ホテルのフランチャイズ経営とは?仕組みやメリットを解説

ホテル経営を考えるとき「失敗しにくい方法を選びたい」と感じる方は多いでしょう。中でも注目されるのがフランチャイズ方式です。大手ブランドの知名度や運営ノウハウを活用でき、初めてでも安定した経営を目指しやすいのが特徴です。
この記事では、ホテルフランチャイズの仕組みやメリット・デメリットを解説し、ほかの経営方式との違いも比較します。これからホテルを開業したい方や、経営方法で迷っている方におすすめです。

ホテル経営における「フランチャイズ方式」とは?
ホテルのフランチャイズ方式とは、本部(フランチャイザー)が持つブランド名や運営ノウハウを、加盟店(フランチャイジー)が使用できる仕組みです。加盟店は、ブランド力という看板を活用して運営できる一方、対価として本部にロイヤリティを支払います。本部は経営マニュアルや予約システム、マーケティング戦略などを提供し、加盟店の運営をサポートします。
このモデルの大きな特徴は、未経験者でも参入しやすい点です。独自にホテルを立ち上げる場合、ゼロから運営ノウハウを積み上げ、集客や仕入れルートを確立する必要があります。
しかしフランチャイズであれば、すでに確立された仕組みを利用でき、開業初期から安定した経営基盤を築きやすくなるのです。初めてホテル経営に挑戦する人にとって、魅力的な選択肢として注目を集めています。
フランチャイズでホテル経営を始める5つのメリット
フランチャイズ方式には、ホテル経営を初めて検討する人にとって大きな利点が数多くあります。ここでは代表的な5つのメリットを紹介します。
- ブランド力を活用し、開業初期から集客しやすい
- 確立された運営ノウハウを学べる
- 本部による継続的なサポートを受けられる
- 設備や備品を安価に調達できる場合がある
- 金融機関からの融資が受けやすい傾向にある
それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
メリット1:ブランド力を活用し、開業初期から集客しやすい
知名度のあるブランドを看板として掲げられるため、開業直後から一定の集客が期待できます。独自に宣伝やブランディングを進めるよりも早く認知され、スタート時のリスクを抑えられる点は大きな魅力です。
さらに本部が運営する全国的な予約システムや会員制度を利用でき、リピーター確保や稼働率の安定につながる点も強みです。
メリット2:確立された運営ノウハウを学べる
フランチャイズでは、本部が長年培った運営マニュアルを活用できます。フロント業務や清掃、接客、スタッフ教育まで体系的に整備されており、経験が少ない経営者でも効率的な運営が可能です。
さらに、研修や勉強会に参加できる場合もあり、常に最新の知識を取り入れられる環境が整っています。試行錯誤を減らし、事業をスムーズに軌道に乗せやすい点も大きなメリットです。
メリット3:本部による継続的なサポートを受けられる
開業準備から運営後の課題解決まで、本部スタッフが継続的に支援してくれるのも安心材料です。立地選定や開業前研修、集客施策などをサポートが受けられるため、初めての経営でも不安を軽減できます。
メリット4:設備や備品を安価に調達できる場合がある
チェーン全体でのスケールメリットを活かし、客室備品やアメニティ、建材などを本部を通じて安価に仕入れられる場合があります。開業時や運営コストの削減につながる点は大きなメリットです。
メリット5:金融機関からの融資が受けやすい傾向にある
フランチャイズ本部のブランド力や実績は金融機関からの評価が高く、事業計画の信頼性が増します。そのため融資審査が通りやすく、開業資金を確保しやすいのも魅力です。資金調達に不安を感じる初心者には特に有利な仕組みといえるでしょう。
フランチャイズ経営のデメリット
フランチャイズ方式には多くの利点がある一方で、経営上の制約やコスト面での負担も存在します。ここでは特に注意すべきデメリットを紹介します。
- ロイヤリティの支払いが発生する
- 経営の自由度が低い
- 他の加盟店の不祥事に影響を受けやすい
それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
デメリット1:ロイヤリティの支払いが発生する
フランチャイズ契約では、本部に対して毎月ロイヤリティやシステム利用料を支払う必要があります。固定費として発生するため、閑散期や不景気などで売上が落ち込む時期には、経営を圧迫する要因となりかねません。
開業直後は収益が安定しにくいため、ロイヤリティの支払いが大きな負担になるケースもあります。慎重に資金計画を立てておくことが重要です。
デメリット2:経営の自由度が低い
ブランドイメージを守るために、本部が定めたルールを遵守する必要があります。客室のデザインや使用する備品、提供するサービス内容まで細かい制約があり、独自性を打ち出したい経営者にとっては、自由度に物足りなさを感じるかもしれません。
地域の特性に合わせた柔軟な運営や、独自のアイデアを反映させたい場合には、制限が障害となる場合もあります。
デメリット3:他の加盟店の不祥事に影響を受けやすい
フランチャイズでは、ブランド全体で信用を共有する仕組みとなっているため、他店舗で起きたトラブルや不祥事が自店のイメージにも影響を与えるリスクがあります。たとえ自店のサービスが良好でも、チェーン全体の評価が落ちれば、集客や収益に悪影響を及ぼす可能性があります。
自分の努力だけではコントロールできない要素が評価に影響する点は、独立経営にはないリスクといえるでしょう。
【一覧表】リース方式や所有直営方式など他の運営形態との違い
