MICE(マイス)とは?ホテル・旅館が取り組むメリットと集客戦略を解説
中小規模ホテルにとって、MICE(マイス)は宿泊以外の収益を伸ばす有力な選択肢といえます。会議や研修・展示会などのビジネスイベント需要を取り込めば、客室販売に依存しすぎない経営基盤づくりも可能です。
近年は、観光立国戦略の一環として、MICEが重点分野に位置づけられ、コロナ禍で停滞していた需要も回復傾向にあります。本記事では、ホテル・観光事業におけるMICEの意味と市場背景を整理したうえで、中小ホテルがMICEの利用を増やすための具体的な考え方と戦略を解説します。ぜひ最後までご覧ください。
📚 この記事の目次
📌 この記事でわかること
MICE(マイス)とは?意味と4つの要素
MICEの基本概念
MICE(マイス)とは、会議・研修・展示会といったビジネスイベントを総称する言葉で、Meeting・Incentive Travel・Convention・Exhibition の頭文字をとった造語です。単なる団体宿泊とは異なり、「開催そのものに価値がある」ことが最大の特徴で、宿泊・会場・飲食を横断した収益機会を一度に生み出します。
MICEに含まれるイベントは、次の4種類に整理できます。それぞれ参加者が明確な目的を持って集まり、一定期間滞在するため、客室販売だけに依存しない収益構造をつくる出発点になります。
| 要素 | 正式名称 | 主なイベント例 |
|---|---|---|
| M | Meeting | 企業の経営会議・部門別研修 |
| I | Incentive Travel | 成果報奨を兼ねた旅行・表彰イベント |
| C | Convention/Conference | 国際会議・学術大会 |
| E | Exhibition/Event | 展示会・商談会・業界イベント |
この記事が特に役立つ施設
・週末は埋まるのに平日の稼働が大きく落ち込む
・客室売上に依存し、宴会場や会議室を持て余している
・「うちの規模ではMICEは無理」と最初からあきらめている
——心当たりがある方こそ、MICEは収益の第二の柱になり得ます。
⚠️ MICEを「大企業向けの話」と切り捨てる宿が見逃しているもの
MICEと聞くと数千人規模の国際会議を思い浮かべがちですが、実際には地域企業の研修・業界団体のセミナー・数十人規模の勉強会もすべてMICEに含まれます。会議室や宴会場を遊ばせたまま「規模が小さいから」と機会を見送っている施設は、平日に取り込めたはずの法人需要を毎月取り逃がし続けています。
「観光立国」戦略におけるMICEの位置づけ
MICEは、日本の観光政策において重要な柱の一つに位置づけられています。観光庁はMICEを高い経済波及効果を持つ分野とし、インバウンド誘致と並行して国際会議や展示会の開催件数拡大を目標に掲げています。単なる観光客の増加ではなく、ビジネス目的の来訪者を戦略的に呼び込む取り組みとして、継続的に推進されている分野です。
制度の詳細は、観光庁のMICEとは(観光庁)でも確認できます。
MICE市場の最新動向【2027年】
需要回復と「分散・小規模化」の流れ
コロナ禍で大きく停滞したMICE需要は、対面開催の再開を背景に回復が続いています。一方で、市場の中身は以前と同じではありません。大型一極集中から、中規模・小規模イベントへの分散、そしてオンラインと対面を組み合わせたハイブリッド開催の定着という構造変化が進んでいます。
この変化は、大型施設を持たない中小ホテルにとってむしろ追い風です。数十名規模の研修や地方分散型の会議が増えることで、コンパクトな施設にも受注機会が広がっているためです。
| 変化の軸 | 従来(コロナ前) | 現在〜2027年の傾向 |
|---|---|---|
| 開催規模 | 大型・一極集中 | 中小規模へ分散 |
| 開催形式 | 対面のみ | 対面+オンライン併用 |
| 開催地 | 都市部中心 | 地方・リゾート分散型 |
| 重視点 | 会場規模・収容力 | 体験価値・地域性 |
