LOS(平均滞在日数)とは?計算方法・メリット、向上策について解説
ホテル運営のKPI(重要業績評価指標)の1つとなるLOS(平均滞在日数)は、ホテルの経営に携わる方であれば理解しておくべき項目です。
本記事ではLOSの考え方や計算方法といった基本的な要素に加え、数値の高め方や運営での役立て方などを初心者の方にもわかりやすく解説します。
数値分析に関心があり、LOSを自社の運営に役立てたいと考えている方はぜひ最後までご覧ください。
📌 この記事でわかること
LOS(平均滞在日数)とは?定義と計算式
この章の結論
LOSの基本定義
LOS(Length of Stay)とは、宿泊客1名(または1予約)あたりの平均滞在日数を示すKPIです。「今泊まっているゲストは、平均何泊しているか」を数値で把握することで、収益効率・オペレーションコスト・集客戦略の3軸で経営判断が可能になります。
LOSは宿泊客の属性によって大きく変動します。ビジネス出張者は1〜2泊が中心である一方、インバウンド旅行者や長期休暇の観光客は3泊以上になる傾向があります。この「客層ごとのLOS傾向」を把握せずに施策を打っても、効果は限定的です。
こんな施設に特に効く
・土日の1泊だけ部屋が埋まり平日が空いている
・清掃スタッフが繁忙期に不足して回らない
・「OTAの手数料引いたらほぼ利益なし」という状態が続いている
——このいずれかに心当たりがある方は、LOSの見直しが突破口になります。
LOSの計算式
例:3名が3連泊した場合 → 延べ9泊 ÷ 実3名 = LOS 3.0泊
PMSからデータを抽出するときの注意点
【図解】LOS算出で「やりがちなミス」と正しい手順
※抽出条件が正しくないとLOSが実態と乖離し、MinLOS設定や連泊プランの判断を誤る原因になります。PMSの設定を担当者間で統一しておくことが重要です。
LOSを向上させる3つのメリット
この章の結論
①売上・顧客単価(LTV)の向上
1件の予約あたりの総宿泊料金が増えることで、広告費やOTA手数料などの獲得コストの「比率」を下げながら顧客単価を高められます。
| 比較 | LOS 1泊(毎日1泊客) | LOS 3泊(連泊客) |
|---|---|---|
| 宿泊単価(ADR) | 10,000円/泊 | 9,000円/泊(3泊10%割引) |
| 1予約あたり宿泊料 | 10,000円 | 27,000円 |
| OTA手数料(15%) | 1,500円 | 4,050円 |
| 手数料の売上比率 | 15.0% | 15.0%(変わらない) |
| フル清掃コスト(1室あたり3,000円と仮定) | 3,000円×3日=9,000円 | 3,000円×1日+簡易清掃×2日≒4,500円 |
| 3泊分の実質コスト削減 | 基準 | 約4,500円のコスト削減 |
この試算では、10%の連泊割引を適用しても清掃コスト削減だけで約4,500円の収益改善が期待できます。さらに館内レストランや売店の利用増加による付帯収益も上積みされます。
②オペレーションコストの削減と生産性向上
滞在が延びると、チェックイン・チェックアウト業務の回数が減ります。フロント手続き、鍵の受け渡し、宿泊名簿の管理——これらはすべて人件費に直結します。連泊客に「エコプラン(清掃不要)」を提案することで、清掃人件費とリネン費の両方を抑制できます。
エコプラン導入の現場効果
3泊連泊客にエコプランを適用した場合、フル清掃は初日チェックアウト後の1回のみ。中日は客室点検と任意のタオル交換のみとなり、清掃スタッフ1名あたりの担当室数を1.5〜2倍に引き上げることが可能です。繁忙期の人手不足対策として即効性があります。
③人手不足解消への寄与
ホテル・旅館業界全体の慢性的な課題が人手不足です。LOS向上によるチェックイン・アウト業務の削減は、スタッフをより付加価値の高い接客・サービス改善に振り向けるための「時間の創出」につながります。業務密度の平準化は、少人数でもサービス品質を維持する体制構築の第一歩です。
LOS向上で陥りやすい失敗パターン
この章の結論
失敗パターン①:連泊割引を深くしすぎてADRが崩壊する
⚠️ 「3泊以上30%OFF」を設定した結果、RevPARが悪化した事例