ホテルの運営方法には、フランチャイズ方式のほかに下記の3つの形態があります。
- 所有直営方式
- リース方式
- MC(運営委託)
それぞれ、条件によって特徴が大きく異なります。まずは全体像を整理し、フランチャイズ方式の立ち位置を確認してみましょう。
※ここでは「不動産を所有し、経営する主体」を事業者としています。
フランチャイズ方式 | 所有直営方式 | リース方式 | MC(運営委託)方式 | |
不動産所有 | 事業者 | 事業者 | 事業者 | 事業者 |
開業投資 | 事業者 | 事業者 | 運営者(リース先) | 事業者 |
運営主体 | 事業者 | 事業者 | 運営者(リース先) | 運営者(委託先) |
ブランド | 本部ブランド | 事業者側独自のブランド | 運営者(リース先) | 運営者(委託先) |
メリット | ブランド力活用、ノウハウ提供、融資に有利 | 自由度が高く利益を独占できる | 経営リスクを回避でき、不動産収入を得られる | 専門家に任せられる安心感がある |
デメリット | ロイヤリティ発生、自由度に制限あり | 集客や運営をすべて自力で担うリスクがある | 運営方針に口を出しにくく、収益は限定的 | 委託費が発生、自由度に制限あり |
フランチャイズは、自ら経営に関わりつつブランド力やノウハウを活用できる点が強みです。所有直営方式ほどの自由度はなくても、リースや委託方式に比べて主導権を持ちやすく、初心者にとって参入しやすい選択肢といえるでしょう。

フランチャイズ展開で有名なホテルチェーンの例
フランチャイズ方式は、大手チェーンの加盟制度を通じて全国展開されており、ブランドごとに異なる特徴があります。ここでは代表的な3つのホテルチェーンを紹介します。
- アパホテル
- スーパーホテル
- ドーミーイン
それぞれのチェーンについてご紹介します。
アパホテル
「Even Better!APAHOTEL」(良いものをさらに良く)をスローガンに掲げるアパホテルは、都市型ホテルの代名詞として全国に展開しています。ビジネス利用から観光まで幅広いニーズに対応し、低価格ながら快適性と機能性を重視した客室設計が強みです。
さらに自社予約システムやアパ会員制度を通じた集客力も高く、稼働率の高さで業界をリードしています。フランチャイズ加盟者にとっては、知名度と安定的な顧客基盤を活用できる点が大きなメリットです。
スーパーホテル
「Natural, Organic, Smart」をブランドコンセプトとして掲げ、快眠や健康を意識したサービスを提供しているのがスーパーホテルです。無料の焼きたてパン朝食や天然温泉を備えた店舗も多く、宿泊客に付加価値を提供できるのが特徴です。
環境への配慮にも積極的で、エコな取り組みを前面に出したブランディングが評価されています。フランチャイズ展開においては、リピーターを呼び込むためのサービス品質が武器となり、安定経営につなげやすいのが魅力です。
ドーミーイン
ドーミーインは「我が家のようなくつろぎ」を基本コンセプトに、温泉感覚の大浴場やサウナを備えた施設展開に加え、無料の夜鳴きそばサービスなどで独自の地位を築いています。出張や観光の宿泊者にとって、快適な睡眠やリラックスできる環境は大きな魅力であり、他のビジネスホテルとの差別化ポイントとなっています。
フランチャイズ加盟者にとっては「温泉付きビジネスホテル」という強いブランドコンセプトを活用でき、集客面での安定性と顧客満足度の両立がしやすい点も特徴です。
フランチャイズ方式でホテルを開業するまでの流れ
フランチャイズ方式でホテルを始めるには、契約前の情報収集から物件確保、開業準備まで段階的な流れがあります。
- 情報収集と比較検討
- 事業計画の策定と資金調達
- フランチャイズ契約の締結
- 物件の確保と開業準備
- オープン
順に見ていきましょう。
STEP1:情報収集と比較検討
まずは複数のフランチャイズ本部から資料を取り寄せ、説明会に参加します。それぞれのブランドが持つコンセプトやターゲット層、加盟条件、サポート体制を比較することが重要です。自分が思い描くホテル像とどの程度一致するのかを見極め、候補を絞り込みます。
この段階での調査が不十分だと、後々ミスマッチが起こる原因となるため、時間をかけて十分に検討することが成功への第一歩です。
STEP2:事業計画の策定と資金調達
フランチャイズ先が決まったら、本部の担当者と相談しながら、立地調査や収支シミュレーションを実施し、現実的な事業計画を組み立てます。市場環境や需要予測を踏まえ、収益と支出のバランスを具体的に見える化することが大切です。
その上で自己資金を整理し、事業計画書を活用して金融機関に融資の相談をします。計画性のある資金調達が、開業後の安定経営を支える土台となるでしょう。
STEP3:フランチャイズ契約の締結
事業計画と資金調達の目処が立ったら、いよいよ本部と契約を交わします。ロイヤリティや契約期間、禁止事項などを細かく確認し、納得した上で正式に契約を締結することが重要です。
STEP4:物件の確保と開業準備
契約後はホテルの建設、または既存物件の改修に進みます。同時にスタッフの採用活動を行い、本部の研修プログラムを通じてオペレーションを習得します。開業準備をどれだけ丁寧に行うかが、その後のサービス品質に直結します。
STEP5:オープン
準備が整ったらいよいよ開業です。本部から提供される販促ツールや広告施策を活用しながら、集客活動を展開します。ブランドの認知力を活かし、安定した運営スタートを切ることが可能です。
ホテル運営方式の選び方|フランチャイズが向いているのは?
