コラム

2026.08.25

【2026年10月義務化】ホテル・旅館のカスハラ対策|対応方法・事例10選

【2026年10月義務化】ホテル・旅館のカスハラ対策|対応方法・事例10選

「お客様第一」の意識が強い宿泊業では、理不尽なクレームにもスタッフが一人で我慢して対応してしまいがちです。しかし2026年10月1日の法改正により、カスハラ対策は中小の旅館・ホテルも含むすべての事業主の法的義務になります。準備を先延ばしにするほど、現場の疲弊と離職リスクは大きくなります。

本記事では、正当なクレームとカスハラの線引き、宿泊業でよくある事例10選、現場で使える対応マニュアル5ステップ、スタッフを守る体制づくりまでを解説します。あわせて、状況別の初動フレーズがすぐわかる「カスハラ対応スクリプト集」と、法的対応が必要かを判定できる「エスカレーション判断フローチャート」も掲載しています。

法改正の施行を待たず、今のうちからできる備えを、この記事を通じて一つずつ整えていきましょう。

ホテル・旅館のカスハラ対策|事例と対応マニュアル【2026】

📌 この記事でわかること

2026年10月施行の法改正で何が事業主の義務になるのか
通常クレームとカスハラの線引きと、現場で使える対応マニュアル
スタッフを守る体制づくりと、法的対応が必要な場合の判断基準
🎯 この記事はこんな方に向けて書いています
スタッフのメンタル不調・離職に悩む経営者・支配人
2026年10月の法改正に向けて社内体制を整備したい担当者
現場でのカスハラ対応マニュアルを整備したいフロント・接客部門責任者
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カスハラの定義と通常クレームとの線引き

この章の結論

カスハラとは「要求内容の妥当性」または「要求手段・態様の相当性」のいずれかを欠く著しい迷惑行為。
商品・サービスへの改善を求める正当なクレームは、カスハラではなく重要な顧客の声。
線引きの基準を社内で明文化しておくことが、現場の迷いと過剰な我慢を防ぐ。

カスハラとは何か

厚生労働省は、カスタマーハラスメント(カスハラ)を「顧客等の言動のうち、要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもので、労働者の就業環境が害されるもの」と整理しています。すべてのクレームがカスハラに該当するわけではなく、商品・サービスへの改善を求める正当な指摘は、施設にとって重要な顧客の声として受け止めるべきものです。

「正当なクレーム」と「カスハラ」の見分け方

観点 正当なクレーム カスハラ
要求内容 提供したサービス・商品に対応した内容 そもそも理由がない、または著しく過剰
手段・態様 冷静な言葉で事実関係を伝える 暴言・威圧・長時間拘束・土下座要求等
施設側の対応 真摯に受け止め、改善につなげる 毅然と対応し、労働者を保護する

この記事が特に刺さる施設
・スタッフから理不尽なクレーム対応の相談が増えている
・2026年10月の法改正で何をすればいいか分からない
・カスハラ対応がスタッフ個人の忍耐力に任されている
——心当たりがある方は、このあとの対応マニュアルと体制づくりが参考になります。


2026年のカスハラ法規制動向

この章の結論

2026年10月1日、改正労働施策総合推進法によりカスハラ対策が全事業主の法的義務になる。
パワハラ防止法と異なり、中小企業向けの猶予期間は設けられていない。
義務化前の今のうちに、方針の明確化・相談体制・対応マニュアルの整備を進める必要がある。

改正法で何が変わるのか

2026年(令和8年)10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、カスタマーハラスメント対策が事業主の法的義務となります。これまでパワーハラスメント・セクシュアルハラスメントには雇用管理上の措置義務がありましたが、カスハラについても同様の位置づけとなり、労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象です。パワハラ防止法施行時にあったような中小企業向けの猶予期間は、今回設けられていません。

厚生労働省は2026年2月26日、カスタマーハラスメント防止指針を告示しました。詳細は厚生労働省「あかるい職場応援団」で確認できます。

事業主に求められる主な措置

施行までに整備すべき項目

カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する方針を明確化・周知する
相談窓口を設置し、労働者に周知する
被害を受けた労働者へのケア(配置転換、上長同席等)を行う
事実確認、行為者への対応(要求拒否、警察・弁護士への相談等)の手順を定める
マニュアル整備・研修等により、平時から労働者への配慮を行う

施行日はまだ先ではありません。マニュアル整備や相談窓口設置には準備期間が必要なため、今のうちから着手することが重要です。


カスハラ事例10選

この章の結論

ホテル・旅館特有のカスハラは「長時間拘束」「過剰な謝罪要求」「SNS拡散をちらつかせた脅迫」等のパターンが多い。
事例を事前に共有しておくことで、現場スタッフが「これはカスハラだ」と早期に気づける。
録音・記録の習慣化が、後の事実確認・法的対応の土台になる。

