リロホテルソリューションズ

コラム

2025.06.23

ホテル経営に資格は必要?開業前に知っておきたい許可と取得すべき資格を徹底解説!

ホテル経営に資格は必要?開業前に知っておきたい許可と取得すべき資格を徹底解説!

ホテルや旅館の経営者になるために必要な資格はありません。ただし、開業にあたってはいくつかの許可が必要です。

この記事では以下の点を初心者の方にもわかりやすく解説します。

・ホテルの開業に必須の許可
・ホテルの経営に役立つ資格
・開業前に必要な準備と注意点

すでにホテル業界で働いていて独立を考えている方、もしくは新規にホテル業界への参入を考えている方はぜひ最後までご覧ください。

ホテル経営には資格・許可が必要?

ホテル経営には資格・許可が必要?

結論から言えば 述べると、ホテルを経営するために必要な資格はありません。ただし開業に必須の許可や知っておくべき法律は存在します。

以下の2点の要素を踏まえ、詳しく解説します。

  • 資格は不要だが“許可”は必須
  • 旅館業法について

資格は不要だが“許可”は必須

ホテルや旅館の経営自体に必須の資格はありませんが、無許可での営業はできません。開業には適切な許認可の取得が不可欠です。

たとえば旅館業法にもとづく営業許可や、食品衛生法にもとづく飲食店営業許可(レストランなどを併設する場合)、消防法にもとづく防火対象物使用開始届などが必要です。

あわせて大浴場を設置する場合は公衆浴場の手続きも求められます。施設の規模や提供サービスに合わせて複数の許可が必要になるため、漏れがないようにリストアップしておきましょう。

旅館業法について

旅館業法は、旅館業の適正な運営を確保し、健全な発展と公衆衛生および国民生活の向上に寄与することを目的とした法律です。この中では宿泊施設について「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義し、ホテル・旅館・簡易宿所・下宿の4種類に分類しています。

なお、旅館業を営むには都道府県知事(保健所設置市や特別区では市長または区長)の許可が必要です。また許可を得るには施設が構造設備基準や、衛生基準などを満たしていなければなりません。

さらに宿泊者名簿の備え付けや、特定の感染症患者等を除き原則として宿泊を拒否できない義務なども定められています。なお、2023年には宿泊拒否事由の追加や、感染防止対策の充実などが盛り込まれた改正旅館業法が施行されました。

旅館業法の遵守は営業の必須条件のため、専門家のアドバイスを受けるなどして法令違反のないようにしましょう。

ホテル開業に必須の許可と取得の流れ

ホテル開業に必須の許可と取得の流れ

ホテル開業に求められる許可には、主に以下のようなものがあります。

  • 旅館業営業許可の種類と要件
  • 飲食提供に必要な許可の種類と要件
  • 大浴場に必要な許可の種類と要件

それぞれ詳しく解説します。

旅館業営業許可の種類と要件

旅館業営業許可は以下の4種類に大別されます。

種類対象・要件
ホテル営業許可・洋式の構造設備を主とする施設・洋朝食提供可能な厨房や食堂、一定水準以上のロビー面積など
旅館営業許可・和式の構造設備を主とする施設・客室面積や玄関帳場の設置など
簡易宿所営業許可・宿泊場所を多数人で共用する施設(カプセルホテルなど)・客室の延べ床面積が33㎡以上(10人未満は1人あたり3.3㎡以上)、適切な換気や採光設備など
下宿営業許可・1か月以上の期間を単位とする宿泊契約

参照:旅館業法の概要等について/厚生労働省

また大まかな手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 保健所や消防署などに必要書類を申請
  2. 書類審査と現地検査で問題がないか確認
  3. 許可証が交付される

なお取得までの期間は2週間〜1か月程度です。申請手数料はホテル・旅館営業で22,000〜30,000円、簡易宿所や下宿営業で16,000円程度ですが、具体的な金額は各自治体で異なります。

飲食提供に必要な許可の種類と要件

ホテル内で飲食を提供したり売店などで酒類を販売する場合は、飲食店営業許可と酒類販売許可の2つが必要です。

飲食店営業許可酒類販売許可
対象・レストラン・カフェ・ルームサービス・売店(※未開栓の酒類を販売する場合)
申請場所保健所税務署
取得期間(目安)2週間〜1か月4〜5か月
費用(目安)16,000〜19,000円30,000円(酒類小売業免許)

