーの導入など) |
魅力的な労働環境づくりと人材育成 | ・公正な評価制度と報酬体系の導入(明確な評価基準の設置など)・柔軟な働き方とワークライフバランスの推進(従業員のライフスタイルに応じたシフト作成など)・良好な人間関係とコミュニケーションの促進(定例ミーティングの開催など) |
綿密な計画と準備に加え、事前のリスク対策がホテル開業の成否をわけます。失敗例を事前に把握し、必要な対策を講じましょう。
成功するホテルの共通点
数多くのホテルが存在する中で、成功を収めるホテルにはいくつかの共通点が見られます。以下に共通点とポイントをまとめましたので、参考にしてみましょう。
成功の共通点 | ポイント |
明確なコンセプトとターゲット設定による差別化 | ・誰に(ターゲット顧客)、どのような価値を提供するのか(コンセプト)を明確化する・競合との差別化を図り、独自の強みや個性を打ち出す |
顧客満足度向上のための継続的な努力 | ・顧客の声に耳を傾け、ニーズの変化に合わせた改善を継続的に実施する(接客技術に特化した人材の育成など) |
効率的な運営と収益性の確保 | ・稼働率や客室単価、RevPARに対する高い意識・競合調査や残室管理の徹底による質の高いレベニューマネジメントの実践 |
変化への対応力と柔軟性 | ・変化を敏感に捉え、柔軟に対応する力を身につける・新しい技術の導入やサービスのアップデートなど、常に進化し続ける姿勢を意識する |
Webマーケティング・レビュー管理 | ・効果的なWebマーケティング戦略を展開する(自社サイト強化、SNS活用など)・顧客レビューを積極的に管理し、信頼を獲得し維持する(返信の徹底やレビュー投稿キャンペーンの実施など) |
まとめ
ホテルの開業準備は多岐にわたる段階と専門性が求められるため、事業開始に至るまで相応の期間とコストを要します。
とくに許認可取得や人員配置、資金調達といった経営に関わる課題への対応が困難です。ノウハウがないと自社リソースで完遂することは難しく、現実的ではありません。
ホテルの新規開業や経営でお困りの方は、ぜひ「リロの宿まるごと90日改善プラン」にご相談ください。
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新規開業をご検討の方、検討をしている物件があるけど収支の見合いがわからない、といった方はお気軽にお問い合わせください。
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