連泊割引率を高めすぎると、LOSは伸びても1室あたりの収益(RevPAR)が下がる逆転現象が起きます。特に繁忙期に大幅割引が適用されると、高単価で販売できたはずの部屋が安売りされてしまい、年間を通じたRevPARの引き下げ要因になります。
連泊割引の設計は「閑散期専用」か「ADRが十分確保できる範囲内」に限定するのが基本です。繁忙期には割引の上限を設ける(例:繁忙期は5%まで、閑散期は最大15%)など、レベニューマネジメントの観点から割引ルールを設計する必要があります。
失敗パターン②:MinLOSを全日程に適用して稼働率が急落する
⚠️ 「毎日2連泊以上」に設定したら閑散期の予約が消えた事例
MinLOS(最低宿泊日数制限)は需要の高い日程に限定して適用するのが鉄則です。需要の低い平日・閑散期に同じ制限をかけると、1泊希望の顧客が予約できず空室が増えます。「高稼働日の収益最大化」と「低需要日の稼働確保」は、別の戦略で対応しなければなりません。
失敗パターン③:ターゲットを絞らずに連泊プランを作って埋まらない
「連泊プランを作ったが予約が入らない」という相談は現場でも多いです。LOSの高いターゲット層(インバウンド旅行者・中長期出張者・ワーケーカー・シニア層など)を明確にせず、既存のOTAで全方位に掲載するだけでは反応を得にくいです。
改善の方向性:ターゲットが滞在する理由(地域の観光拠点・リモートワーク環境・温泉×長期療養など)に紐づいた「連泊する理由」を訴求するプラン設計が必要です。
MinLOS収益影響シミュレーター
連泊制限(MinLOS)を設定した場合と設定しない場合の収益差を試算します。需要の高い週末・イベント日に何泊以上の制限を設けると、RevPARはどう変わるかを確認できます。
シミュレーターの活用ポイント
MinLOS設定の効果はOCCの下落幅によって大きく変わります。高需要日(連休・イベント日など)はOCC低下が小さく、RevPAR改善効果が出やすいです。需要の読みが浅い段階でMinLOSを適用すると、逆に収益が下がるリスクがあります。
LOS向上のための3つの施策
施策①:連泊特化型プランの設計
LOSを向上させる最も直接的な手段は、予約段階で「長く泊まるメリット」を明示することです。ただし割引率の設計を誤ると失敗パターン①に陥ります。
▲ 連泊プラン設計の基本原則(攻め)
施策②:MinLOS(最低宿泊日数制限)による戦略的コントロール
MinLOSは需要の高い日に「1泊だけ」で在庫が埋まるのを防ぎ、前後日程とセットで稼働を確保する手法です。ダイナミックプライシングと組み合わせることで、ピーク日の収益を最大化できます。
▼ MinLOS設定の基本ルール(守り)
施策③:ターゲット層の選定とチャネル戦略
LOSの高い顧客属性に集中アプローチすることが、最も効率的なLOS向上策です。インバウンド旅行者(広域周遊型)、中長期出張・プロジェクト赴任者、シニア・長期休暇層、ワーケーカー——これらの顧客は安定した連泊が見込める優良ターゲットです。
【図解】顧客セグメント別のLOS傾向と適切な施策
| 顧客セグメント | 平均LOS目安 | 有効な施策 |
|---|---|---|
| インバウンド(欧米・豪州) | 5〜14泊 | OTA多言語対応・観光拠点としての情報整備 |
| 中長期出張・プロジェクト赴任 | 5〜30泊以上 | 法人契約・マンスリープラン・洗濯機等の設備整備 |
| ワーケーション層 | 3〜7泊 | 高速Wi-Fi・デスク環境・ワーケーション専用プラン |
| シニア・長期休暇 | 3〜10泊 | 平日特典・温泉・食事付きプラン・送迎対応 |
| 国内週末旅行者 | 1〜2泊 | MinLOS(2泊以上)で週末RevPAR最大化を狙う |
内製の限界とプロとの差
「担当者の感覚」に依存するLOS管理の3つのリスク
⚠️ 内製管理の限界——「なんとなく連泊プランを作っている」施設の落とし穴
LOS管理を担当者の経験と感覚に依存している施設では、①MinLOS設定を年間固定にしたまま需要変動に対応できない、②連泊割引率を「競合に合わせて」決めてしまいADRが崩れる、③LOS・OCC・ADRを個別に見てRevPARへの影響を把握していない——の3つが慢性的に発生します。毎月のLOS実績を集計し、RevPARとセットで検証する仕組みがないまま施策を打ち続けると、なぜ利益が出ないのかが見えなくなります。