宿泊業でよくあるカスハラの10パターン

長時間の説教・拘束:些細な不備を理由に1時間以上フロントで説教を続ける
土下座・過剰謝罪の要求:口頭謝罪では収まらず、土下座や始末書を要求する
SNS拡散をちらつかせた脅迫:「SNSで晒す」「口コミで潰す」と要求を通そうとする
容姿・年齢等の個人的特徴への攻撃:業務と無関係な人格否定を繰り返す
正当な理由のない大幅値引き・無料化の要求:軽微な不備を理由に宿泊費全額返金を要求する
威圧的な大声・暴言:他の宿泊客がいる前で大声で怒鳴り続ける
身体的接触・軽度の暴力:カウンター越しに腕をつかむ、物を投げつける
繰り返しの電話・メールでの執拗な要求:同一内容を深夜・早朝含め何度も連絡してくる
特定スタッフへの執着的な攻撃:特定の担当者を名指しで繰り返し攻撃する
他の宿泊客・業務への悪影響を伴う行為:ロビーで大声を出し続け、他の宿泊客が不安を感じる

「よくあるクレーム」との違いに注意
「部屋が汚れていた」「説明と違った」といった指摘そのものはカスハラではありません。カスハラかどうかは、要求の中身ではなく、その伝え方・態様が社会通念上相当かどうかで判断します。事例を現場で共有し、線引きの感覚をスタッフ間で揃えておくことが重要です。


対応マニュアル5ステップ

この章の結論

初動対応の基本は「傾聴→事実確認→提案→線引き→記録」の5ステップ。
スタッフ1人で対応を長引かせず、早い段階で複数人・上長対応に切り替えることが重要。
対応中はできる限り録音・記録を残し、後の判断材料にする。

現場対応の基本フロー

初動対応5ステップ

①傾聴:まずは相手の話を最後まで聞き、感情的な反論を避ける
②事実確認:何が起きたのかを客観的に確認する(推測での謝罪を避ける)
③提案:施設として対応可能な範囲を具体的に提示する
④線引き:提案の範囲を超える要求には、毅然と対応できない旨を伝える
⑤記録:日時・発言内容・対応内容を記録し、可能な範囲で録音する

特に重要なのは④の「線引き」です。カスハラ対応において、要求に応じ続けることは根本的な解決になりません。対応可能な範囲を明確に伝え、それでも収まらない場合は次のステップ(上長対応・エスカレーション)に進む判断が必要です。

📝 カスハラ対応スクリプト集
状況を選ぶと、初動対応で使えるフレーズの型を表示します。

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スタッフ保護の体制づくり

この章の結論

「1人で対応させない」ルールの明文化が、スタッフの安心感と離職防止に直結する。
相談窓口・報告フローを整備し、被害を我慢せず共有できる文化をつくる。
被害を受けたスタッフへの事後ケア(配置転換・面談等)まで含めて体制を設計する。

体制づくりの3本柱

整備すべき体制

方針の明確化:カスハラには毅然と対応し、労働者を保護する旨を経営陣として宣言する
相談・報告の仕組み:被害を我慢せず報告できる窓口を設け、報告した人が不利益を受けない旨を明示する
事後ケア:被害を受けたスタッフへの面談、必要に応じた配置転換や休養の提案を行う

特に重要なのが「1人で対応させない」というルールです。深夜帯や少人数シフトでは対応が1人に集中しがちですが、電話一本で上長・別スタッフを呼べる体制を整えておくだけでも、スタッフの安心感は大きく変わります。

🚨 エスカレーション判断フローチャート
4つの質問にはい/いいえで答えると、現場対応・上長対応・法的対応のどの段階で判断すべきかを表示します。
Q1.身体的な接触や暴力、物を投げる等の行為があった
Q2.30分以上にわたり同じ内容の説教・拘束が続いている
Q3.土下座の強要、金品の要求など明らかに社会通念を超える要求がある
Q4.同一人物から繰り返し(複数回・複数日)の執拗な要求が続いている
回答済み:0 / 4 問 0%

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失敗パターン:泣き寝入りによる離職増

最も多い失敗:「お客様は絶対」という空気

「お客様第一」の意識が強い宿泊業では、理不尽な要求にも我慢して対応し続けてしまう傾向があります。この「泣き寝入り」の積み重ねが、優秀なスタッフから順に離職していく最大の要因になっています。実際、厚生労働省の調査では、過去に勤務先でカスハラを経験した労働者の一定割合が、不安を感じ仕事への意欲を失ったと回答しています。

⚠️ 内製対応の限界——「現場の我慢」に頼った運用が招く3つのリスク

明文化されたルールがなく現場の判断に任せている施設では、①スタッフごとに対応がバラつき不公平感が生まれる、②優秀な人材から順に離職する、③2026年10月の法改正に対応できず是正指導のリスクを負う——の3つが典型的に起こります。方針の明文化と研修の実施が「内製の限界」を突破する第一歩です。

