ホテルの経費内訳を徹底解説|コスト構造の基本と経営改善のヒント【2026版】
ホテル運営の経費は、人件費や光熱費、OTA手数料、リネン・消耗品費、食材費など多岐にわたります。支配人や経営担当者にとって、経費の全体像をつかみ、どこを優先的に見直すべきか判断するのは簡単ではありません。経営改善の第一歩は、数字で経費構造を理解し、根拠を持ってコスト管理を行うことです。
この記事では、ホテルの主な経費項目や割合の目安、削減の考え方を解説し、利益率を高めるための実践的なヒントを紹介します。
📌 この記事でわかること
ホテル経費の全体構造
この章の結論
「経費」をひとくくりに管理していませんか
多くの施設で、経費は「今月はいくらかかったか」という総額でしか把握されていません。しかし総額だけを見ていても、どの科目が重いのか、どこに改善余地があるのかは見えてきません。経費改善の出発点は、科目ごとに分解し、それぞれを売上に対する比率(対売上比)で評価することです。
【図解】ホテル経費を構成する6つの科目
※旅館・料飲併設施設では②材料費の比重が、都市型ホテルでは④販売手数料の比重が相対的に大きくなる傾向があります。自施設の業態に応じて、どの科目に注視すべきかが変わります。
経費構造を把握する基本式
たとえば月商2,000万円に対して水光熱費が160万円であれば、水光熱費比率は8%です。この数値を科目ごとに算出し、業態平均と並べることで、「どの科目が構造的に重いのか」を定量的に特定できます。感覚で「電気代が高い気がする」と判断するのではなく、比率で裏付けを取ることが改善の第一歩です。
経費全体を管理した先にある収益指標については「GOPとは?ホテル経営を変える本当の利益率の見方と改善方法」もあわせてご覧ください。
⚠️ 「総額が去年より減った」は改善の証拠になりません
稼働率が落ちれば、材料費や変動的な人件費は自然に減ります。総額の増減だけを見ていると、実は対売上比では悪化しているケースを見逃します。経費改善の効果測定は、必ず対売上比(または1室あたり)の指標で行ってください。
経費構造診断シミュレーター
月間売上高と主要5科目の経費額を入力すると、各科目の対売上比を自動計算し、業態別ベンチマークとの差分を判定します。数値は端末内で計算され、送信されません。
固定費と変動費の区分
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固定費・変動費・準変動費の違い
経費を削減する前に必ず理解しておくべきなのが、固定費と変動費の違いです。この区分を無視して一律に「経費を10%削減」という号令をかけると、稼働に応じて自然に増減する変動費まで無理に削り、サービス品質を落とすことになります。
| 区分 | 特徴 | 主な科目 |
|---|---|---|
| 固定費 | 稼働率0%でも発生する。削減には契約変更や体制変更が必要 | 正社員給与、地代家賃、リース料、保険料、システム基本料 |
| 準変動費 | 一定額は固定的に発生し、稼働に応じて上乗せ分が変動する | パート人件費、水光熱費(基本料+従量分) |
| 変動費 | 売上・稼働に比例して増減する。削減は稼働・売上と表裏一体 | 食材費、OTA手数料、清掃委託費(室数連動型) |
人件費は「準変動費」として設計する
人件費を単純に固定費と捉えている施設が少なくありませんが、実際には正社員部分(固定費的性格)とパート・アルバイト部分(変動費的性格)が混在する準変動費です。正社員とパートの比率をどう設計するかが、固定費比率をコントロールする最大のレバーになります。正社員比率が高いほど閑散期の負担は重くなり、パート比率が高いほど繁忙期の確保が難しくなる——このトレードオフを、需要の年間変動幅に応じて最適化する必要があります。
人件費の適正比率と削減手法については「ホテル人件費の適正比率と削減実践」で詳しく解説しています。
損益分岐点との関係
固定費比率が高い施設ほど、損益分岐点となる売上高(=稼働率)が高くなります。つまり、固定費の重さは「閑散期にどれだけ耐えられるか」を直接左右するのです。繁忙期の利益だけを見て固定費を積み増すと、閑散期に赤字が拡大しやすい体質になります。
変動費だけを削っても、固定費比率は下がりません
食材費やアメニティなど、目に見えやすい変動費から手をつける施設が多いのですが、変動費は元々稼働に連動して増減するため、削減余地は限定的です。本当に効くのは固定費側の見直しであり、これについては後述の失敗パターンで詳しく扱います。
主要科目の業態別ベンチマーク
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業態別・科目別ベンチマーク一覧
以下は当社が運営支援する施設の実績および業界公表データをもとに算出した、科目別の対売上比の目安レンジです。自施設の数値と照らし合わせ、どの科目が目安から外れているかを確認してください。
| 科目 | ビジネスホテル | シティホテル | 温泉旅館(1泊2食) | 高級旅館 |
|---|---|---|---|---|
| 人件費 | 20〜28% | 28〜35% | 30〜38% | 32〜42% |
| 材料費 | 3〜6% | 8〜14% | 12〜18% | 16〜24% |
