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コラム

2025.09.17

ホテルの利益率とは?正しい計算方法と収益改善のポイントについて解説

ホテルの利益率とは?正しい計算方法と収益改善のポイントについて解説

ホテルを経営するうえで欠かせないのが「どのくらいの利益率を確保できているか」という視点です。実際に開業を検討している方や、すでに運営しているものの「今のやり方で十分なのか」と不安を感じている経営者も少なくありません。

この記事では、ホテルの利益率の基本から計算方法、平均的な水準、改善のための具体策までを体系的に解説します。利益率を理解することで、自社の立ち位置を客観的に把握でき、今後の収益戦略を立てる際の指針にもなります

これから開業を予定している方や、中小ホテルで収益改善を目指す運営担当者は、ぜひ最後までお読みください。

ホテルの利益率とは?

ホテルの利益率とは、売上高に対してどれだけの利益を残せたかを示す割合のことです。利益率=利益÷売上×100で算出でき、経営の健全性を判断する基本指標となります。

宿泊業は、建物維持や人件費など固定費の比率が高いため、客室稼働率や単価の変動が利益率に直結しやすい特徴があります。利益率の正しい把握は、資金繰りの安定化や再投資の可否を決めるうえでも欠かせません。

まずは基礎的な概念を理解し、自社の現状を見直す一歩にしましょう。

あわせて、ホテル経営全体の基礎を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】ホテル経営の基礎知識!初心者が知っておくべきポイントを解説!

利益率の種類と計算方法

ホテル経営の収益性を正しく把握するには、利益率の種類に関する理解が重要です。ここでは基本の計算方法と活用のポイントを紹介します。

まずは基本の「売上高営業利益率」を押さえよう

ホテル経営における収益力を測るうえで、基本的な指標として重視されるのが「売上高営業利益率」です。この指標は、営業活動によって得られた利益が売上高の何%にあたるのかを示します。

ホテルが本業でどれだけ稼ぐ力を持っているかを客観的に把握できます。計算式は以下の通りです。

売上高営業利益率(%)=営業利益 ÷ 売上高 × 100

営業利益とは、売上総利益から人件費や販売費、管理費などの営業活動にかかる費用を差し引いたものです。同じ売上高であっても、コスト管理が徹底されているホテルは営業利益が大きくなり、結果として利益率も高まります。

この指標を定期的にチェックすれば、価格設定の妥当性やコスト配分の適正さを把握でき、経営改善の指針として役立ちます。

「売上高総利益率」と「経常利益率」で経営状況を多角的に把握する

ホテル経営の収益力をより多角的に理解するためには、「売上高総利益率」と「経常利益率」両方を理解することが重要です。

  • 売上高総利益率(粗利率)

「売上総利益 ÷ 売上高 × 100」で求められ、仕入れや原価を差し引いた後の基本的な収益力を示します。飲食部門や客室清掃など、サービス提供に直結するコストの効率性を評価する際に有効です。

  • 経常利益率

「経常利益 ÷ 売上高 × 100」で計算され、利息や為替差益など本業以外の要素も含めた会社全体の収益力を表します。金融コストの負担や資金調達の健全性まで確認できるため、経営の全体像を把握するうえで欠かせません。

指標銘計算式特徴・活用ポイント
売上高営業利益率営業利益 ÷ 売上高 × 100本業の収益力を示す基本指標。コスト管理や価格設定の妥当性を判断でき、経営改善の目安となる。
売上高総利益率(粗利率)売上総利益 ÷ 売上高 × 100原価や仕入れを差し引いた収益力を把握。飲食部門や清掃などサービス提供に直結するコスト効率を評価する際に有効。
経常利益率経常利益 ÷ 売上高 × 100本業以外の収益・費用(利息や為替差益など)も含めた総合的な収益力を示す。資金調達や金融コストの健全性確認に役立つ。

これらの指標を単独で見るのではなく、営業・総利益・経常の3つを組み合わせることで、収益構造を多角的に把握でき、より的確な経営判断が可能になります。

ホテルの利益率の平均と目標水準

ホテルの利益率は、業界全体の平均値がわかれば、自社の立ち位置を確認できます。加えてホテルのタイプごとに特徴を押さえることが重要です。

ホテル業界全体の平均利益率

ホテル業界全体の営業利益率は、各種調査データによるとおおむね10%前後とされています。これは一つの目安として活用でき、自社の収益構造を評価する際の基準点となります。

ただし、この数値は景気動向や社会的要因によって大きく変動する点にも注意が必要です。特に新型コロナウイルス感染症の拡大時には、旅行需要が急減し、利益率が大幅に低下したホテルも少なくありませんでした。

