ホテル開業・経営の鍵!深刻化する人手不足の原因と今すぐできる対策とは?

ホテル・旅館業界では、慢性的な人手不足が経営の大きな課題となっています
帝国データバンクの2024年の調査によると、ホテル・旅館業の正社員における正社員の人手不足率は71.1%に達しており、深刻な人材難が続いています。特に地方の宿泊施設では採用が極めて困難で、現場の負担は限界に達しつつあります。
今後、インバウンドや国内旅行の回復に伴って業務量は増加する一方、人手不足の解消は容易ではなく、既に通常の運営が困難になる施設も出始めています。
こうした厳しい労働環境の中で、ホテルを開業し、安定した経営を続けていくためには、人手不足への的確な対策が必須です。
ホテルを開業し順風満帆に経営し続けるためには、人手不足への対策が必須です。
本記事ではホテル業界が人手不足に陥る現状と問題点に加え、取り組むべき課題についてわかりやすく解説します。ホテルの開業や経営でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
ホテル・宿泊業界の人手不足の現状
ホテル・宿泊業界の人手不足の現状について、以下の2つの観点から解説します。
- 有効求人倍率と離職率の推移
- 現場が直面するリアルな声
1つずつ詳しく見ていきましょう。
有効求人倍率と離職率の推移
厚生労働省のデータによると、宿泊業・飲食サービス業の有効求人倍率は全産業平均と比較して高い水準を記録しています。
厚生労働省の資料「一般職業紹介状況(令和7年3月分および令和6年度分)について」によれば、2025年3月の有効求人倍率は1.26倍で、宿泊業と飲食サービス業では3.3%増と発表されています。
また離職率においても、厚生労働省の資料「-令和5年雇用動向調査結果の概況-」によれば、入職率32.6%に対し離職率26.6%と高水準です。
求人を出しても人が集まらず、入社してもすぐに離職する悪循環が続いています。
現場が直面するリアルな声
実際にホテルの現場においても、人手不足に対しリアルな声が上がっています。
上記の報道によると、とくに深刻な業界がホテル業で、実際にホテルの支配人も「募集をかけても連絡がこない」と頭を悩ませています。
なお取材先のホテルは32室ですが、従業員はわずか4人。そのため、以下のような問題が生じています。
・フロントの電話対応に1人残し、支配人を含む他3人は客室の清掃・人手不足で全室販売できず室数を制限して販売・露天風呂の管理に手が回らず閉鎖・食事は支配人1人で準備・部屋の布団敷きはセルフサービス |
取材先のホテルのように、コロナの影響で人員を削減したものの、観光需要が回復した現在でも人手が戻ってこない、という状況が続いているケースも少なくないのです。
ホテルの人手不足が引き起こす問題点
ホテルの人手不足が引き起こす問題点は、おもに以下の3つです。
- サービス品質の低下と顧客満足度の悪化
- 従業員の疲弊と離職の悪循環
- 機会損失による収益への影響
では、1つずつ詳しく解説します。
サービス品質の低下と顧客満足度の悪化
ホテルの人手不足はサービス品質の低下と顧客満足度の悪化を招き、クレームの増加やリピーターの減少を引き起こします。
人手不足が原因で生じる問題点は、おもに以下のとおりです。
問題点 | 原因・内容 |
フロント対応 | ・1人あたりの業務量が増加し問い合わせに対応しきれない・宿泊予約の電話を取れず、販売機会の損失につながる |
客室清掃 | ・時間内に客室清掃が終わらない・担当室数が増え、業務過多になり清掃品質を保てない |
レストランサービス | ・料理の提供時間や配膳の遅延・きめ細やかなサービスが行き届かない |
クレームが増加するとホテルの評判が落ちるため、リピーターの確保も難しくなります。
従業員の疲弊と離職の悪循環
ホテルの人手不足は従業員の疲弊を招き、離職につながる悪循環を生み出します。
従業員1人当たりの業務量が増えるため、時間外労働が常態化し、十分な休息や休暇を取得できません。
さらに少ない人数で多くの業務をこなすため、精神的なプレッシャーもかかります。肉体的にも精神的にも疲弊するため、離職につながりやすくなります。
また離職者が出ると、残った従業員への負担がさらに増すのも問題です。従業員のモチベーションも下がるため、さらなる離職を引き起こします。
機会損失による収益への影響
ホテルの人手不足は、さまざまな機会損失にも影響します。
人員不足で客室清掃が間に合わないため、空室があっても販売できない状況が生じます。場合によっては、室数を制限して販売するケースもあるでしょう。
さらにレストランや宴会場においても、人材不足は営業規模の縮小や営業時間の短縮を招きます。