※市場動向は各種公表資料に基づく一般的傾向です。最新の統計値は観光庁の公表データをご確認ください。
「地方・リゾート分散」が中小施設の勝ち筋になる
企業のワーケーション研修やインセンティブ旅行では、都市型ホテルにはない「その土地ならではの体験」が選定の決め手になります。地域性を打ち出せる中小ホテル・旅館は、価格ではなく価値で選ばれる余地が大きいのです。地域連携による集客の考え方は、地方創生とホテル経営の関係もあわせてご覧ください。
ホテルがMICEに取り組む3つのメリット
MICEは単なる団体宿泊ではありません。客室に加え、宴会場・飲食部門まで含めた売上拡大が見込めるため、ホテルの収益構造そのものを強化します。経営面で特に注目すべきメリットは、次の3点です。
①日程・人数が早期に確定し、売上予測が立てやすい
企業会議・研修・学会などは主催者側で事前に計画されるため、開催の数か月前から予約が確定します。一般観光客のような直前予約やキャンセル変動に左右されにくく、客室稼働や宴会場利用の見込みを早期に把握できます。結果として、経営計画の精度向上と人員配置の最適化につながります。
②一般観光客を上回る高い客単価
MICE利用者は、一般観光客より客単価が高くなる傾向があります。一般観光が宿泊費と飲食費中心であるのに対し、MICEでは宿泊に加えて会場利用料・懇親会・機材レンタル・付随観光など、複数の支出が同時に発生するためです。企業経費での支払いが多く、付帯サービスの利用にも前向きな点も単価を押し上げます。
③閑散期・平日に需要を創出できる
観光需要は週末や繁忙期に集中しやすく、平日の稼働率が課題となる施設は少なくありません。企業研修や会議は平日開催が多いため、MICEは観光客が少ない曜日にまとまった宿泊需要を生み出します。稼働率の平準化が進むことで、特定シーズン頼みの経営から脱却し、年間収益の安定化が期待できます。稼働率の指標管理についてはレベニューマネジメントの考え方も参考になります。
MICE収益インパクト試算ツール
同じ「団体利用」でも、一般団体宿泊とMICE利用では1件あたりの売上が大きく変わります。参加人数・宿泊単価・MICE付帯売上を入力すると、両者の差額を自動で試算します。
このように、MICEは「客室を売る」発想から「滞在全体の価値を売る」発想への転換です。付帯売上をどこまで設計できるかが、1件あたりの収益を大きく左右します。
MICE対応施設に求められる特徴
MICEを受け入れるうえで重要なのは、最新鋭の設備ではなく「主催者が安心して任せられること」です。大規模投資をしなくても、次の3点を押さえれば中小ホテルでも十分に対応できます。
①使いやすい会議・研修プランと設備
会議室利用と宿泊・懇親会を組み合わせた一体型プランを用意すると、主催者の手間を減らせます。時間単位の会場貸しや半日研修プランなど、柔軟な料金設定も効果的です。設備面では高速Wi-Fi・プロジェクター・スクリーン・ホワイトボードなど、最新機材よりも「不足がないこと」が信頼の土台になります。
②食の多様性への対応
MICE参加者は背景が多様なため、食事対応の幅が評価を左右します。宗教上の制限・ベジタリアン・ヴィーガン・アレルギー配慮など、細かなニーズに応えられる体制が求められます。すべてを自前で賄う必要はありませんが、事前ヒアリングを徹底し、選択肢を提示できることが重要です。
③地域連携による「まちぐるみ」の付加価値
地域の伝統産業体験・歴史散策・地元企業との交流プログラムを組み合わせれば、「その土地ならでは」の価値を提供できます。自治体・観光協会・商工会と連携し、周辺散策マップや体験コンテンツを整備するのも効果的です。魅力的な体験が用意されていれば、主催者は開催地として選びやすくなります。
中小ホテルがMICE集客を始める基本ステップ
MICEは「会議室を作れば自然に集まる」ものではありません。需要を取り込むには、自施設の強みを起点とした基本ステップを踏むことが重要です。
MICE集客を始める4ステップ
⚠️ 内製対応の限界——「設備を整えれば集まる」という思い込みが招く3つの停滞