| 水光熱費 | 5〜8% | 6〜9% | 7〜11% | 7〜12% |
| OTA等販売手数料 | 8〜15% | 6〜12% | 10〜18% | 8〜15% |
| 修繕・設備関連費 | 3〜6% | 4〜7% | 4〜8% | 5〜9% |
| その他販管費 | 4〜8% | 5〜9% | 4〜8% | 4〜9% |
※上記は当社が運営支援する施設の実績および、観光庁「宿泊旅行統計調査」等の公表データをもとに算出した参考レンジです。エネルギー価格の変動や最低賃金の引き上げにより、水光熱費・人件費は年々上昇圧力がかかっています。数値は目安として活用し、自施設の契約条件や立地特性も踏まえて判断してください。客室数・稼働率別の詳細な統計は観光庁の宿泊旅行統計調査で、電気料金の制度・支援策の最新情報は資源エネルギー庁の電気料金についてのページで確認できます。
複数科目が同時に平均超過している場合の見方
1科目だけが平均を超えている場合は、その科目にピンポイントで対処すれば足りることが多いですが、2科目以上が同時に平均を超えている場合は要注意です。特に人件費と水光熱費が同時に高い施設では、稼働率に対して過大な体制・設備を維持している「構造的なオーバースペック」が疑われます。この場合は科目別の対処ではなく、次章以降で解説する構造改革のアプローチが必要です。
経費削減の優先順位
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優先順位を決める2つの軸
経費削減の相談で最も多い失敗は、「一番額が大きいから」という理由だけで人件費や材料費から手をつけてしまうことです。額の大きさだけでなく、削減インパクト(年間削減見込額)と着手の容易さ(サービス影響・実行難易度)の2軸で優先順位を決めるのが実務上の正しい進め方です。
【図解】着手順位の4象限
※右下(インパクト小×着手困難)に分類される施策は、労力に見合わないため基本的に着手優先度を下げます。特に食材の品質を落とす施策は、口コミ評点への悪影響が長期化しやすいため慎重に判断してください。
契約系コストの見直しは「最初の30日」でやるべきこと
着手しやすい契約系コストの点検リスト
これらはゲスト体験に一切影響を与えず、契約の見直しだけで数十万円〜数百万円規模の年間削減につながることがあります。削減施策の第一弾として、まずここから着手することをおすすめします。
コスト削減優先順位シミュレーター
削減候補の科目ごとに、想定削減額と着手難易度・サービスへの影響度を入力すると、優先着手すべき順にスコアリングして並び替えます。
コスト構造改革の3アプローチ
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アプローチ①:固定費の変動費化
閑散期の重荷になっているのは、多くの場合固定費です。人員体制をBPOや繁忙期限定の外部人材でカバーする、設備をリースやサブスクリプション型の契約に切り替える——こうした施策により、固定費を稼働に連動する変動費へ置き換えることができます。損益分岐点となる稼働率が下がり、閑散期の耐性が高まります。
アプローチ②:購買・調達の一括見直し
食材・アメニティ・リネン・消耗品など、施設ごとに個別発注している購買を集約し、発注ロットや取引条件を見直すことで、単価そのものを引き下げられます。特に複数施設を運営するグループでは、購買の共同化による調達コスト削減効果が大きくなります。単独施設でも、主要仕入先との年間契約への切り替えや、地域内での共同購買の検討余地があります。
アプローチ③:分母(売上)の拡大による構成比改善
経費削減という言葉から見落とされがちですが、売上(分母)が伸びれば、同じ経費総額でも対売上比は改善します。客室単価の適正化、直販比率の向上によるOTA手数料の実質圧縮、館内消費(アップセル・クロスセル)の強化は、いずれも経費の対売上比を下げる有効な打ち手です。単価と稼働のバランスについては「RevPAR(レブパー)とは?計算式・ADR・OCC・業界平均と改善策」で解説しています。
【図解】3アプローチは併走させると効果が増幅する
固定費の変動費化を人材面から支える選択肢
固定費の変動費化を進める際、繁忙期のピーク対応や欠員時の一時補填を外部人材でカバーする選択肢があります。グループ会社である株式会社エキップは、宿泊業に特化した人材サービスを提供しており、ホテル・旅館での勤務経験を持つスタッフが在籍しています。固定人員を増やさずに繁閑差へ対応したい場合の検討先として、下記より詳細をご確認いただけます。
失敗パターン|固定費に手をつけない削減の限界
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失敗パターン①:食材費だけを削り、口コミ評点が下がった
もっとも着手しやすい変動費である食材費から手をつけ、品質を落として原価を圧縮する——これは短期的には数値が改善しますが、旅館・料飲提供施設では特に危険な選択です。料理の質は口コミ評点に直結し、評点が下がれば集客が落ち、結果として売上(分母)が縮小して対売上比はかえって悪化します。変動費の削減は、削減額の小ささに対してリスクが不釣り合いに大きいことがあります。
失敗パターン②:固定費(人員・設備)に手をつけず、疲弊する現場に負担を寄せた
