ホテルの経費内訳を徹底解説!コスト構造の基本と経営改善のヒントを紹介
ホテル運営の経費は、人件費や光熱費、OTA手数料、リネン・消耗品費、食材費など多岐にわたります。支配人や経営担当者にとって、経費の全体像をつかみ、どこを優先的に見直すべきか判断するのは簡単ではありません。経営改善の第一歩は、数字で経費構造を理解し、根拠を持ってコスト管理を行うことです。
この記事では、ホテルの主な経費項目や割合の目安、削減の考え方を解説し、利益率を高めるための実践的なヒントを紹介します。
ホテル運営にかかる経費の全体像
ホテル経営を安定させるには、経費の全体構造を正しく把握することが重要です。固定費と変動費のバランス、そして各費用の割合を理解すれば、収益改善の方向性が見えてきます。
- 経費は「固定費」と「変動費」の2種類
- ホテル経費の内訳と目安
それぞれ順を追って解説します。
経費は「固定費」と「変動費」の2種類
ホテルの経費は、大きく「固定費」と「変動費」に分けて考えることが基本です。
固定費とは、宿泊客数や売上にかかわらず発生する費用のこと。代表的なものに、地代家賃・正社員の人件費・リース料・減価償却費などがあります。これらは毎月一定額がかかるため、稼働率が低下しても負担が変わらないのが特徴です。
一方、変動費は売上に比例して増減する費用で、消耗品費・リネン費・食材費などが該当します。宿泊客が増えるほどコストも上がるため、稼働率や客単価と連動して変動します。
この2つを区別する目的は、どの費用が経営に大きな影響を与えるかを把握するためです。固定費が高いほど、稼働率の低下時に赤字リスクが増します。そのため、固定費の圧縮や変動費化を進めることが、経営の安定化と利益率向上のカギとなります。
ホテル経費の内訳と目安
ホテル運営における主な経費は、以下のように「人件費」「水道光熱費」「販売促進費」「リネン・消耗品費」「施設関連費」などに大別できます。それぞれの費用構造と、売上に対する一般的な割合の目安を整理しました。
| 経費項目 | 主な勘定科目 | 内容の例 | 売上に占める目安の割合 |
| 人件費 | 給与手当、賞与、福利厚生費、社会保険料 | フロント・調理・経理総務スタッフなどの人件費全般 | 約30〜40% |
| 水道光熱費 | 電気代、ガス代、水道代 | 空調・給湯・照明などのエネルギー費用 | 約5〜8% |
| 販売促進費(OTA手数料・広告宣伝費) | OTA手数料、Web広告費、印刷物費用 | 予約サイト利用料や広告費など | 約8〜15% |
| リネン・消耗品費 | 洗濯費、清掃用品費、アメニティ費 | シーツ、タオル、アメニティ、掃除用品など | 約3〜5% |
| 施設関係費 | 修繕費、設備保守費、減価償却費、保険料 | 建物・設備の維持管理や更新に関わる費用 | 約10〜15% |
| 食材費(宿泊+レストラン・宴会場併設の場合) | 食材仕入れ費、飲料仕入れ費 | 朝食・ディナーなどの提供原価 | 約20% |
ホテルの規模や業態(リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル等)によって比率は異なりますが、一般的に人件費の割合が最も高くなります。また、OTA手数料や光熱費などは市場環境や契約条件で変動しやすいため、定期的な見直しが必要です。
こうした内訳を明確に把握しておくことで、どの費用が固定費・変動費に該当するのかを整理しやすくなり、利益改善のための優先順位を立てやすくなります。
コスト構造から考える経費削減の基本
ホテルの経費を単純に削るだけでは、サービス品質を損なう恐れがあります。固定費・変動費の構造を理解し、顧客満足度や収益指標と照らし合わせた改善が、持続的な経営の鍵となります。
- ホテル経営にコスト管理が重要な理由
- 顧客満足度に直結する経費の見極め方
- 経営指標のバランスにも注目する
次に詳しく見ていきましょう。
ホテル経営にコスト管理が重要な理由
近年、宿泊業界では競争が激化し、顧客ニーズも多様化しています。加えて、人件費や光熱費、仕入れ価格の上昇など、外部環境の変化が経営を直撃しています。こうした状況の中で利益を確保するには、単に売上を伸ばすだけでなく、コスト構造の最適化が欠かせません。
ホテル経営では、固定費の比率が高く、稼働率の変動に左右されやすい点が特徴です。そのため、安定経営を実現するには、支出を細分化し「どの費用が利益に直結しているか」を把握する必要があります。
コスト管理を徹底し、無駄な支出を抑える一方で、必要な投資には十分な資金を配分できる体制を整えることが、長期的な競争力の維持につながります。
顧客満足度に直結する経費の見極め方
経費削減を進める際に注意すべきなのは、「削ってはいけない費用」を見誤らないことです。たとえば、食事の質や客室の清潔さ、アメニティの品質などは、顧客満足度を左右する重要な要素です。これらを過度に削減すると、リピーター離れやクチコミ評価の低下を招き、結果として売上減少につながる可能性があります。