飲食店営業許可では、営業許可申請書や施設の平面図、食品衛生責任者の資格を証明する書類などの提出が求められます。

また酒類販売許可は未開栓の酒類を販売する際に必要な許可です。レストランやバーで開栓して提供するのであれば、酒類販売許可の申請は必要ありません。

大浴場に必要な許可の種類と要件

ホテルの大浴場は利用対象によって必要な許可が異なります。宿泊者専用の大浴場であれば、旅館業営業許可の範疇に含まれるため公衆浴場法の許可は不要です。

一方、日帰り入浴など宿泊者以外も利用できる大浴場は公衆浴場営業許可が求められます。取得の流れは以下の通りです。

  1. 事前相談…保健所や消防署などで基準に適合しているか確認
  2. 建築確認・工事…消防法にもとづく消防法令適合通知書などを取得
  3. 申請…必要書類を揃え保健所に提出
  4. 現地調査…保健所の担当者が基準を満たしているか確認
  5. 許可・交付…調査結果に問題がなければ交付

なお申請手数料は自治体によって異なりますが、おおむね22,000〜30,000円程度です。

ホテル経営に役立つ資格

ホテル経営に役立つ資格

ホテルの経営に役立つ資格には、以下のようなものがあります。

  • 防火管理者
  • 食品衛生責任者
  • 設備管理・安全関連資格
  • 語学系の資格(TOEICなど)
  • 接客・サービス・マナー系の資格
  • 経営系・財務系の資格

それぞれ詳しく解説します。

防火管理者

防火管理者は建物全体の防火安全を確保する責任者で、火災予防や初期消火、避難誘導など防火管理業務を遂行するために必要な国家資格です。

なお「甲種」と「乙種」の2種類があり、甲種は大規模な建物を含む全ての防火対象物に、乙種は比較的小規模な建物に限定されます。

その他資格の詳細は以下のとおりです。

項目内容
必要になるケース・収容人員が30人を超える場合・ホテル全体の延べ床面積が300㎡以上、かつ収容人員30人以上の場合は甲種防火管理者が必要
経営者が取得するメリット・従業員の防火意識向上・外部委託コストの削減 など
取得方法・全国各地で開催される「防火管理講習」を受講する
問い合わせ先防火・防災管理講習

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、食品衛生法に基づき、飲食店や食品の製造・販売を行う施設ごとに選任が義務付けられている資格者です。食中毒の予防や施設内の衛生管理など、日常の衛生業務に責任を持ちます。

なお、施設内に複数の飲食施設(レストランなど)を併設する場合は、それぞれの営業施設ごとに食品衛生責任者の配置が必要です。各施設が独立した営業許可を取得するため、施設単位での管理が求められます。詳しくは、所轄の保健所に確認しましょう。

その他資格の詳細は、以下のとおりです。

項目内容
必要になるケース・レストラン、カフェ、宴会場、ルームサービスなど宿泊客に食事や飲み物を提供する場合
経営者が取得するメリット・施設全体の衛生意識の向上・外部委託費用の削減
取得方法・食品衛生責任者養成講習会を受講する・調理師や栄養士などの特定資格を取得する
問い合わせ先公益社団法人日本食品衛生協会

設備管理・安全関連資格

防火管理者や食品衛生責任者のほかにも、設備面や安全面において以下のような資格も役立ちます。

項目内容
資格名危険物取扱者(乙種4類)
概要ガソリン、灯油、重油など、引火性のある危険物を取扱うための国家資格
必要になるケース自家発電機用の燃料(重油など)を貯蔵したり、ボイラーの燃料を扱ったりする場合
取得方法筆記試験(危険物に関する法令、物理・化学、性質・消火方法など)
問い合わせ先一般財団法人 全国危険物安全協会
項目内容
資格名衛生管理者
概要常時50人以上の従業員がいる事業場で、労働者の健康管理や作業環境の改善を実施するための国家資格
必要になるケース1施設で常時50人以上の従業員を勤務させる場合
取得方法・講習会受講や通信教育など※最終学歴に応じて必要な実務経験年数が異なる中卒:10年以上高卒・高認試験合格者:3年以上大学・短期大学・高等専門学校:1年以上
問い合わせ先公益財団法人 安全衛生技術試験協会

語学系の資格(TOEICなど)

増加するインバウンド需要に対応するために、語学系の資格を取得するのもおすすめです。おすすめの資格を2つ紹介します。

項目内容
資格名TOEIC L&R(リスニング&リーディング)
概要英語によるコミュニケーション能力を測る世界共通のテスト
取得するメリットインバウンド客が多い外資系ホテルでは必須(最低650以上)
取得方法年10回程度開催されており、インターネットやコンビニで申込み可
問い合わせ先【公式】TOEIC Program|IIBC
項目内容
資格名観光英語検定
概要観光業界に特化した英語能力を証明する資格
取得するメリットホテル業務で頻繁に使用される専門用語やフレーズに強くなれる
取得方法・年に複数回実施・筆記試験とリスニング試験
問い合わせ先観光英語検定