🔍 プロとの差——専門家が確認する「3つの視点」

人材・労務の専門家は、①就業規則・マニュアルへのカスハラ対応方針の明記、②相談窓口の実効性(実際に使われているか)、③法改正指針に照らした自己点検——の3点を確認します。自施設の担当者が「起きてから考える」対応をしている間に、専門家は施行前の平時から体制を整備しています。


法的対応の判断基準

刑事・民事の対応を検討すべきケース

すべてのカスハラを法的対応に発展させる必要はありませんが、以下のようなケースでは、警察・弁護士への相談を検討すべきです。

行為の内容 想定される該当行為 相談先の例
暴力・威嚇 身体的接触、物を投げる、脅す言動 警察(緊急時は110番、相談は#9110)
不当な金品要求 理由のない返金・慰謝料の要求 弁護士、法テラス
誹謗中傷の拡散 SNS・口コミサイトでの事実無根の投稿 弁護士、プラットフォーム運営への削除申請

法的対応を検討する場合の相談先としては法テラス(日本司法支援センター)が利用できます。経済的な事情に関わらず、法制度や相談窓口の案内を受けられます。

判断に迷ったら一人で抱え込まない
法的対応が必要かどうかの判断は、現場スタッフや施設単独で下すものではありません。事実関係の記録を残したうえで、早めに専門家(弁護士・社会保険労務士)や警察相談窓口に相談する体制を、平時から整えておくことが重要です。


よくある質問(FAQ)

カスハラ対策に関するよくある疑問

カスハラ対策はいつまでに準備すればいいですか?
A. 2026年10月1日の法改正施行までに、方針の明確化・相談窓口の設置・対応マニュアルの整備が必要です。研修の実施や就業規則の見直しには準備期間がかかるため、できるだけ早く着手することをおすすめします。
小規模な旅館でも対策義務はありますか?
A. はい。今回の法改正には、パワハラ防止法にあったような中小企業向けの猶予期間が設けられていません。労働者を1人でも雇用していれば、規模を問わずすべての事業主が対象です。
スタッフがカスハラ被害を受けた場合、何をすればいいですか?
A. まずは被害の詳細(日時・内容・対応状況)を記録し、上長・相談窓口に報告する体制を整えてください。被害を受けたスタッフには、配置転換や休養の提案など、事後ケアも重要です。
録音は法律的に問題ありませんか?
A. 自社の従業員が業務上のやり取りを記録目的で録音すること自体は、一般的に違法とはされていません。ただし、録音の目的や運用方法について事前に社内でルールを定めておくと安心です。
カスハラを行った顧客への出入り禁止(宿泊拒否)はできますか?
A. 旅館業法では、伝染性の疾病や、宿泊者が公序良俗を害するおそれがある場合など一定の要件のもとで宿泊を拒否できるとされています。個別の判断が必要なため、繰り返し悪質な行為があった場合は弁護士等に相談することをおすすめします。
カスハラ対応マニュアルはどう作ればいいですか?
A. 本記事の対応マニュアル5ステップ(傾聴・事実確認・提案・線引き・記録)を土台に、自施設で実際に起きた事例を加えてカスタマイズするのが実践的です。定期的な研修とあわせて運用すると定着しやすくなります。
相談窓口は社内に作る必要がありますか?
A. 社内窓口が難しい場合は、社労士事務所や外部の相談サービスに委託することも可能です。重要なのは、スタッフが実際に「使える」窓口として周知・信頼されていることです。
カスハラ対応中に他の宿泊客への影響が心配です
A. 他の宿泊客の安心・安全を優先し、対応の場を別室やバックヤードに移すことを基本にしてください。ロビーでの長時間の押し問答は、他の宿泊客の満足度低下にもつながります。
スタッフへの研修はどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. 年1回以上を目安に、事例の共有と対応フローの再確認を行うことをおすすめします。新人スタッフの入社時研修にも組み込むと、対応の質が現場全体で安定します。
法改正の詳細情報はどこで確認できますか?
A. 厚生労働省の「あかるい職場応援団」で、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルや最新の指針が公開されています。施行前に最新情報を確認することをおすすめします。

まとめ:カスハラ対策は「義務」であり「離職防止策」

2026年10月の法改正により、カスハラ対策はもはや「やった方がいい取り組み」ではなく、すべての事業主の法的義務になります。同時に、スタッフを理不尽な要求から守る体制は、離職防止・人材定着という経営課題への直接的な打ち手でもあります。

まず取り組むべきは、①正当なクレームとカスハラの線引きの明文化、②傾聴・事実確認・提案・線引き・記録の対応マニュアル整備、③相談窓口・エスカレーション体制の構築、④法的対応が必要なケースの判断基準の共有——の4点です。施行日を待たず、平時から準備を進めましょう。

まずは対応スクリプト集とエスカレーション判断フローチャートを現場で試し、自施設の対応フローに落とし込むところから始めてみましょう。

株式会社リロホテルソリューションズでは、カスハラ対応マニュアルの整備から相談体制の構築、法改正対応のご相談まで一貫して支援しています。何から手をつければいいか分からない、という方はお気軽にご相談ください。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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