MICE対応を現場任せ・施設投資頼みで進める施設では、①ターゲット未定のまま会議室を改修し稼働しない、②法人営業の経験がなく問い合わせを受注に変換できない、③部門横断の連携が取れず懇親会・体験の提案ができない——という3つの停滞が起きがちです。設備は出発点にすぎず、「誰に・どんな価値で売るか」の市場設計と営業体制こそが受注を左右します。
🔍 プロとの差——専門家が持つ「3つの武器」
MICE誘致の専門家は、①ターゲット設計(自施設が勝てるMICE領域の見極め)、②法人営業チャネル(企業・団体・旅行会社への提案ルート)、③部門横断の収益設計(宿泊・会場・料飲・体験を束ねた単価最大化)——を組み合わせて意思決定します。自施設が「問い合わせを待つ」段階に留まっている間に、専門家は「狙った企業へ提案を持ち込む」動きをしています。この差が、半年後・1年後のMICE受注件数の格差として現れます。
MICE導入でよくある失敗パターン
MICEは正しく取り組めば強力な収益軸になりますが、準備不足のまま着手すると投資が回収できないこともあります。支援現場で特に多い3つの失敗パターンを共有します。
失敗①:施設だけ作って集客できない
こんな施設に多い:先に会議室を改修したが、誰に売るかが決まっていない/問い合わせを待つだけで法人営業の動きがない
最も多いのがこのパターンです。設備投資は出発点にすぎず、ターゲット設計と営業活動が伴わなければ稼働しません。「作れば来る」ではなく「狙って獲りに行く」発想が必要です。
失敗②:価格競争に巻き込まれる
こんな施設に多い:方向性を定めず幅広く受注しようとする/競合との差別化ポイントが言語化できていない
狙うMICEを絞らないまま「何でも受けます」の姿勢で臨むと、結局は価格だけで比較され、安売りに陥ります。自施設が勝てる領域を定め、価格ではなく価値で選ばれる設計が重要です。
失敗③:部門連携が取れず単価が伸びない
こんな施設に多い:宿泊部門だけでMICEを完結させようとする/懇親会・体験プログラムの提案ができていない
MICEは宿泊部門だけで完結する施策ではありません。会議利用後の懇親会動線、二次会提案、地元体験プログラムとの連動まで設計できているかで、1件あたりの売上は大きく変わります。宴会場・料飲・営業・広報を横断した収益設計が欠かせません。
よくある質問(FAQ)
MICEに関するよくある疑問
まとめ:MICEで宿泊依存から脱却する
週末は埋まるのに平日が空く——その構造的な弱点を補える有力な選択肢が、MICEです。MICEは会議・研修・展示会といったビジネスイベントを取り込み、客室だけでなく会場・飲食まで含めた収益を生み出します。日程・人数が早期に確定し売上予測が立てやすいこと、客単価が高いこと、平日・閑散期の需要を創出できることが、経営面の大きなメリットです。
一方で、「施設だけ作って集客できない」「価格競争に巻き込まれる」「部門連携が取れず単価が伸びない」といった失敗も少なくありません。重要なのは、設備投資の前に「どのMICEを、どんな価値で狙うか」という市場設計と営業体制を固めることです。
リロホテルソリューションズの伴走支援
リロホテルソリューションズは、全国50施設以上を運営してきたノウハウをもとに、MICE活用における課題整理・ターゲット設計・集客戦略の構築までを総合的に支援しています。単に稼働率を上げるのではなく、客単価や部門横断の収益最大化を見据えた改善提案を行う点が強みです。「うちの規模でMICEを伸ばせるのか」「どこから手をつければよいか」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
全国50施設以上のホテル・旅館を現在も直接運営する親会社のノウハウを背景に、赤字施設の収益改善を専門とするコンサルティング会社。
「机上の理論」ではなく現場で磨かれた実践知をもとに、価格戦略・OTA対策・運営効率化を三位一体で支援。
支援施設では平均3〜6ヶ月でRevPAR 15〜30%改善、稼働率+8〜15ptの実績を持つ。