専門家が持つ「3つの武器」でLOSを科学する
🔍 プロとの差——専門支援で何が変わるか
レベニューマネジメントの専門家は、①需要予測に基づいたMinLOS設定の動的変更(週単位・イベント単位での見直し)、②顧客セグメントごとのLOS分布分析(どの属性が何泊しているかの可視化)、③LOS向上策とADR・OCC・RevPARへの影響をセットで試算した施策設計——を組み合わせた意思決定を行います。「連泊割引を入れたら売上が増えたが利益が減った」という失敗は、この3つを同時に見ていないことが原因です。
LOS改善優先度チェック
7つの質問にはい/いいえで答えると、自施設がどのLOS課題タイプに当てはまるかを自動判定します。回答すると次の設問へ自動スクロールします。
LOSとセットで見るべき重要指標
この章の結論
ADRとOCC:LOSと同時に管理すべき2指標
LOS向上を追求するとき、ADR(客室平均単価)とOCC(客室稼働率)のバランスを崩してはいけません。連泊割引を深くしすぎるとADRが下がり、OCCが高くてもRevPARが低下するという逆転現象が起きます。「LOS・OCC・ADRの3つをセットで捉え、単価を落としすぎずに滞在期間を延ばす」ことが利益改善の核心です。
RevPARとGOP:LOSの最終目的地
LOS向上はあくまでKPIのひとつです。連泊割引で売上が微減したとしても、清掃コスト・フロント業務コストの削減でGOP(粗営業利益)が向上すれば、経営的には正解です。RevPARで収益効率を、GOPで利益の実態を評価するという使い分けが実務では有効です。
DOR:一人あたり収益を最大化する指標
DOR(Double Occupancy Ratio)は1室あたりの平均宿泊人数を示す指標です。1名利用の連泊と家族・複数人利用の連泊では、食事・売店などの付帯収入が大きく異なります。LOSとDORを組み合わせることで、食材仕入れ・スタッフ配置の最適化と「1滞在あたりの総消費額最大化」が実現できます。
| 指標 | LOSとの関係 | 主な活用場面 |
|---|---|---|
| ADR | 連泊割引の下限設定に直結する | 割引率設計・繁忙期価格設定 |
| OCC | MinLOS設定による変動を確認する | MinLOS効果検証・閑散期対策 |
| RevPAR | LOS施策の最終成果を確認する指標 | 月次・年次の経営判断 |
| GOP | 清掃・人件費削減がGOPに反映される | LOS施策のコスト削減効果の評価 |
| DOR | LOSとセットで付帯収益を予測できる | 食材仕入れ・スタッフ配置の最適化 |
よくある質問(FAQ)
LOSに関するよくある疑問
まとめ:LOSをRevPAR向上の武器にする
LOSは「稼いだ部屋を何泊使ったか」ではなく、「清掃コストをどれだけ削減しながら収益を積み上げられるか」の指標です。連泊割引・MinLOS設定・ターゲット設計の3施策を正しく組み合わせることで、RevPARの底上げとオペレーションコストの削減が同時に実現できます。
重要なのは、LOSを単独で見ないことです。ADR・OCC・RevPARとセットで月次モニタリングし、連泊割引がGOP(粗営業利益)の改善につながっているかを定期確認する体制を整えることが、感覚頼りの運営から脱却する出発点です。
リロホテルソリューションズのLOS支援実績
LOS改善の支援では、①顧客セグメント別のLOS分布分析でターゲットを特定、②MinLOS設定の需要予測に基づいた動的設定、③連泊割引率の最適化とADR・RevPARへの影響シミュレーション——の3ステップを組み合わせた支援を行っています。支援施設では3〜6ヶ月でLOSが平均0.5〜1.5泊改善し、清掃コスト削減とRevPAR向上の両面で効果が現れています。
株式会社リロホテルソリューションズでは、LOSをはじめとする収益指標の改善を、データ分析から施策実行まで一貫して支援しています。「連泊施策を入れたのに利益が残らない」「MinLOSの設定タイミングが判断できない」という方はお気軽にご相談ください。
【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。