席数や提供できるメニューが制限されることで、本来得られたであろう飲食による収益が減少。宴会などの売上が大きい予約も、断らざるを得ないケースが生じます。
ホテル業界で人手不足が深刻化する原因と背景
ホテル業界で人手不足が深刻化する原因と背景を、以下の3つの観点から解説します。
- 労働環境・条件面の課題
- 業務内容の厳しさと業界のイメージ
- 採用市場の変化と構造的な問題
それぞれ詳しく見ていきましょう。
労働環境・条件面の課題
ホテル業界における人手不足の根底には、労働環境や条件面における課題があります。
厚生労働省が発表した「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、宿泊業と飲食サービス業の年収は最高値で男性が約324万円、女性が約229万円と低水準です。
また長時間労働や24時間体制による不規則なシフト体制も、従業員の負担を増大させています。
基本的に顧客に合わせた勤務体制のため、稼働率次第ではお盆や年末年始にも出勤しなければなりません。
業務内容の厳しさと業界のイメージ
人手不足が深刻化する背景には、業務内容の厳しさと業界に根付いたネガティブなイメージも影響しています。
ホテル業は高いレベルのホスピタリティを維持しなければならず、プレッシャーを感じやすい職種です。
また客室清掃などの体力を要する業務も存在します。加えてフロントとレストランなど、マルチタスクが求められることも少なくありません。
さらに変則シフトといった、ネガティブなイメージがあるのも課題です。これらの要因が複合的に絡むことで、人材確保を困難にしています。
採用市場の変化と構造的な問題
採用市場の変化と構造的な問題も人手不足の原因です。少子高齢化で働き手世代の人口が減少しているため、応募者が集まりにくいという根本的な問題があります。
また若者が求める勤務体系と、ホテルの勤務体系が合わないのも課題です。若者が希望するワークライフバランスは、24時間体制のシフト勤務が基本のホテル業とは合いません。
さらにITや物流、介護などの他業種との人材獲得競争も激化しています。とくに地方においては都市部への人口流出も相まって、働き手不足がより深刻化しています。
人手不足解消に向けてホテルが取り組むべき対策
人材不足解消に向けてホテルが取り組むべき対策は、おもに以下の4つです。
- 魅力ある職場づくり:労働環境・条件の改善
- 攻めの採用戦略:人材獲得力の強化
- テクノロジー活用:DXによる業務効率化と省人化
- 人材育成と定着支援:従業員エンゲージメント向上
それぞれ詳しく解説します。
魅力ある職場づくり:労働環境・条件の改善
人手不足を解消するためには、労働環境や条件を改善し、魅力ある職場づくりを意識することが重要です。改善のポイントとなるのは、おもに以下4つです。
改善のポイント | 内容 |
賃金や評価制度の改定 | ・明確な昇給、昇格制度を示す・業務や貢献度に応じてインセンティブ制度を導入・他産業と比較し競争力のある賃金を設定 |
働きやすい環境の整備 | ・従業員のライフスタイルに合わせたシフト制度(希望休や固定シフト制など)・勤怠管理の徹底や業務分担の見直し・連休取得の奨励やアニバーサリー休暇の導入 |
福利厚生の充実 | ・寮および社宅の提供・家賃や食事の補助・資格取得支援制度・託児所の設置や提携 |
従業員満足度(ES)の向上 | ・ES調査の実施と改善活動・定期的な面談実施・ハラスメント防止の徹底 |
人材不足を解消するためには、「休みが少なく低賃金」といった業界に根付いたネガティブなイメージを変えなければなりません。
従業員一人ひとりが働きがいを感じられる環境を整備することが、人材の確保と定着につながります。
攻めの採用戦略:人材獲得力の強化
ホテル業界の人手不足解消に向けては、多様な人材の確保と、効率的かつ魅力的な採用活動が欠かせません。以下にポイントをまとめます。
人材獲得のポイント | 内容 |
多様な人材採用 | ・若年層:柔軟な働き方やキャリアアップをアピール・主婦(主夫)層:短時間勤務や扶養内勤務の導入・シニア層:体力的な負担が少ない職種への配置・外国人:日本語能力や専門スキル人材を積極的に採用 |
採用チャネルの拡大 | ・求人サイト:幅広い層にリーチ・ハローワーク:地域に根ざした求職者向け・学校:ホテルや観光系の学校と連携・人材紹介会社:スキル職や管理職採用に・リファラル採用:インセンティブ付与・SNS:潜在的な求職者に有効 |
魅力的な情報発信 | ・採用サイト:入社後のイメージを持てるように・メリット提示:待遇(給与や福利厚生)やキャリアアップの機会などを具体的に紹介 |