ホテル経営の方式にはそれぞれ向き・不向きがあります。状況や目的に合わせて、フランチャイズを含む運営スタイルを見極めることが大切です。
- フランチャイズがおすすめのケース
- 他の運営方式が向いているケース
順に解説します。
フランチャイズがおすすめのケース
フランチャイズ方式は、初めてホテル経営に挑戦する人や、リスクをできるだけ抑えたい人に向いています。経営ノウハウが不足している場合でも、本部が用意するマニュアルや研修を活用することで、運営の基礎を早期に習得できます。
集客面においても、知名度のあるブランド名を活用できるため、開業初期から安定した宿泊需要を確保しやすい点が大きな強みです。
また、独自にブランド戦略や予約システムを整備する必要がなく、その分の時間とコストを運営に集中させることができます。特にスピード感を重視して早期に事業を軌道に乗せたい場合に有効であり、未経験者でも参入しやすいのが特徴です。
加えて、金融機関からの融資を受けやすい傾向もあるため、資金調達面でも安心材料となるでしょう。
他の運営方式が向いているケース
一方で、フランチャイズ以外の方式が適しているケースもあります。たとえば、自分独自のコンセプトやブランドを強く打ち出したい場合には「所有直営方式」が有効です。自由度が高いため、デザインやサービスに独自色を反映しやすく、他のホテルとの差別化を図ることができます。
また、経営そのものよりも不動産投資として安定した収益を重視するなら「リース方式」が向いているでしょう。不動産自体を所有しつつ運営はリース先に任せ、家賃収入を得るスタイルであり、経営リスクを避けたい人に適しています。
さらに、運営を専門家に委託して安定性を求めたい場合には「MC方式」が選択肢になります。専門会社のノウハウを活用できるため、経営経験が浅い人でも安心感を得られるのが魅力です。
目的やリスク許容度に応じて方式を選ぶことが、成功への近道です。ホテル経営全般の考え方や詳しい情報については、こちらの記事も参考にしてください。
【関連記事】ホテル経営の基礎知識!初心者が知っておくべきポイントを解説!
どの運営方式を選ぶべきか迷ったらプロに相談を
ホテル経営の方式は簡単に決められるものではなく、自己資金の規模、経営経験の有無、土地の条件、さらに将来的にどんなホテルを目指すかによって変わります。
フランチャイズのようにブランド力を借りて安定経営を狙う方法もあれば、直営方式で自由度を優先したり、リースやMC方式で運営を任せたりと選択肢は多様です。
初めての開業で、このような違いを自分だけで判断するのは容易ではありません。
そんなとき心強いのが、数多くのホテルや旅館の開業・運営を支援してきた専門家の存在です。リロホテルソリューションズは、集客から収支管理、運営サポートまで幅広いノウハウを提供し、経営者のビジョン実現を後押ししています。迷ったときは専門家に相談することが、成功への最短ルートといえるでしょう。
まとめ
ホテルのフランチャイズ方式は、ブランド力や運営ノウハウを活用できる点で、初めて経営に挑戦する人にとって大きな魅力があります。一方で、ロイヤリティの負担や自由度の制限といった注意点も存在します。所有直営方式やリース方式、MC方式との違いを理解し、自分の資金力や経験、目指すホテル像に合ったスタイルを選ぶことが成功への第一歩です。
もっとも、どの方式が自分に合うのかを見極めるのは容易ではありません。迷ったときは、数多くのホテル経営を支援してきたリロホテルソリューションズのような専門家に相談するのがおすすめです。自分に合った運営方式を選び、安定したホテル経営を実現しましょう。

【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。