コラム

2026.04.07

レベニューマネジメントとは?ホテル・旅館の収益を最大化する価格戦略【最新版】

レベニューマネジメントとは?ホテル・旅館の収益を最大化する価格戦略【最新版】

「稼働はいいのに、なぜか利益が出ない」「競合より安くしているのに予約が伸びない」——こうした悩みは、多くのホテルで共通しています。

原因はシンプルです。"価格の付け方"ではなく、"売り方の設計"ができていないこと。 多くの現場では競合を見て価格を合わせ、弱ければ値下げするという「後追いの価格調整」が行われています。しかしこのやり方では、利益はコントロールできません。

本記事では、レベニューマネジメントの基礎から、ダイナミックプライシングとの違い、RevPARなど主要KPIの活用法、4ステップの導入手順まで、現場で実践できる形で解説します。

📌 この記事でわかること

レベニューマネジメントの基本と、ダイナミックプライシングとの違い
「稼働率は高いのに利益が残らない」構造的な原因と設計の直し方
RevPAR・ADR・OCCの使い分けと、収益を最大化する4ステップの実践法
🎯 この記事はこんな方に向けて書いています
OTA依存の集客から脱却したいホテル・旅館経営者
施策は動かしているが利益が残らない担当者
レベニューマネジメントを体系的に整理したい支配人・販売担当者
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レベニューマネジメントとは

定義

レベニューマネジメント(Revenue Management)とは、過去の販売データや市場動向を分析して将来の需要を予測し、客室の販売価格と在庫をコントロールして収益を最大化する経営手法です。

単に客室を売るのではなく、「誰に・いつ・いくらで・何室売るか」を需要予測に基づいて決定する高度な在庫管理戦略です。目標は売上の最大化にとどまらず、販売経費や変動費も含めた最終利益(GOP)の最大化にあります。顧客セグメントごとの予約時期や滞在期間、追加サービスの利用意向などを分析し、最適な価格と販売制限を設定することで、空室率を抑えながら高い利益を生み出す販売戦略を実行します。

イールドマネジメントとの関係性

この手法は、もともとアメリカの航空業界で座席収益を最大化するために生まれたイールドマネジメント(Yield Management)が起源です。現在のホテル業界では以下のように区別して使われています。

項目 イールドマネジメント レベニューマネジメント
起源 航空業界 イールドマネジメントから発展
焦点 客室など特定の固定在庫の収益 客室+レストラン・宴会場・スパなどホテル全体
目的 主に売上の最大化 コストも含めた最終利益の最大化
位置づけ 戦術的な手法 戦略的・包括的なアプローチ

「トータルの収益管理」の視点が重要視されており、イールドマネジメントはRMの一部を構成する要素と位置づけられます。


ダイナミックプライシングとの違い

混同されやすい2つですが、関係性は「戦略と戦術」です。

項目 レベニューマネジメント(RM) ダイナミックプライシング(DP)
位置づけ 収益管理の戦略全体 価格設定という戦術の一つ
目的 最終的な収益の最大化 需給に合わせた価格最適化
主な要素 需要予測・在庫管理・ターゲット選定・チャネル管理 競合価格の監視・価格の機動的な変動
イメージ 設計図(売り方の全体像) 道具(価格を変動させる手段)

ダイナミックプライシングはRMの中核をなす要素ですが、RMは在庫管理・販売制限・チャネル戦略など価格変動以外の広範な施策を含みます。

両者の組み合わせが重要です。RMが示す需要予測と戦略的設計図に基づき、DPがリアルタイムで価格を変動させることで、需要予測が外れた際の機会損失を最小限に抑え、常に最適な価格で販売し続けられます。

ダイナミックプライシングの詳細は「ダイナミックプライシングとは?仕組みと導入メリットを解説」をご覧ください。


中小規模ホテルにレベニューマネジメントが必要な理由

2種類の機会損失を防ぐ

RMが必要な最大の理由は、以下2つの極端なリスクを同時に管理するためです。

① 利益を取り損ねるリスク
需要が非常に高いにもかかわらず価格を安く据え置き、値上げの機会を逃すこと。

② 売れ残りのリスク
価格設定が高すぎて予約が入らず、需要があったにもかかわらず空室のまま販売期間が終了すること。

ホテルの客室は航空機の座席と同様、当日売れなければ価値がゼロになる「消滅性在庫」です。小売店のように翌日以降へ在庫を持ち越しての販売はできません。RMは需要予測に基づき「適切な価格で・適切な時期に・適切な顧客に」販売し、2つのリスクを同時に管理して経営の安定と収益の最大化を実現します。

「データ経営」への転換

コロナ禍以降のインバウンド需要の急激な変動など、長年の経験則や勘が通用しないイレギュラーな市場環境では、客観的なデータ分析が不可欠です。観光庁の宿泊旅行統計調査では、宿泊施設の稼働率・ADR・RevPARなどの指標を無料で確認でき、自施設のベンチマーク設定に活用できます。

RMの導入でデータに基づく正確な需要予測が可能になれば、客室単価の最適化だけでなく、スタッフ配置や食材仕入れ量の調整などホテル運営全体のコスト削減にも応用できます。最終的には売上から経費を差し引いたGOP(粗営業利益)の向上、本質的な経営改善につながります。

