客室ステータスとは?VC・VD・OOOの意味と管理のポイント
チェックアウトを終えた部屋が、PMSの画面ではまだ「清掃前」のまま。フロントは満室と判断して、当日の予約を断る。実際にはVCの部屋があった、という場面は珍しくありません。客室ステータスの更新が現場の動きに追いつかないと、売れたはずの1泊が静かに消えます。
この記事では、VC・VD・OC・OD・OOO・OOSの意味と違い、OCCの分母の数え方で稼働率がどう変わるか、現場で毎月確認したい3つの数字、PMSごとの表記の違いを整理します。
記事内の客室ステータス別OCC試算を使えば、OOO・OOSの扱いを変えたときの稼働率とRevPARの差を、自館の数字で確認できます。
客室ステータスとは、各部屋が「今どういう状態か」をフロント・清掃・予約で共有するための表示です。
⚠️ たとえば、清掃が終わっているのにシステム上がVDのままなら、売れる部屋があっても「満室」と案内してしまいます。略語は、VC=Vacant Clean、VD=Vacant Dirty、OOO=Out of Order、OOS=Out of Serviceの意味です。分母の置き方でOCCがどう動くかは、客室ステータス別OCC試算で確認できます。
客室ステータスとは?基本の3軸
客室ステータスの定義
客室ステータスとは、ホテルや旅館の各客室が現在どの状態にあるかを示す管理表示のことです。チェックイン中なのか、清掃が済んでいるのか、故障で売れないのか。実際、フロント・客室清掃(ハウスキーピング)・予約担当が、同じ言葉で状態を共有するために使います。
現場ではVC・VD・OOOといった略語が飛び交います。ところが、意味がスタッフごとにずれていると、売れる部屋を売り逃したり、清掃前の部屋にお客様を案内したりします。そのため、客室ステータスは単なる事務作業ではなく、収益に直結する実務の土台です。
客室ステータスを構成する3つの軸
用語は多く見えます。しかし、3つの軸で整理すると理解しやすくなります。なお、実務では軸①と軸②を組み合わせた略語(VC=Vacant Clean など)を使います。
客室ステータスを構成する3つの軸
Vacant(空室)
Dirty(清掃前)
OOS(販売停止)
また、用語全体を体系的に整理したい場合は、ホテルの重要用語一覧もあわせてご覧ください。
VC・VD・OC・ODの違い
在室と清掃を組み合わせた4区分
Occupied(在室)はお客様が滞在している状態、Vacant(空室)は誰もいない状態です。そこで、これに清掃状況のClean/Dirtyを掛け合わせると、次の4区分になります。
| 略語 | 正式名称 | 状態 | 販売可否 |
|---|---|---|---|
| VC | Vacant Clean | 空室・清掃済 | ○ 即販売可 |
| VD | Vacant Dirty | 空室・清掃前 | △ 清掃後に可 |
| OC | Occupied Clean | 在室・清掃済 | × 滞在中 |
| OD | Occupied Dirty | 在室・清掃前 | × 滞在中 |
VDからVCへの切り替えが販売可能数を決める
まず、4区分のなかで最も大事なのがVC(Vacant Clean)です。つまり、今この瞬間に案内できる部屋はVCだけ。「空室はあるはずなのに案内できる部屋がない」という場面は、VDがVCに変わるタイミングを把握できていないときに起こります。
💡 ここがポイント:チェックアウト直後の部屋は、すべてVDです。そして、清掃が終わって初めてVCになり、販売できます。特に、連泊の少ないホテルでは、この切り替えの速さが当日の販売可能数をそのまま左右します。清掃の手順づくりはホテル客室清掃マニュアルの作り方で解説しています。
Inspected(点検済)を持つPMSもある
清掃のあとに管理者が点検した状態を、Inspected(点検済)として別に持つPMSがあります。その場合は、Dirty(清掃前)、Clean(清掃済・点検待ち)、Inspected(点検済・販売OK)の順に進みます。ただし、Inspectedを設けない施設では、Cleanがそのまま販売可能です。まず、自館のPMSがどちらの方式かを確認してください。
OOOとOOSの違い
OOOとOOSの定義