つまり「10%前後」という水準はあくまで平時の目安であり、状況によって上下する柔軟な指標と捉えるべきです。もしこの基準を大きく下回る場合は、コスト削減や客室単価の見直しなど、改善策の早期検討が望まれます。逆に基準を超える水準を達成できていれば、安定した経営体制が築けていると判断できるでしょう。

ホテルタイプ別の特徴と目指すべき水準

ホテルの利益率は、業態や立地によって大きく異なります。

  1. ビジネスホテル
  2. リゾートホテル
  3. シティホテル
  4. 旅館
  5. 民泊
  6. グランピング

順に解説します。

まず、ビジネスホテルは出張需要を中心に高い稼働率を維持しやすく、固定費の回収が効率的に進むため、利益率は比較的高くなる傾向にあります。

一方でリゾートホテルは客単価が高いものの、季節変動や繁閑差が大きく、稼働率の維持が課題となりやすい業態です。そのため、レストランやスパなどの付帯施設で収益を確保する工夫が不可欠です。

シティホテルは宿泊だけでなく飲食や宴会の収益比率も大きいため、複数部門のバランスが利益率を左右します。

加えて、伝統的な宿泊形態である旅館や、比較的新しいスタイルの民泊・グランピングも注目されています。

旅館は老舗の安心感がある一方、老朽化や人手不足が課題になりやすく、民泊は少ない固定費で運営できるため利益率が高い傾向にあります。さらに、グランピングは設備投資を効率化できれば高収益を狙える業態として成長しています。

ホテルタイプ営業利益率の目安根拠・備考
ビジネスホテル約10~12%(業界平均をやや上回る)安定した出張需要と稼働率で効率的な固定費回収が可能
リゾートホテル約8~10%(平均~やや平均を下回る)季節変動が大きく稼働率の維持が厳しいが、客単価や付帯施設収益で補う余地あり
シティホテル約9~11%(業界平均に近い)宿泊・飲食・宴会など複数部門で収益が成り立つが、バランス管理が鍵
旅館約9~11%(業界平均に近い)日本ホテル協会平均9.3%。老舗ブランド力は強みだが老朽化対策が必要
民泊約10~30%(一部40%超)固定費が少なく利益率が高い。戦略次第で大きな差が出る
グランピング約30~50%(設備投資の効率化で高収益が可能)効率的な変動費運営で高収益を実現しやすい

自社の施設がどのタイプに当てはまるのかを明確にしたうえで、現実的な目標利益率を設定することが大切です。特に立地条件や顧客層、競合状況によって収益性は大きく変わるため、10%前後を一つの目安としつつ、民泊やグランピングのように高収益が狙えるモデルも参考にするとよいでしょう。

ホテルの利益を生み出す、3大収益部門

ホテルの収益は主に下記の3部門から成り立っています。

宿泊部門飲食部門宴会部門

順に見ていきましょう。

宿泊部門

宿泊部門はホテル収益の中核を担い、全体の利益を支える存在です。一般的に利益率は60〜70%と高く、他部門と比べて効率的に収益を確保できます。

ただし、フロントスタッフや清掃スタッフの人件費、リネンやアメニティのコストといった運営経費がかかるため、適切な人員配置や備品の管理が利益率を左右します。

さらに、稼働率や客室単価の影響を強く受けるため、マーケティング施策やOTA活用の工夫が重要です。

飲食部門

レストランやバーを中心とする飲食部門は、利益率がおおよそ20%程度と低めです。食材仕入れコストや廃棄ロス、人件費の比率が高いことなどが主な要因です。

特に、ホテル内レストランは「集客力の強化」と「原価管理」の両立が求められます。高付加価値メニューの開発や地元食材を活かした差別化戦略をとることで、顧客満足度と利益の両方を高めやすくなるでしょう。

飲食部門の効率化は、全体収益の安定にも直結するため、戦略的な運営が求められます。

宴会部門

宴会部門は、結婚式や企業イベントなどを中心に収益を上げる部門で、利益率は50%近くと高水準です。事前に参加人数やメニューが確定するため、原価や人件費の見積もりがしやすく、効率的なコスト管理が可能です。

