OTAの手数料を徹底比較!ホテル経営者が知るべきコスト削減と集客戦略とは

ホテル経営において、OTA(オンライン旅行代理店)の活用は集客の柱ですが、見落とせないのが「手数料」です。各OTAによって料率やサービス内容が異なり、選び方次第で利益率に大きな差が生まれます。
この記事では、主要OTAの手数料を一覧で比較しながら、それぞれの特徴や選定時の注意点を解説します。手数料を抑えつつ集客効果を最大化したい方に向けて、コストパフォーマンスの高いOTA活用法やプロによるサポートの選択肢も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
OTA選びがホテル経営の成功を左右する理由
OTAの選び方一つで、ホテルの集客力や収益性は大きく変わります。このセクションでは、OTAの基本や経営への影響、活用による具体的なメリットについて解説します。
OTAとは?
OTA(Online Travel Agent)は、宿泊施設や航空券などの旅行商品をインターネット上で販売・予約できるオンライン旅行代理店です。今や旅行の予約手段は、電話や窓口からオンラインへと大きくシフトしており、国内外を問わず多くの宿泊施設がOTAを通じて集客を行っています。
日本旅館協会が公表した「令和6年度 営業状況等統計調査」によると、国内のOTA経由の宿泊者数は、全体の44.9%と約半数に近い数字です。これは、OTAが旅行者にとって主要な予約手段となっていることを示しています。
また、OTAの利用が広がった背景には「GoToトラベルキャンペーン」や「全国旅行支援」などの国の施策が大きく関与しています。これらのキャンペーンでは、OTAが予約窓口として活用され、結果的にその利便性と普及率が加速しました。
引用:日本旅館教会|【結果公表!】令和6年度営業状況等統計調査
OTAを活用する3つのメリット
OTAの導入は、単に予約の窓口を増やすだけではありません。認知の拡大から業務効率化まで、経営にとって多くのプラス要素があります。
具体的なメリットは以下の3つです。
- 認知度の向上
- 集客機能の強化
- 業務の効率化・省力化
順に説明します。
1.認知度の向上
多くのユーザーを抱えるOTAに宿泊施設を掲載すれば、知名度の低い新規施設でも広い範囲の潜在顧客にリーチできます。検索エンジンからの流入や地域・テーマ別の特集ページによって、施設情報が目に触れる機会が格段に増加するでしょう。
前述の統計にもあるとおり、宿泊者の約半数がOTAを利用しており、OTAは多くのホテルにとって集客の中心的なチャネルとなっています。
認知度の向上は予約数に直結するため、マーケティングの一環としても有効です。
2.集客機能の強化
OTAには、各施設が活用できる集客機能が多数用意されています。たとえば、特集ページへの無料掲載や割引セール、キャンペーン参加などが代表的です。追加コストなしで販促活動を展開できるため、広告費をかけずに露出を増やすチャンスが広がります。
さらに、多言語対応や海外ユーザー向けの販売機能を備えているOTAも多く、国内外の新規顧客の獲得につながります。
販売チャネルを多様化するうえでも、OTAは強力な集客ツールといえるでしょう。
3.業務の効率化・省力化
OTAの活用により、予約受付からキャンセル処理までを24時間365日自動化でき、フロント業務の負担の大幅な削減が可能です。さらに、事前決済対応のOTAを選べば、チェックイン・アウト時の精算対応も簡素化され、現場の省力化が進みます。
また、予約情報が自動で台帳に反映されるシステムを使えば、人的ミスの防止にもつながるでしょう。
特に、限られた人員で運営する中小規模のホテルや旅館にとって、OTAは業務効率化の面でも大きなメリットを持っています。
OTA手数料がホテル経営に与える影響
OTAの手数料は、予約1件あたり10〜20%が一般的です。この費用は固定費ではなく「変動費」であるため、稼働率が上がるほど負担も増えます。売上が伸びても利益率が圧迫されるケースも多く、適切な手数料の把握と管理が不可欠です。
一方で、手数料を支払うだけの見返り(集客力・販促力)があるかも重要な判断基準になります。
コストに見合うパフォーマンスが得られているかを定期的に見直せば、無駄な出費を抑えつつ効率的な経営につながるでしょう。
【国内主要OTA】手数料と特徴を徹底比較
国内OTA各社は、基本手数料に加えて「事前決済割増」や「ポイント負担」などで実質コストが変動します。主な国内のOTAである楽天トラベル・じゃらんnet・一休.com・Relux・るるぶトラベル・Yahoo!トラベルについて、手数料構造を比較した一覧は下表の通りです。
エージェント名 | 手数料 | 事前決済割増 | その他手数料 | 特徴 |
楽天トラベル | 1名利用:基本手数料7%+ポイント負担1% 2名以上:基本手数料8.25%+ポイント負担1% | +2 % | インバウンド予約10% | 楽天経済圏との連携強し集客力高い |
じゃらんnet | 1名利用:6 %+ポイント負担2% 2名以上:8 %+ポイント負担2% | +2 % | インバウンド予約12% | 認知度・販促機能に強み |
