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コラム

2025.07.21

ホテルDXとは?導入のメリット・成功事例・注意点を徹底解説

ホテルDXとは?導入のメリット・成功事例・注意点を徹底解説

業務の効率化を目的に、ホテルのDX化を検討している方も多いでしょう。DX化の推進は業務の効率化や人手不足の解消につながります。

本記事では以下のような項目を解説します。

・ホテルのDXとは何か
・DXが注目される理由や宿泊業界の取り組み状況
・どのような業務や場面に活用できるか
・DXを進めるメリットと注意点

ホテルのDX化を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

ホテルDXとは?注目される理由と業界の現状

ホテルのDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ホテル業界におけるデジタル技術を活用したビジネスモデルや顧客体験、業務プロセスの変革のことです。

経済産業省では、DXを以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用:デジタルガバナンス・コード実践の手引(要約版)|経済産業省

宿泊業界でDXが注目される背景には、コロナ禍で顕在化した人手不足の深刻化や、多様化する顧客ニーズへの対応、オンライン旅行代理店(OTA)の台頭による競争激化といった構造的な課題があります。

また宿泊業界のDX推進状況は、他業界と比べ遅れているのも特徴です。「DX白書2023」によると、DXに取り組む企業の割合は情報・通信業や金融業で45%なのに対し、宿泊業は16%にとどまっています。DXの取り組みが成果に結びついている企業の割合はさらに低く、多くの企業が変革の途上にあります。

なおDX推進が遅れている主な理由は、IT人材の不足です。専門知識を持つ人材の確保が困難なことに加え、既存システムの老朽化やIT投資への予算も不足しています。

参考:DX白書2023|独立行政法人情報処理推進機構

ホテルDXで何が変わる?具体的な活用シーン

ホテルDXで何が変わるのか、以下の活用シーンをもとに解説します。

  • 予約・顧客管理業務のDX
  • フロント・チェックイン業務のDX
  • 清掃・館内業務のDX
  • レストラン・その他業務のDX

順に詳しく見ていきましょう。

予約・顧客管理業務のDX

予約・顧客管理業務のDX化は、以下のようにさまざまなメリットがあります。

【オンライン予約システム&サイトコントローラーの活用】

電話予約の手間が削減され、24時間国内外からの予約受付が可能になります。また複数のOTAや自社サイトの在庫を一元管理できるため、ダブルブッキングを防ぎ人的ミスを削減できます。

【PMS(宿泊管理システム)の導入&クラウド化】

予約情報、顧客情報、請求書発行などを一元管理し、業務の効率化とペーパーレス化を推進します。近年ではオンプレミス型(自社内にITインフラを設置)からクラウド型への移行が進んでおり、場所を選ばずにシステムへアクセスできる利便性やシステムメンテナンスの負担軽減がメリットになっています。

【CRM(顧客管理システム)と連携したパーソナライゼーション】

顧客の属性、嗜好、宿泊履歴、フィードバックなどのデータを収集・分析し、顧客に合わせてパーソナライゼーションします。誕生月のメール送付や利用履歴に基づいた特典の提供など、顧客ロイヤルティを高めるマーケティング施策も展開できます。

【RPA(Robotic Process Automation)の活用】

RPAは定型業務の自動化に貢献します。予約受付、確認、変更、キャンセルといったルーティンワークをRPAで自動化することで、担当者の負担を軽減し付加価値の高い顧客対応やサービス向上に注力できるようにします。

フロント・チェックイン業務のDX

フロント・チェックイン業務のDX化が進めば、以下のように顧客体験の向上と業務の効率化につながります。

【スマートチェックインの導入】

自動チェックイン機やモバイルチェックインの導入で、フロントの混雑が緩和されゲストの待ち時間が短縮されます。非接触対応も可能となり、多言語対応でインバウンドもスムーズに手続きできるため人件費の削減にもつながります。

【チャットボットの活用】

WebサイトやSNSにチャットボットを導入すれば、ゲストからの問い合わせに24時間多言語で対応できます。フロントスタッフの負担が減り、人件費削減とゲストの利便性向上を両立できるでしょう。

【客室タブレットの設置】

客室にタブレットを設置し、Wi-Fiパスワードの案内や館内設備の情報、アメニティやルームサービスの注文、スタッフへの連絡などを可能にします。宿泊客は必要な情報をすぐに得られるうえ、フロントへの問い合わせも減らせます。