さらに、宴会は大口の売上を一度に計上できるため、安定した利益の確保にもつながります。

ただし、景気や社会情勢に左右されやすい面もあるため、法人営業やリピーター顧客の獲得など継続的な販促活動が不可欠です。

ホテルの利益率を高めるための具体策

ホテルの利益率を改善するには、売上を拡大する「攻めの施策」と、コストを抑えて利益を守る「守りの施策」の両面から取り組むことが重要です。

【攻めの施策】売上を最大化する

収益を伸ばすには、客室やサービスの価値を高め、顧客単価や稼働率を上げる戦略が欠かせません。複合的なアプローチで売上の最大化を目指すことが必要です。

売上を最大化する方法は、下記の4点です。

客室単価を上げる工夫をする顧客単価を向上させる稼働率を高める集客戦略を立てるリピーターを育成し安定収益を確保する

順に見ていきましょう。

客室単価を上げる工夫をする

客室単価を高めるには、需要予測を踏まえた柔軟な料金設定が重要です。具体的には、宿泊需要の変動に応じて価格を変える「ダイナミックプライシング」を導入する方法があります。

また、ただ価格を引き上げるだけでなく、体験型の宿泊プランや長期滞在割引、地域とのコラボ企画など、付加価値を持たせる工夫も有効です。

顧客に「価格以上の体験が得られる」と感じてもらえれば、単価を上げても満足度を維持しやすく、利益率改善につながります。

顧客単価を向上させる

宿泊以外の利用を促すことで、顧客1人あたりの単価を引き上げることが可能です。代表的な手法としてはアップセルとクロスセルがあり、夕食プランやルームグレードの変更、スパ・アクティビティの利用などを提案することで売上を増やせます。

たとえば、チェックイン時に「+2,000円でオーシャンビューに変更できます」と案内すれば、宿泊者の満足度を高めつつ、利益拡大も期待できるでしょう。顧客ニーズを踏まえた提案を行うことで、自然な形で単価向上が実現します。

稼働率を高める集客戦略を立てる

稼働率を高めるには、OTA(Online Travel Agent)に依存しすぎない集客体制が欠かせません。OTAは集客力が高い一方で、手数料が大きな負担となるため、自社公式サイトからの直接予約を増やすことが利益率の改善につながります。

そのためには、予約導線がわかりやすいWebサイト設計や、限定プランの提供が有効です。さらに、SNSや動画配信を活用してホテルの魅力を発信し、ブランド力を高めることで、ファン層を広げ安定した稼働率を実現できるでしょう。

リピーターを育成し安定収益を確保する

ホテル経営で長期的に収益を安定させるには、リピーターの確保が効果的です。顧客満足度を高めることに加え、定期的なメールマガジン配信や会員制度による特典提供など、継続的なアプローチによってリピーターを獲得できます。

リピーターは集客コストが低く、口コミによる新規顧客獲得効果も期待できる点が魅力です。自社の強みを活かしてサービスを改善し、顧客と長期的な関係を築いていきましょう。

ホテルのリピーターを増やす、より具体的な方法を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】リピーターを増やすには?ホテル経営を安定させるためのポイントとは

【守りの施策】無駄をなくし利益を確保する

売上拡大と同時に、コスト削減や業務効率化を徹底することで、安定的に利益を確保できます。守りの施策も収益改善に直結します。

無駄をなくして利益を確保する方法は、以下の3点です。

DX(デジタル化)で業務を効率化する変動費を徹底的に見直す内製化と外部委託のバランスを最適化する

順に見ていきましょう。

DX(デジタル化)で業務を効率化する

人件費の高止まりが続く中、ホテル経営ではDXの導入が有効です。具体的には、PMS(ホテル管理システム)やサイトコントローラーを活用して予約・在庫管理を自動化する方法があります。また、スマートチェックインシステムを導入することで、フロント業務の効率化や省人化が実現し、人件費の最適化につながります。

こうした取り組みにより、スタッフが接客に集中できる環境を整えることにもつながるでしょう。

ホテルのDX導入に関するメリットや、具体的な成功事例など詳しい情報は、下記の記事もご覧ください。

【関連記事】ホテルDXとは?導入のメリット・成功事例・注意点を徹底解説

変動費を徹底的に見直す

利益率を改善するためには、売上を増やすだけでなく変動費のコントロールが重要です。飲食部門では、需要予測に基づいた仕入れやFB※原価のコントロールを行うことで、食材の廃棄ロスを減らせます。

※フード・アンド・ビバレッジ(料飲)の略語

また、省エネ設備の導入や運用方法の工夫により、光熱費の削減が可能です。さらに、アメニティやリネンサプライ契約の見直しも効果的で、実際に発注単位や納品頻度を調整するだけでコスト削減につながるケースも少なくありません。

これらの積み重ねにより、利益を圧迫する要因を抑えつつ、健全な経営体制を維持できます。売上の増加とは異なり、短期的に効果が現れやすいため、改善施策として優先度の高い取り組みといえるでしょう。