固定費の見直しは、契約変更や体制変更を伴うため心理的なハードルが高く、後回しにされがちです。その結果、削減目標の帳尽合わせのために変動費や現場の努力(残業代未払いに近い運用、消耗品の使い回しなど)にしわ寄せが行きます。これは会計上の数値を一時的に良く見せるだけで、離職・事故・クレームという形で必ず跳ね返ってきます。
失敗パターン③:削減の「賞味期限切れ」に気づかず、同じ施策を繰り返した
消耗品の発注ロット見直しや照明のLED化など、着手しやすい施策は一度実行すれば効果が固定化し、翌年以降は追加の削減余地がありません。それにもかかわらず、毎年同じ「経費削減キャンペーン」を号令し続けると、現場は「またか」という疲弊感だけが蓄積し、実際の数値は動きません。削減できる余地には限りがあることを前提に、次は固定費側の構造改革に踏み込む判断が必要です。
⚠️ 「削りやすいところから」の罠
経費削減が変動費側だけで頭打ちになっている施設は、例外なく固定費比率が業態平均を上回っています。固定費に手をつける決断を先送りし続けると、削減できる範囲は年々狭まり、最終的には食材や現場の負担にしわ寄せが行くしかなくなります。着手のハードルが高いからこそ、固定費の見直しは早い段階で計画に組み込むべきです。
内製の限界とプロ(BPO)との差
自社だけで経費構造を見直したときにぶつかる壁
⚠️ 内製対応の限界——「経理担当者頼み」が招く3つのリスク
経費管理を経理担当者や支配人の日常業務の延長で行っている施設では、①比較対象の不在(自施設の科目別比率が高いのか低いのか、外部データがなく判断できない)、②契約の見直しが後回しになる(日々の業務に追われ、保険や電力契約の再見積もりに着手する時間が取れない)、③科目間の相互作用が見えない(人件費を削ったら外注費が増えていた、という帳尻合わせに気づけない)——の3つが慢性的に発生します。
専門家が持っている3つの武器
🔍 プロとの差——専門家が持つ「3つの武器」
運営支援・BPOの専門家は、①複数施設の科目別ベンチマークデータベース(同規模・同業態の経費構造と即座に比較できる)、②取引先との交渉力(複数施設分をまとめた発注規模を背景に、保険・仕入・システム利用料の単価交渉ができる)、③固定費の変動費化スキーム(BPOや変動型人材活用など、内製では選択肢に上がりにくい構造転換の実行手段を持つ)——を組み合わせて意思決定を行います。自社の担当者が「今期の経費が去年よりどうだったか」を確認している間に、専門家は複数施設のデータから「どの科目に、あとどれだけの改善余地があるか」を先に把握しています。この情報の非対称性が、年間の利益として数百万円規模の差になって現れます。
コスト構造の見直しを自社の体制だけで進めるか、外部の専門家に伴走してもらうかで悩んでいる場合は、「ホテル・旅館の運営代行(BPO)完全ガイド」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
ホテル経費内訳に関するよくある疑問
まとめ:経費は科目でなく構造で管理する
「経費が重い」と感じたとき、最初にすべきは総額の増減を追うことではなく、科目ごとに分解して対売上比で評価することです。人件費・材料費・水光熱費・OTA手数料・修繕設備費・その他販管費の6科目を業態別ベンチマークと比較すれば、どこが構造的に重いのかが定量的に見えてきます。
削減に着手する際は、削減インパクトと着手の容易さの2軸で優先順位を決めてください。保険や電力契約、システム利用料といった契約系のコストはサービス影響ゼロで着手でき、まず取り組むべき対象です。一方で、変動費(特に食材費)だけを削る施策は削減幅が小さく品質低下のリスクが高いため、固定費の変動費化・購買の一括見直し・分母(売上)の拡大という3つの構造改革アプローチを並行して進めることが、持続的な利益改善につながります。
固定費に手をつけずに変動費だけを削り続けると、いずれ削るものがなくなり手詰まりになります。着手のハードルは高くても、人員体制や設備、契約形態そのものを見直す構造改革に、早い段階で踏み込む判断が必要です。
リロホテルソリューションズの支援実績
| シティホテル(120室) | 温泉旅館(35室) |
|---|---|
| GOP率 4.8pt改善 ・科目別対売上比を業態平均と比較し優先順位を決定 ・保険・電力契約の見直しで年間220万円削減 ・人員体制の一部変動費化で閑散期の耐性を強化 |
損益分岐点 稼働率-9pt ・固定費比率の高さを構造的な課題と特定 ・繁忙期のみ外部人材を活用し固定費を圧縮 ・購買の見直しで食材品質を維持したまま原価改善 |
支援施設全体では、6〜12ヶ月でGOP率3〜6ポイント、損益分岐点となる稼働率の5〜10ポイント低下が見られます。特に固定費比率が業態平均を大きく上回っていた施設ほど、改善幅が大きい傾向があります。
株式会社リロホテルソリューションズでは、経費構造の可視化から科目別ベンチマーク比較、固定費の変動費化やBPO活用の設計まで一貫して支援しています。経費がどこから重いのか分からない、削減できるところがもう見当たらない、そういった方はお気軽にご相談ください。
【監修者情報】
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。