接客・サービス・マナー系の資格

ホテルで宿泊客に最高の「おもてなし」を提供するには、接客・サービス・マナーに関する専門知識とスキルが欠かせません。サービス系でおすすめの資格は以下の2つです。

項目内容
資格名サービス接遇検定
概要サービス業務に対する心構え、対人心理の理解、応対技術、話し方、態度などを総合的に評価する検定
取得するメリット・接客の基本的なマナーや技術を証明できる・フロントやコンシェルジュで役立つ
取得方法・筆記試験と面接試験※3級と2級は筆記試験のみ
問い合わせ先サービス接遇検定/公益財団法人 実務技能検定協会
項目内容
資格名ホテルビジネス実務検定(H検)
概要ホテル業務全般に関する実務知識を体系的に学べる検定
取得するメリット宿泊、料飲、宴会、マーケティング、総務、経理など、ホテルの幅広い業務知識を網羅できる
取得方法筆記試験
問い合わせ先ホテルビジネス実務検定試験(H検)公式サイト

経営系・財務系の資格

ホテルを経営者として開業するのであれば、経営系や財務系の資格も有用です。以下に代表的な資格を2つ紹介しますので、取得を検討してみましょう。

項目内容
資格名中小企業診断士
概要経営コンサルタントとして唯一の国家資格
取得するメリット財務・会計、マーケティング、生産管理、人事・労務、情報システムなど、ホテル経営に必要な知識を学べる
取得方法一次試験(筆記)→二次試験(筆記・口述)→実務補習または実務従事
問い合わせ先中小企業診断士/一般社団法人中小企業診断協会
項目内容
資格名FP技能士(ファイナンシャル・プランニング技能士)※2級以上を推奨
概要個人や法人の総合的な資産設計や資金計画を立てる専門家
取得するメリットホテルの開業と運営に必要な資金調達(融資、補助金など)や、将来的な設備投資に関する知識が深まる
取得方法学科試験と実務試験※2級は実務経験や3級合格が受験資格
問い合わせ先※日本FP協会と金融財政事情研究会がそれぞれ実施特定非営利活動法人 日本FP協会一般社団法人 金融財政事情研究会

ホテルの開業前に必要な準備と注意点

ホテルの開業前に必要な準備と注意点

ホテルの開業前に必要な準備と注意点を、以下の2つの観点から解説します。

  • 資格・許可以外に準備するもの
  • ホテル開業でつまずきやすいポイント

資格・許可以外に準備するもの

ホテル開業には綿密な準備が不可欠です。事業計画の策定ではコンセプトやターゲット顧客、収益予測や資金計画などを具体的に落とし込みましょう。必要な開業資金を明確にし、融資や補助金などの調達を進めます。

次に立地や法的規制を考慮した上で物件を選定します。内装や設備はもちろん、お客様と従業員の導線設計を意識するのがポイントです。

また並行してホテルのコンセプトに合った人材の採用と育成にも着手しておくと、スムーズな開業につながります。

ホテル開業でつまずきやすいポイント

ホテル開業では計画通りに進まないことが多々あります。特に注意すべきは、旅館業法や建築基準法といった法令対応の見落としです。いずれも許可がないと運営できないため、抜かりなく対応しましょう。

また物件の既存設備の劣化や許認可に必要な追加工事など、事前調査では予測しきれない想定外のコスト増も頻発します。加えて内装のこだわりによる予算超過も起こりがちです。

予期せぬ事態が開業そのものを頓挫させるケースもあります。以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

>>ホテル開業の前に知っておきたい!稼働率の基本と成功するホテル経営の全体像とは?

ホテルの開業や経営で困ったときの相談先

ホテルの開業や経営で困ったときの相談先

ホテルの新規開業や経営でお困りの方は、ぜひリロホテルソリューションズにご相談ください。

「90日で黒字化」をスローガンに事業再生を通じて全国リゾート地や過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団が、宿泊業のさまざまな課題を解決へと導きます。

新規開業をご検討の方や、検討中の物件があるけど収支の判断がつかない、といった方はお気軽にご相談ください。

まとめ

まとめ

ホテルの経営に必須の資格はありませんが、無許可での営業はできません。旅館業法にもとづく営業許可や消防法にもとづく防火対象物使用開始届などが必須です。

また施設の設備や規模によっては、食品衛生責任者や衛生管理者などの資格も求められます。開業前に必要な許可や取得すべき資格を把握しておき、スムーズな開業を目指しましょう。

「初めてのホテル経営で何から着手したら良いかわからない」といった方は、ぜひリロホテルソリューションズにお任せください。

開業前の段取りから開業後のアドバイスまで、ホテル運営のプロ集団が事業者様に課題に沿ったオーダーメイドのプランを提案いたします。

>>お問い合わせはこちらから!

株式会社リロホテルソリューションズ
株式会社リロホテルソリューションズ

【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。