内製化と外部委託のバランスを最適化する

ホテル運営では、清掃や設備管理などの業務をどこまで自社で行い、どこから外部に委託するかの判断が利益率に直結します。

外部委託はコストを削減できる一方で、委託先の選定によっては、サービス品質に差が出る可能性もあります。逆に内製化は品質をコントロールしやすい反面、人件費や教育コストがかかる点に注意が必要です。

業務の性質や規模に応じて適切に線引きを行い、コスト削減と顧客満足度の両立を図ることが求められます。

ホテルの利益率改善に利用できる3つの指標

ホテル経営では、利益率だけでなく、稼働率や単価、収益性を示すKPIを組み合わせて確認することで、より正確に経営状況を把握できます。

客室稼働率(OCC)平均客室単価(ADR)RevPAR

順に見ていきましょう。

客室稼働率(OCC)

客室稼働率(OCC)は、販売可能な客室のうち、実際に利用された割合を示す指標であり、ホテルの集客力や販売戦略の成果を直接的に反映します。

算出方法は下記の通りです。

客室稼働率(%)=販売客室数 ÷ 総客室数 × 100

高い稼働率は安定的な売上につながりますが、稼働率が高くても、単価が低すぎると利益率が伸び悩むため、バランスが重要です。

効率的な稼働率向上のポイントについては、下記の記事をチェックしてください。

【関連記事】ホテルの稼働率(OCC)とは?経営成功の鍵となる稼働率向上のポイントを解説!

平均客室単価(ADR)

平均客室単価(ADR)は、実際に販売できた客室の平均価格を示す指標です。宿泊プランや価格設定の成果を評価するうえで欠かせません。

計算式は下記の通りです。

平均客室単価(円)=客室売上 ÷ 販売客室数

稼働率が高くても、ADRが低ければ十分な利益を確保できないため、稼働率とあわせたチェックが重要です。顧客層に合わせた料金設定や付加価値のあるプラン造成によって、ADRは改善可能です。

ホテルのADRに関する詳しい活用法は、下記の記事を参考にしてください。

【関連記事】ホテルのADRとは?計算方法から収益を最大化する活用法まで徹底解説!

RevPAR

RevPAR(レブパー)は「販売可能な客室1室あたりの売上」を表す指標であり、計算式は下記の2通りです。稼働率と単価の両方を反映するため、ホテルの総合的な収益力を測る最も代表的なKPIといえます。

RevPAR(円)=客室稼働率(OCC)×平均客室単価(ADR)RevPAR(円)=客室売上÷総客室数

たとえば客室稼働率が70%で平均客室単価(ADR)が1万円の場合、RevPARは7,000円です。稼働率が高くても単価が低ければRevPARは上がらず、逆に単価を上げても稼働率が下がれば成果は限定的です。

したがって、利益率改善を目指すホテルは、RevPARを中核指標として設定し、稼働率とADRのバランスを最適化する必要があります。

RevPAR(レブパー)に関するより詳しい解説や改善のヒントは、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】RevPAR(レブパー)とは?ホテル経営の収益力を測る指標を徹底解説!

より高度な経営改善を目指すならプロに相談しよう

これまで紹介してきた利益率改善の施策は、自社の収益状況を冷静に分析し、適切に実行することでより効果を発揮します。しかし、専門的な知識やノウハウが必要な場合も少なくありません。

特に、中小ホテルでは人員や時間に制約があり、マーケティング戦略の立案からKPI管理、業務効率化の仕組みづくりまでを自社だけで進めるのは容易ではありません。

そこで有効なのが、ホテル経営に特化した専門家への相談です。リロホテルソリューションズでは、運営代行からDX導入、集客施策の提案まで幅広くサポートを提供しています。第三者の視点から課題を洗い出し、利益率改善に直結する具体策を提示してくれる点が強みです。

自社に足りない部分を補いながら、持続的な収益体制を築くために、専門家への相談を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

ホテル経営において、利益率は事業の健全性や将来性を測る重要な指標です。この記事では、基本的な利益率の種類と計算方法、業界平均やタイプ別の目標水準、宿泊・飲食・宴会といった収益部門の特徴を解説しました。

さらに、売上を伸ばす「攻めの施策」とコストを抑える「守りの施策」を組み合わせることで、利益率を効果的に高められることについても解説しています。

加えて、OCC・ADR・RevPARといったKPIを正しく理解し活用すれば、自社の収益構造を客観的に把握し、改善の方向性を明確にできるでしょう。

ただし、こうした取り組みには専門的な知識や経験が必要であり、自社だけで完結させるのは難しい場合もあります。経営改善を本格的に進めたい方は、ホテル経営に精通したリロホテルソリューションズに相談し、持続的な収益向上につながる具体策を一緒に考えてみましょう。

執筆者氏名
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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。