清掃・館内業務のDX

清掃や館内業務のDX化を進めれば、以下のように効率的な運営と質の高いサービスの提供を実現できます。

【清掃ロボットの導入】

清掃ロボットを導入し、ロビーや廊下などの共有スペースの清掃を自動化します。清掃スタッフの身体的負担が軽減されるため、人手不足への対策としても有効です。

【人感センサーの活用】

大浴場や客室の入退場を感知し、清掃やメンテナンスのタイミングを最適化します。また宿泊客が客室に入室したことも感知できるため、フロントに事前通知することでよりパーソナルなサービス提供にもつながります。

【配送ロボットの導入】

アメニティや飲食物を客室へ効率的に運搬します。スタッフの業務負担を軽減し、宿泊客は必要なものを待たずに受け取れるため、利便性が向上します。

【館内案内ロボット】

館内案内ロボットは多言語対応で施設やサービスを案内し、コンシェルジュのような役割も果たします。ホテル内を巡回しながらゲストの質問に答え、スムーズな移動をサポートすることで顧客満足度を高めます。

レストラン・その他業務のDX

レストランやその他業務においても、DX化で以下のようなメリットを得られます。

【配膳ロボットの導入】

レストランで活用すれば、料理運搬の効率を大幅に高められます。スタッフの負担も軽減できるため、サービス品質の向上にもつながるでしょう。なお、すでに大手飲食チェーンなどでは配膳ロボットが活用されており、人手不足を補うDX化が進んでいます。

【デジタルキーの導入】

宿泊客のスマートフォンを鍵として利用できるデジタルキーは、客室だけでなく館内施設へのアクセスも可能にします。鍵の受け渡しが不要なため、チェックイン・アウトの時間を短縮できるうえ、宿泊客もスムーズに移動でき利便性も上がるでしょう。

また上記とは別に、ホテルの差別化と集客に新たな可能性をもたらすためにAR(拡張現実)アプリを活用する方法もあります。ARを用いた館内での道案内やスタンプラリーなどで滞在を楽しく演出したり、SNSキャンペーンと連携しホテルの魅力を多角的に発信したりできるなどのメリットがあります。

ホテルDXを推進するメリット

ホテルのDX化を推進するメリットは、主に以下の5つです。

  • 人手不足の解消と業務効率化
  • 顧客体験(ゲストエクスペリエンス)の向上
  • データに基づいた経営戦略
  • 競争優位性の確立
  • 接客品質の向上

1つずつ詳しく解説します。

人手不足の解消と業務効率化

ホテルのDX化は人手不足の解消と業務効率化に大きく貢献します。なぜならロボットやシステムの導入で清掃、配膳、予約受付といった定型業務が自動化・省人化されるためです。

スタッフの負担が大幅に軽減するため、より質の高い顧客サービスや付加価値の高い業務に集中できるようになります。スタッフの満足度も向上するため、結果として離職率の低下にもつながり人手不足の解消にも役立ちます。

顧客体験(ゲストエクスペリエンス)の向上

ホテルのDX化は顧客体験を飛躍的に向上させます。例えばスマートチェックインで待ち時間を解消すれば、デジタルキーでスムーズな客室アクセスを実現できます

またCRMによる顧客データ分析により、ゲストの嗜好に合わせたパーソナライズされた情報やサービスの提供も可能です。さらにチャットボットや客室タブレットを活用すれば、問い合わせの利便性が上がり顧客満足度の向上につながります。

データに基づいた経営戦略

ホテルのDX化はデータに基づいた経営戦略にも貢献します。PMSやCRMに蓄積された顧客データや稼働率、客層の分析により、需給に応じた価格設定や客室管理ができます。

また詳細な顧客分析により、ターゲットを絞ったマーケティング施策や新たな顧客ニーズを捉えた宿泊プランの考案も可能です。ホテルの競争力強化と持続的な成長につながります。

競争優位性の確立

デジタル技術を積極的に活用することで、競合ホテルに対する優位性を確立できます。例えばスマートチェックインやパーソナライズされたサービス、多言語対応のロボット導入などは効率化だけではなく、顧客体験の差別化にも直結します。

さらに他ホテルにはない先進的なサービスは、顧客ロイヤルティを高め新規顧客の獲得にも効果的です。データに基づいた迅速な経営判断もできるため、市場の変化に柔軟に対応し競争優位性を確立できるでしょう。

接客品質の向上

ホテルのDX化は接客品質の向上に直結します。システムやロボットによる定型業務の自動化はスタッフの業務負担を軽減し、ルーティンワークの時間を有効に活用できるためです。

ニーズに寄り添ったきめ細やかな対応やサプライズなど、従業員がホスピタリティの提供に集中できるため顧客満足度が大きく向上します。

ホテルDXの成功事例

リロホテルソリューションズが支援したあるホテルでは、チェックイン・アウトや館内予約(電話予約)をシステムに移管することで、管理に関わる人員の削減に成功しています。