一休.com | 10 % | +3.5 % | サイトコントローラー接続費用:月額5,250円(税込)または予約ダウンロードシステム利用料+0.5%上乗せ | 高級宿特化ブランディング向き |
Relux | 12% | +2 % | サイトコントローラー接続費用:月額5,250円(税込) | 厳選施設向け上質な顧客層 |
るるぶトラベル | 1名利用:8 % 2名以上:10 % | +2 % | インバウンド予約11~14% | 地方・自治体連携が強み |
Yahoo!トラベル | 10 % | +3.5 % | なし | PayPay連動中高年層にリーチ |
参照:観光経済新聞2025年1月6日記事|オンライントラベル予約実態調査
※手数料は契約条件や地域により変動する場合があります。
最新の正確な手数料に関しては、各OTAへ直接確認することをおすすめします。
楽天トラベル
楽天トラベルの基本手数料は、1名利用が7%、2名以上が8.25%です。ここにポイント負担1%および事前決済割増+2%が加算され、最大で1名利用時には約10%、2名以上では約11.25%となります。
一方、楽天市場や楽天カードなどの経済圏との連携による集客力は抜群で、多彩なキャンペーンや楽天ポイント付与が利用可能です。特に、繁忙期や大型キャンペーン時には露出が非常に高くなるため、新規・リピーター層ともに幅広く対応できます。
じゃらんnet
じゃらんnetでは、基本6%(1名)、8%(2名以上)に、ポイント負担+2%と事前決済割増+2%が加わります。最大で1名利用時に約10%、2名以上の場合約12%、インバウンド案件ではさらに上昇する場合もあります。
じゃらんは紙媒体との親和性が高く、ファミリー層・若年層に強い認知力がある点が特徴です。定期的に実施されるセールや特集枠は無料で参加でき、効果的に集客が図れます。
一休.com
一休.comの基本手数料は10%。事前決済を導入すると+3.5%が上乗せされ、合計13.5%まで上がります。そのほか、サイトコントローラー連携費用(月額5,250円または送客手数料+0.5%)が別途発生します。
高級ホテルや上質な旅館に特化した顧客層を抱えており、ブランディングや高単価戦略との相性も悪くありません。価格志向ではなく、サービス・体験重視型の集客を狙う施設におすすめです。
Relux
Reluxは選りすぐりの上質宿泊施設を対象とし、基本手数料12%に事前決済+2%を加えると14 %となります。サイトコントローラー接続費(月額約5,500円)も必要です。
会員限定価格や厳格な施設審査によって、ブランドイメージや価格安売りを回避した高品質な集客が可能です。平均単価が高い施設ほど、収益性において有利に働く傾向にあります。
るるぶトラベル
るるぶトラベルはJTBグループのOTAで、基本手数料は8%(1名)・10%(2名以上)。事前決済割増の場合は+2%で、実質10〜12%台になります。
JTBパッケージや自治体観光キャンペーンと連携しやすい点が魅力です。地方や自治体と連携した販促に強く、地域に根ざしたプロモーションを検討している宿泊施設には有効なチャネルとなります。
Yahoo!トラベル
Yahoo!トラベルは基本手数料10%に事前決済+3.5%が加わる構成です。
一休.comとの連動やPayPay利用者向けのポイント販促に対応しており、ネットに不慣れな中高年層にもリーチ可能です。ヤフーIDユーザーへのリーチや、独自クーポン設定などにより、特定層へのマーケティング戦略として活用できます。
【海外主要OTA】手数料と特徴を徹底比較
海外OTAは地域・契約条件により手数料の幅が大きく変動します。Agoda、Booking.com、Expediaの3社について、基本手数料率に加えて事前決済割増やその他の手数料などを比較した内容は下表の通りです。
エージェント名 | 基本手数料 | 事前決済割増 | その他手数料等 | 特徴 |
Agoda | 基本12%、地域・契約条件により異なる場合あり | なし | なし | ・東南アジアや東アジアからの集客に効果的・39言語に対応 |
Booking.com | 基本12%で国や物件のタイプにより異なる場合あり | 契約内容により+2.3%が別途発生 | 露出を強化する追加契約により+3%~+5% | ・OTAの中で世界最大規模の集客力を持つ・45言語に対応 |
Expedia | 基本12%~18% | +3% | なし | ・多ブランド展開、特に欧州に強い集客力あり・41カ国でサイトを展開 |
参照:観光経済新聞2025年1月6日記事|オンライントラベル予約実態調査
※手数料は契約条件や地域により変動する場合があります。
特に海外OTAについては、契約条件により手数料が大きく変動するためあくまでも参考値として認識ください。
Agoda
Agodaの宿泊手数料は通常12%ですが、物件の所在地や物件種別によって変動します。
Agoda Growth Express(AGX)プログラムにより、可視性を高めるために手数料を上げる選択も可能です。アジア市場に強く、特に東南アジアからの集客に優れますが、総コストラインの把握が重要です。
Booking.com