販売できない部屋を表すステータスには、性質の違う2種類があります。OOO(Out of Order)は、設備の故障・水漏れ・破損といった不具合で売れない状態に使うことが多い用語です。修理が終わるまで販売できません。
一方、OOS(Out of Service)は、部屋自体は使えるのに、運営上の都合で意図的に販売を止めている状態に使うことが多い用語です。たとえば、改装の準備や、繁忙期に備えた予備室などが当てはまります。ただし、2つの区別の軸はPMSや施設で異なります。在庫(分母)に含めるかどうかで分けるPMSもあるため、自館の設定を確かめてください。
| 比較項目 | OOO(Out of Order) | OOS(Out of Service) |
|---|---|---|
| 理由 | 故障・破損・水漏れなどの不具合に使うことが多い | 運営判断による販売停止に使うことが多い |
| 部屋の状態 | 使用不可(要修理) | 使用可能(あえて売らない) |
| OCCの分母 | PMSや施設の設定で異なる | PMSや施設の設定で異なる |
稼働率(OCC)の分母をどう数えるか
稼働率(OCC)は「販売客室数÷販売可能客室数」で求めます。分母の数え方を月ごとに変えると、前月と比べられなくなります。計算の基本はホテルのOCC(客室稼働率)とは?で整理しています。
「OOOの部屋は分母から外すものですか」という質問をよく受けますが、答えは数え方のルール次第です。大事なのは、どちらを選んでも毎月同じ数え方を続けることです。
USALIとPMSでの数え方の違い
国際的な会計基準のUSALIでは、6か月以上続く長期の閉鎖などを除き、故障中や販売停止中の部屋も分母(販売可能客室数)に残して数えます(確認日は2026年11月2日)。運営委託契約でUSALIに沿うと決めている場合は、全室を分母にする数え方に合わせます。一方、OOOを在庫から外して計算するPMSもあります。
観光庁の宿泊旅行統計調査は、客室稼働率を公表しています。なお、最新の2026年9月分(第1次速報)では、全体で62.6%でした(確認日は2026年11月2日)。ただし、統計の数字と自館の月次の数字を並べるときは、分母のルールを確かめてから比べます。
💡 OOOの戻し忘れは、よく起きる機会損失:修理が終わっても戻し忘れて、販売停止のままになっている部屋が出ます。対策として、OOOにした部屋には「いつまでに直すか」「誰が戻すか」をセットで記録し、一覧を定期的に棚卸ししてください。
【ツール】客室ステータス別OCC試算
同じ実績でもOCCの数字が変わる理由
分母の置き方だけで、稼働率は動きます。たとえば、90室の施設が1か月(30日)で2,160室夜を販売したとします。OCCは全室を分母にして80.0%です。さらに、OOOが常時3室、OOSが常時2室あるとします。なお、数字はすべて仮置きです。
販売可能室数を「全室」「OOOを除く」「OOO・OOSを除く」の3通りで数えると、次のとおりです。RevPAR(販売可能客室1室あたり収益)は、ADR(客室平均単価)を8,000円と仮置きして、ADR×OCCで出しました。
| 分母の置き方 | 販売可能室数(月) | OCC | RevPAR |
|---|---|---|---|
| 全室を分母にする(USALIの基本) | 2,700室夜 | 80.0% | 6,400円 |
| OOOを除く | 2,610室夜 | 82.8% | 6,621円 |
| OOO・OOSを除く | 2,550室夜 | 84.7% | 6,776円 |
つまり、販売実績は同じでも、OCCは最大4.7ポイント開きました。そのため、月ごとに分母のルールが違えば、改善したのか数え方が変わっただけなのか、判断できません。RevPARの考え方はRevPARとは?で解説しています。
戻し忘れ1室の機会損失の試算
次に、修理が終わったのにOOOのまま止まっている部屋が1室ある場合です。ADRは同じく8,000円と仮置きします。失う売上は、「満室で予約を断った日」が月に何日あったかで決まります。
| 満室で断った日(月) | 失う売上の目安(1室) |
|---|---|
| 5日 | 40,000円 |
| 10日 | 80,000円 |
| 15日 | 120,000円 |
ただし、空室が残る日は、戻していても売れません。上の金額は、断った日数に限った上限の目安です。
客室ステータス別OCC試算ツール