採用プロセスの見直し | ・選考期間の短縮・オンライン面接・応募書類の簡略化 |
テクノロジー活用:DXによる業務効率化と省人化
省人化や効率化のためのテクノロジーの導入も、重要な戦略の1つです。ホテルのセクション毎のテクノロジー対策は、以下のとおりです。
ホテルの部門 | テクノロジー対策 |
宿泊部門 | ・PMS(宿泊管理システム)の高度化・AI導入(レベニューマネジメントに活用)・自動チェックイン/チェックアウト機・スマートロック |
客室部門 | ・客室タブレット・清掃管理システム(清掃の進捗状況やアサインを効率化)・清掃ロボット |
料飲部門 | ・セルフオーダーシステム・配膳ロボット・予約管理システム(オンライン予約の一元管理や自動受付) |
バックオフィス部門 | ・勤怠管理システム・経費精算システム・RPA(定型的な事務作業を自動化) |
その他情報共有 | ・ビジネスチャットツール・情報共有ツール(ナレッジベース) |
テクノロジーを活用すれば、生産性向上と従業員の負担軽減、顧客満足度の向上につながります。
ただし導入にあたっては初期投資や運用コスト、従業員への教育などを考慮する必要があります。
人材育成と定着支援:従業員エンゲージメント向上
人材の育成と定着には、魅力的な労働環境の整備と並行して従業員の成長とエンゲージメントを高める取り組みが不可欠です。以下にポイントをまとめます。
取り組むべきこと | 内容 |
教育や研修制度の充実 | ・新入社員研修の強化・OJTプログラムの体系化・キャリア段階に応じた階層別研修・スキルアップ研修・資格取得支援 |
キャリア開発支援 | ・目標設定制度・キャリア面談の実施・多様なキャリアプランの提示(コンシェルジュ、ソムリエなど) |
コミュニケーションとエンゲージメントの強化 | ・上司との1on1ミーティング・メンター制度の導入(新入社員や異動者に対して先輩社員がメンターとしてサポート)・従業員の意見を反映する仕組みづくり(目安箱やアンケートの設置) |
従業員を称賛する文化の醸成 | ・社内表彰制度・サンクスカード(従業員同士や上司から感謝を気持ちを伝える)・社内イベント、チームビルディング(懇親会、スポーツイベント、ボランティア活動) |
専門家の力を借りて人手不足を解消する
ホテルの人手不足を改善するために、専門家のアドバイスを受けるのも有効な方法です。なぜ専門家の力を借りるのが効果的なのか、以下の2つの観点から解説します。
- プロに相談するメリットとは?
- リロホテルソリューションズのご紹介
1つずつ詳しく見ていきましょう。
プロに相談するメリットとは?
プロに相談するメリットは、おもに以下の4つです。
・最新のホテル業界の動向を把握できる・客観的な視点でアドバイスを受けられる・リソースを割かずに成果を出せる・成功事例をもとに無駄なく改善できる |
ホテル専門家は業界の動向や、人材に関する専門知識を有しています。自社だけでは把握しきれない情報をもとに、的確なアドバイスを得られるのが魅力です。
次に、客観的な視点で課題を洗い出せるのもポイントです。専門家のアドバイスで従業員の潜在的な不満などが明らかになるケースも少なくありません。
また人手不足で社内リソースが足りなくても、専門家に頼ればリソースを割かずに成果を出せます。
さらに他ホテルでの成功事例を数多く有しているため、試行錯誤の時間を減らし早期に成果が出やすいのも特徴です。
リロホテルソリューションズのご紹介
リロホテルソリューションズは、ホテルが抱えるさまざまな課題を解決へと導く、ホテル運営のプロフェッショナル集団です。
「90日で黒字化」をスローガンに、ターンアラウンド(事業再生)を通じて全国のリゾート地や過疎地の宿泊施設を運営。宿泊業のあらゆる課題を解決へと導きます。
おもな支援内容は、以下のとおりです。
・売上改善支援・利益改善支援・業務効率化支援・施設運営全般の支援 |
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まとめ
ホテル業界は労働環境や条件面の課題、採用市場の変化などが複合的に絡み合い、慢性的な人手不足に陥っています。
人手不足を解消するためには、テクノロジーの活用や採用プロセスなどを見直し、人材が定着しやすい環境を作ることが重要です。
自社だけで改善できない場合は、専門家のアドバイスを受けるのも効果的です。豊富な知見と成功事例をもとに、客観的な視点でホテルの課題を洗い出し改善へと導きます。
ホテルの新規開業や運営でお困りの方は、ぜひリロホテルソリューションズまでお気軽にご相談ください。
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