Booking.comの手数料は12%が一般的で、ロケーションや宿泊施設の交渉状況により異なります。事前決済を選ぶと+2.3%の割増となる場合が多く、加えてクレジットカード処理手数料も請求されます。
世界最大級のOTAで、多言語対応・レビュー数の拡充による集客力が魅力です。
Expedia
Expediaの手数料はホテルチェーンか独立施設かなどにより異なりますが、おおむね12~18%が一般的です。掲載順位向上ツールを使用すると実質手数料が大幅に上がります。事前決済では+3%が追加されますが、特定のブランド連携で別途費用は発生しません。
ExpediaGroupにはHotels.comやVrboなど複数ブランドが含まれ、これらを横断的に活用できる点が強みです。特にグローバル集客を狙う施設にとって、効果的なチャネルとなります。
OTA手数料を抑えるためのポイントと注意点
OTAを使った集客は便利ですが、手数料が利益を圧迫する要因にもなります。手数料を抑えつつ効果的にOTAを活用するための注意点と戦略を紹介します。
- 手数料だけで選ぶと失敗する?コストとパフォーマンスのバランス
- 複数OTAの併用・切替時の注意点
- 直接予約の強化とOTA活用のバランス
順に見ていきましょう。
手数料だけで選ぶと失敗する?コストとパフォーマンスのバランス
OTAを選定する際、単純に「手数料が安いから」という理由だけで選ぶのは危険です。なぜなら、露出を強化するためのオプションや広告メニュー、ポイント還元制度など、追加で発生する費用が結果として実質手数料を引き上げるからです。
たとえば、Booking.comの「プリファードプラス」やExpediaの「検索順位向上ツール」などは集客効果も期待できますが、その分手数料が数%上乗せされます。
また、各OTAにはそれぞれ異なるユーザー層が存在します。自社のターゲット顧客層とOTAの主な利用者層が合致しているかの見極めが、費用対効果を最大化するカギです。
さらに、OTAが実施するキャンペーンや地域連動の特集、会員向けプランとの連携活用も重要な比較ポイントになります。
費用だけでなく、総合的な「投資対効果」を見ながら、自社にとって最適なOTAを選びましょう。
複数OTAの併用・切替時の注意点
複数のOTAの併用は、販売チャネルを広げる意味で有効ですが、同時にいくつかのリスクも伴います。
まず、予約管理の手間が増え、対応ミスによるダブルブッキングの危険性が高まります。特に、手動で在庫調整をしている施設では注意が必要です。サイトコントローラーなどを使って一元管理をする仕組みの導入が欠かせません。
また、新たにOTAを追加する際や、既存OTAからの切替を検討する場合には、単に手数料や条件だけでなく、そのOTAが抱える顧客層との相性も確認する必要があります。たとえば、インバウンドに強いOTAを導入したが、実際には海外からの流入が少ない地域では期待通りの効果は得られません。
OTAの選定は、戦略的なチャネル設計の一部として、慎重に行いましょう。
直接予約の強化とOTA活用のバランス
OTAは強力な集客ツールですが、手数料の負担を考えると、直接予約の比率を高める取り組みも並行して行うべきです。直接予約は手数料がかからないため、1件あたりの利益率が高くなります。長期的な経営安定化のためにも、自社サイトからの予約数を増やす工夫が重要です。
具体的には、自社サイトに使いやすい予約システムを導入したり、公式サイト限定の特典や価格保証を設けたりして、OTAとの差別化を図れます。また、メールマガジンやSNS、リピーターへの割引クーポン発行など、CRM施策と組み合わせることで、直接予約の促進につながります。
OTAは「新規顧客の入口」として活用し、リピーターやファン層を自社チャネルに誘導する流れをつくることが、理想的なバランス戦略といえるでしょう。
OTA戦略の見直しは専門家と進めよう
OTAの手数料や各社の特徴の理解および比較検討は、ホテル経営における第一歩にすぎません。収益を最大化するためには、手数料だけでなく、人件費・運用コスト・広告費など経営全体のコスト構造を見直す視点が欠かせません。
しかし、こうした多面的な分析と施策の立案には、専門的な知見が求められます。
リロホテルソリューションズでは、ホテル・旅館の経営改善に特化したコンサルティングを提供しています。OTA戦略の見直しにとどまらず、コスト削減、収益改善、集客支援までをワンストップでサポートできるのが強みです。
特に、自社に最適なOTA活用と直接予約の強化施策をバランスよく提案できるため、現場の負担を抑えながら成果を出せるでしょう。
「OTAに頼りすぎて収益が残らない…」とお悩みの方は、まずはご相談ください。
まとめ
OTAはホテルの集客に欠かせない存在ですが、手数料や追加コストが利益を圧迫する要因にもなります。各OTAの手数料体系や特徴を正しく理解し、自社に合った戦略的な選定が重要です。
さらに、直接予約とのバランスをとりながら、コスト全体を見直せば収益性は大きく向上します。複数OTAの併用や切替時の注意点も踏まえ、専門家の力を借りながら最適なOTA活用を進めましょう。
経営改善の相談はリロホテルソリューションズへご相談ください。

【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。