フロントの人員を4名から2名に削減し、さらに貸切風呂などの予約もPMSと連動してオンラインで即時対応できる仕組みを導入したことで、管理工数の削減だけでなく付帯収入の増加も実現しました。

ホテルDXの注意点

ホテルのDXを推進するうえでの注意点は、主に以下の5つです。

  • 単なるデジタルツール導入で終わらせない
  • 現場の協力と理解を得る
  • 費用対効果を明確にする
  • セキュリティ対策をする
  • IT人材を確保・育成する

順に詳しく解説します。

単なるデジタルツール導入で終わらせない

ホテルのDX化を進めるうえで、単にデジタルツールの導入だけでは不十分です。DXの本質は「変革」であり、ツールの導入はあくまでそのための手段に過ぎません。

導入後のシステムから得られるデータを活用し、それに基づいたビジネスモデルやサービスプロセスの変化まで見据えることが重要です。単なる業務のデジタル化で終わらせず、顧客体験の向上や新たな価値創造といった経営戦略的な視点を持ってDXを推進しましょう。

現場の協力と理解を得る

ホテルのDX化成功には、現場スタッフの協力と理解が不可欠です。日々の業務変更は現場スタッフにとって大きな負担となり、抵抗が生じるケースがあります。

スタッフの理解と協力を得るためには、DXの目的やメリットを積極的に説明しスタッフが変革の必要性を理解することが重要です。一度にすべてを変えず段階的に推進することで、現場の混乱を最小限に抑えられます。

また経営層がDX推進に関与しコミットメントを示すことで、スタッフは安心して変化に対応できるでしょう。

費用対効果を明確にする

ホテルのDX化を進める際は、費用対効果を明確にしましょう。システム導入による人件費削減や業務効率向上、顧客満足度向上によるリピート率増加といった長期的な視点でのメリットを具体的に算出するのがポイントです。

投資が将来的にどれだけの収益改善やコスト削減につながるのかを数値で示すことで、経営層の理解を得られ持続可能なDX推進を後押しできます。

セキュリティ対策をする

ホテルのDX化は顧客情報や予約データなどの機密情報をデジタルで扱うため、情報セキュリティリスクが常に伴います。例えば不正アクセスや情報漏洩、システムダウンなどはホテルの信頼を著しく損ない、多大な損害を招く恐れがあります。

ほかにも強固なファイアウォールの設置やデータの暗号化、定期的なセキュリティ監査や従業員へのセキュリティ教育など、セキュリティ対策を徹底することが不可欠です。DX推進と並行し、リスクにも対応できる体制を構築しましょう。

IT人材を確保・育成する

ホテルのDX化を成功させるには、IT人材の確保と育成が不可欠です。優れたデジタルツールも、システムを構築・運用できる人材がいなければDX化は実現しません。

既存の従業員に対してデジタルリテラシー研修や専門スキルの習得機会を提供し、DXを推進できる人材を内部で育成しましょう。もし自社にノウハウがなければ、外部の専門家に相談しDX化を進めるのをおすすめします。

DX推進はプロへの相談も視野に!

多くのホテルがDX人材の不足に直面している中、すべてのプロセスを自社だけで抱え込むことは非効率であり失敗のリスクも高まります。

ホテルのDX化を確実に推進したい場合は、ぜひ専門家への相談を検討しましょう。専門家はホテル業界特有の課題やトレンドを理解したうえで、状況に合わせた最適なソリューションを提案できるためです。

またシステムの導入支援から運用開始後のサポート、さらにはデータの分析に基づく改善提案まで一貫して支援することで、DX化をスムーズに進められます。自社では気づきにくい問題点の発見や最新技術に関する知見も得られるでしょう。

リロホテルソリューションズでは「90日で黒字化」をスローガンに、ターンアラウンドを通じて全国40か所以上のリゾート地や過疎地の宿泊施設を運営してきた実績があります。

ホテルのDX化に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

>>お問い合わせ|リロホテルソリューションズ

まとめ

ホテルのDX化推進は、多岐にわたる効果をもたらします。予約、清掃、フロント業務などの定型業務の自動化は、人手不足の解消とスタッフの業務負担を軽減します。

またDXによるスムーズなチェックインやパーソナルな情報提供、24時間対応など利便性の高いサービスは顧客満足度の向上に効果的です。

さらに蓄積された顧客データや稼働率データの分析により、データに基づいた経営戦略を立案できるようになります。

ホテルのDX化でお困りの方は、ホテル業のプロ集団であるリロホテルソリューションズへお気軽にご相談ください。

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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。