大切なのは、自社のコンセプトやターゲット層に応じて判断基準を持つことです。高級志向の宿なら「付加価値」を重視し、ビジネスホテルなら「快適性と効率性」のバランスを考えるなど、求められる体験価値に沿った経費配分を心がけることが重要です。
経営指標のバランスにも注目する
経費の見直しを効果的に進めるには、感覚に頼らず、数値に基づいて経営判断を行うことが欠かせません。ホテル経営で特に重要なのが、ADR(平均客室単価)、RevPAR(販売可能客室1室あたり収益)、稼働率の3つです。これらの指標をバランスよく分析すれば、売上構造とコスト構造の両面から改善ポイントを見つけられます。
| 指標名 | 正式表記 | 内容 | 活用の目的 |
| ADR | Average Daily Rate | 1室あたりの平均販売価格客単価の向上を把握できる | 客単価を上げる戦略の効果測定に使用 |
| RevPAR | Revenue Per Available Room | ADR × 稼働率で算出販売可能客室1室あたりの収益 | 稼働率と単価の両方を踏まえた収益効率を把握 |
| 稼働率 | Occupancy Rate | 利用可能な客室数に対して実際に販売された割合 | 客室の稼働状況・販売力を評価する指標 |
これらを同時に確認することで、「単価を上げるべきか」「稼働率を高めるべきか」といった意思決定が明確になります。また、各経費項目の割合をこれらの指標と照らし合わせれば、費用対効果の高い改善策を立てやすくなります。
「ADR」や「RevPAR」「稼働率」など、ホテル経営において重要な指標については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
【関連記事】
・ホテルのADRとは?計算方法から収益を最大化する活用法まで徹底解説!
・RevPAR(レブパー)とは?ホテル経営の収益力を測る指標を徹底解説!
・ホテルの稼働率(OCC)とは?経営成功の鍵となる稼働率向上のポイントを解説!
ホテルの収益を改善する経費削減のポイント
経費削減は、単にコストを減らす取り組みではなく、ホテルの競争力を高めるための戦略でもあります。各費目の特性を踏まえ、品質を維持しながら利益率を向上させる6つのポイントをご紹介します。
- OTA手数料:自社予約の強化で利益率を上げる
- 人件費:IT化と業務効率化で生産性を最大化する
- 水道光熱費:契約見直しと省エネ設備で固定費を圧縮
- 消耗品・リネン費:提供方法の見直しで無駄をなくす
- 広告宣伝費:Webマーケティング活用で費用対効果を改善
- 食材費:ロス削減とメニュー構成の最適化
順に見ていきましょう。
OTA手数料:自社予約の強化で利益率を上げる
OTA(オンライン・トラベル・エージェント)は集客に欠かせない一方で、手数料が10〜20%前後かかるのが一般的です。販売経路をOTAに依存しすぎると、稼働率が上がっても利益率が下がるという状況に陥ることがあります。
そのため、OTAを活用しつつも、自社公式サイトからの予約比率を高めることが重要です。たとえば「ベストレート保証」(※)を設け、公式サイト経由が最もお得になるよう打ち出すほか、写真や口コミ掲載、キャンペーン情報の充実で魅力を高めましょう。これにより手数料分のコストを抑えつつ、顧客データを自社で蓄積できるというメリットも得られます。
※ホテルや旅館などの公式サイトが、他のどの予約サイトよりも安い料金であることを保証する制度
OTA各社の手数料など、より詳しい情報は下記の記事をご覧ください。
【関連記事】OTAの手数料を徹底比較!ホテル経営者が知るべきコスト削減と集客戦略とは
人件費:IT化と業務効率化で生産性を最大化する
ホテル経営で最も比率の高い経費が、人件費です。安易な給与カットでは従業員のモチベーション低下を招くため、生産性の向上によるコスト最適化が理想です。
具体的には、自動チェックイン機やセルフ決済端末を導入し、フロント業務を省人化する方法があります。また、PMS(ホテル管理システム)の導入で予約・清掃・会計などのデータを一元管理すれば、バックオフィス業務の効率化も可能です。
さらに、スタッフが複数の業務を担当できるようにスキルを広げ、繁忙期や閑散期に応じて柔軟に配置転換できる体制を整えることも、効率的に生産性を上げられるでしょう。
人材を「コスト」ではなく「資源」として捉え、働きやすい環境づくりを進めることが何より重要です。
ホテルの「人件費」や「人手不足」に関する情報は、下記の記事をチェックしてください。
【関連記事】
・ホテルの人件費の適正比率は?利益改善につながるコスト削減とDX戦略
・ホテル開業・経営の鍵!深刻化する人手不足の原因と今すぐできる対策とは?