客室数とOOO・OOSの室数から、OCCとRevPARを3通りの分母で並べます。そこで、自館の数字を入れて、ルールによる差を確かめてください。
失敗パターンと毎月の確認項目
現場で起きる客室ステータスの3つの失敗
客室ステータスの管理ミスは、目に見える事故になりにくいぶん、収益を静かに削ります。よく起きる失敗は、次の3つです。
たとえば、清掃が終わっても入力が遅れ、フロントが「満室」と判断して当日の予約を断ります。実際にはVCの部屋があったのに、その1泊分を取り逃がします。
修理が済んでも戻し忘れた部屋は、売れる状態なのに在庫から外れたままになります。その結果、数日から数週間、「消えた在庫」になります。
さらに、清掃前の部屋へ案内すると、売上より先に口コミ評価を失います。
つまり、3つに共通するのは、ステータスの更新が現場の動きに追いついていない点です。
現場で毎月確認したい3つの数字
「ステータスは整っているか」という聞き方では、現場は動きません。そこで、数字を毎月同じ形に並べると、どこで止まっているかが見えます。
紙と口頭連絡に頼る管理の限界
紙の清掃表やExcel、口頭の連絡で回している施設では、更新の遅れ、転記ミス、ベテラン1人への依存が慢性的に起きます。また、客室数が増えるほど、人力では追いつきません。そこで、清掃端末とPMSをつなぎ、更新が自動でフロントに届く形にするところから始めてください。
PMSごとの表記の違い
客室ステータスの表記が製品ごとに違う理由
客室ステータスの考え方は業界共通でも、PMSの製品ごとに表記は違います。略語で出すもの、日本語のラベルで出すもの、色だけで区別するものがあります。特に、複数施設を運営している場合や、システムを入れ替えたときに、現場が混乱する原因になります。
主な表記パターンの対応イメージ
導入している製品は施設ごとに違うため、代表的な表記パターンをイメージとして整理します。特定のPMSの実例ではなく、実際の略語や色は導入しているPMSで異なります。
| 状態 | 略語表記型 | 日本語ラベル型 | 色分け型の例 |
|---|---|---|---|
| 空室・清掃済(即販売可) | VC | 空室(清掃済) | 緑 |
| 空室・清掃前 | VD | 空室(清掃前) | 黄 |
| 在室(滞在中) | OC/OD | 在室 | 青 |
| 故障・販売不可 | OOO | 故障中 | 赤/グレー |
| 意図的に販売停止 | OOS | 販売停止 | グレー |
自館の表記をこの表に当てはめた対応表を作り、フロント・清掃・予約で共有します。実際、新人教育も、システム入れ替えのときも、混乱がかなり減ります。
PMS選定で確認したい2つのポイント
①ステータスの粒度:Inspectedや清掃中など、細かい状態を持てるか。
②清掃端末との連携:清掃スタッフのモバイル入力が、フロントの画面に即時で反映されるか。
つまり、表記の見やすさより、現場の動きに乗るかどうかが稼働率に響きます。選び方の全体像はホテルPMSの選び方で解説しています。
よくある質問(FAQ)
客室ステータスの用語について
客室ステータスの運用とPMSについて
まとめ:客室ステータス管理は収益管理の土台
客室ステータス管理で押さえたい要点
客室ステータスの管理は、地味でも、稼働率と収益を静かに左右する土台です。在室状況・清掃状況・販売可否の3軸で整理すれば、VC・VD・OOO・OOSの違いは迷わなくなります。なかでも、今売れる部屋であるVCを正確に把握できるかどうかが、販売機会を決めます。そのため、VCの数は毎日確認したい数字です。
一方で、清掃済みなのにVDのまま、修理済みなのにOOOのまま、という誤認は、見えないところで売上を削ります。まず月初にOOO・OOSの一覧を棚卸しして、OCCの分母のルールを1つに決めること。この2点から始めてください。自館の分母の違いは、客室ステータス別OCC試算で数分あれば確認できます。
客室ステータス管理の見直しに取り組みたい方へ
リロホテルソリューションズでは、ステータスの運用ルールづくりから、PMSの選定・連携、稼働率と収益の改善まで、運営支援の専門家が相談を受けています。まずは、いまの管理のどこで止まっているかを整理するところから、一緒に進めます。
【監修者情報】
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。