水道光熱費:契約見直しと省エネ設備で固定費を圧縮
水道光熱費は、ホテルの固定費の中でも削減効果が出やすい項目です。まずは電力・ガス会社の契約プランを見直し、需要に応じた最適な料金体系に切り替えることが重要です。特に近年は電力自由化が進み、法人向けの割安プランも増えています。
また、照明のLED化や空調設備の高効率モデルへの更新、節水シャワーヘッドの導入など、省エネ設備への投資も長期的には有効です。初期費用はかかりますが、数年単位でみればコスト回収が可能であり、環境対応の観点からもプラスになります。こうした設備投資は、補助金制度を活用すれば負担を軽減できます。
消耗品・リネン費:提供方法の見直しで無駄をなくす
アメニティやリネンにかかる費用も、提供方法の工夫で大きく削減できます。近年はプラスチック資源循環促進法を背景に、客室設置型からフロント提供型へ切り替えるホテルが増えています。必要な分だけお客様に取ってもらう方式にすることで、廃棄ロスを減らしつつ環境配慮の姿勢もアピールできるでしょう。
また、連泊客向けに「清掃不要プラン」を導入するのも有効です。タオルやシーツの交換頻度を減らすことで、リネン費と清掃人件費の両方を抑えられます。
こうした取り組みは、エコ意識の高い宿泊客からも好印象を得やすく、コスト削減と顧客満足の両立を実現します。
広告宣伝費:Webマーケティング活用で費用対効果を改善
広告宣伝費は「投資」としての側面が強く、単純に削減するよりも費用対効果を高めることが重要です。
まず、Web広告やSNSを活用したデジタルマーケティングは、従来の紙媒体よりもターゲット精度が高く、効果測定も容易です。Google広告やInstagram、LINE公式アカウントを組み合わせることで、集客単価を抑えながら効率的な販促が可能になります。
さらに、ITツールの導入や設備更新を行う際には「IT導入補助金」や「事業再構築補助金」などの公的支援制度も活用できます。補助金を上手に使えば、初期投資の負担を軽減しながら、長期的な集客力強化につなげられるでしょう。
ホテルの開業や経営に関する「補助金の具体的な情報」を下記記事に掲載していますので、ぜひご覧ください。
【関連記事】【2025年最新】ホテル開業・経営で使える補助金とは?専門家が解説
食材費:ロス削減とメニュー構成の最適化
レストランや宴会場を併設するホテルでは、食材費も大きなコスト要因です。まず取り組むべきは、正確な需要予測です。宿泊予約データや曜日別の来店傾向を分析し、仕入れ量をコントロールしてロスを防ぎます。
また、メニュー構成を見直し、原価率の高い食材を使いすぎない工夫も有効です。たとえば、旬の食材を取り入れる、調理工程を簡略化するなど、小さな改善の積み重ねがコスト削減につながります。
さらに、仕入れ先の一元化や地域生産者との直接取引により、中間マージンを削減できるケースもあります。食の満足度を保ちながら、持続的な利益体質を築くことが重要です。
ホテル経費の見直しは、リロホテルソリューションズに相談を
リロホテルソリューションズでは、全国のホテルや旅館の経営課題に寄り添い、収益改善と経費最適化をワンストップで支援しています。単なるコスト削減ではなく、施設のブランド価値を高めながら利益率を向上させることが、私たちの目指す経営支援の形です。
稼働率・ADR・RevPARなどの指標分析を通じて、どの経費が利益に影響しているのかを可視化し、改善の優先順位を明確にします。また、自社予約率向上やOTA手数料削減、光熱費・人件費の最適化といった実務的なアプローチも得意としています。
「どこから手をつければいいかわからない」という段階でもご安心ください。現状分析から改善策の提案、実行支援まで一貫して伴走し、安定的で持続可能なホテル経営を実現します。
まとめ
ホテル経営を安定させるためには、まず経費の内訳を正しく把握し、数字に基づいた経営判断を行うことが欠かせません。人件費や光熱費、OTA手数料などの主要費目を整理し、どの部分が利益を圧迫しているのかを見極めることで、的確な改善策が見えてきます。
ただし、コスト削減は「削る」ことが目的ではなく、サービス品質を維持しながら収益を最大化することが重要です。そのためには、現場の状況や顧客満足度、経営指標を総合的に分析する必要があります。
リロホテルソリューションズでは、経費構造の見直しから販売戦略の立案、現場運営までをトータルでサポートしています。経費の見直しを通じて利益体質を強化し、持続的に選ばれるホテル経営を実現したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。