導入のハードルと注意点

  • データ収集・分析の人的コスト:過去の販売データや予約動向、競合価格など多岐にわたるデータを正確に集め分析するには、時間と専門的な知識が必要です。PMSやサイトコントローラーに蓄積されたデータが「眠っている状態」では分析に使えません。
  • 顧客の不公平感への対応:予約時期や販売チャネルによって価格が異なると「あの人は安く泊まれたのに」というクレームのリスクがあります。早期予約特典など価格差に納得感を持たせる設計が重要です。

レベニューマネジメントと主要KPIの関係

RevPAR:最重要指標

RevPAR(Revenue Per Available Room)は、RMで最重要視すべき指標です。

RevPAR = ADR(客室平均単価)× OCC(客室稼働率)

RevPARはOCCとADRの両方のバランスが最適化されているかを示します。単なる安売りによる高稼働(高OCC・低ADR)も、高すぎる価格設定による空室(低OCC・高ADR)も、RevPARには正直に反映されます。RevPARこそが「売り方の質」を評価する羅針盤となる指標です。

よくある誤解:稼働率100%=成功ではない
稼働率100%でも、単価が低ければ利益は最大化されていません。たとえば100室すべて埋まっていても、ADRが5,000円ならRevPARは5,000円です。同じ100室をADR8,000円・OCC75%で販売すればRevPARは6,000円になります。「埋める」より「いくらで埋めるか」が重要です。

ADR:適正化が収益に直結

ADR(Average Daily Rate:客室平均単価)の適正化は収益最大化に直結します。高需要日にはどこまで単価を上げられるかを検討し、安売りを避けて収益を確保します。低需要日でも単価を下げすぎず、魅力的な付加価値を提供することでADRの急激な低下を防げます。「OCCとADRの最適な組み合わせを見つけること」がRMの核心であり、その成果がRevPARの向上として現れます。

OCC:単独では判断しない

OCC(客室稼働率)は重要な指標ですが、単独で成功を判断することは危険です。稼働率100%を達成していても、単に安売りしすぎただけでは収益は最大化されていません。OCCは必ずRevPARとセットで評価しましょう。

3指標の使い分け早見表

指標 主な用途 単独使用の限界
OCC 客室の売れ行き確認 単価の高低を反映しない
ADR 価格戦略の評価 空室の影響を無視
RevPAR 収益性の総合評価 経費・利益は反映しない

RevPARが高くても経費が高ければ利益は出ません。最終的な利益の評価にはGOPDORも合わせて確認し、KPIとして継続的に管理することが重要です。


レベニューマネジメント導入の4ステップ

ステップ1:現状把握とデータ蓄積

RMを始める前に必要なのが、現状の正確な把握とデータの整備・蓄積です。PMSやサイトコントローラーに蓄積されたデータを抽出し、統一された形式で整備することで初めて「使える状態」になります。

リロホテルソリューションズが支援に入る施設では、ほぼ100%「データが使えない状態」からスタートします。PMSに正しい部屋タイプが登録されていない、料金履歴が上書きされて残っていない、OTA別の予約実績が取れていないといったケースは珍しくありません。「分析する前に、まず分析できる状態にする」——この順番を意識するだけで、その後の意思決定の精度が大きく変わります。

ステップ2:需要予測

RMの成功は、正確な需要予測にかかっています。自ホテルの過去データだけでなく、外部要因の徹底的なリサーチが欠かせません。

カテゴリー 具体的な情報源
内部データ 過去の予約実績・キャンセル率・顧客属性・販売チャネル別実績
外部イベント 近隣の祭り・スポーツ大会・コンサート・学会・展示会
競合情報 競合ホテルの販売価格・稼働状況・新規開業情報
季節・天候 繁閑カレンダー・気象予報(特にリゾート地)

これらの情報を総合的に組み合わせることで「いつ・いくらで売るか」という意思決定の精度を高めます。

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ステップ3:販売戦略と価格コントロール

需要予測をもとに「攻めの日(高需要)」と「守りの日(低需要)」を設定し、具体的な価格と在庫をコントロールします。

「需要が高いとわかっていても、値上げして空室が出たら怖い」——この声は支援現場でよく聞きます。しかしデータが示す高需要日に価格を据え置くことは、取れたはずの利益を自ら手放していることと同じです。需要判断チェックリストを活用して、自信を持って価格を動かしましょう。

▲ 高需要日の戦略(攻め)

  • 段階的な価格引き上げ(ブッキングカーブに応じた設定)
  • 早期割引の提供期間を短く設定
  • OTAの在庫を絞り直販を優先

▼ 低需要日の戦略(守り)

  • 早割・連泊プランで早期予約を促進
  • 法人需要・長期滞在プランで安定稼働を確保
  • OTAへの在庫を厚めに配分

キャンセルやノーショウを見越したオーバーブッキング戦略も検討し、機会損失の最小化を図ります。OTAのコスト管理については「OTA手数料を徹底比較!ホテル経営者が知るべきコスト削減と集客戦略」もあわせてご参照ください。

価格調整の実践例(地方ビジネスホテル・60室の場合)

状況 推奨アクション 期待効果
60日前・稼働20% 早割プランを設定(通常比-15%) 早期予約を確保しベースを作る
30日前・稼働50% 早割終了・通常料金に戻す ADRの下落を防ぐ
7日前・稼働70% 通常比+10〜15%に引き上げ RevPARを最大化
前日・稼働90%以上 通常比+20〜30%・OTA在庫を絞る 直前需要を高単価で取る

※施設規模・立地・季節によって数値は異なります。あくまで参考値としてご活用ください。

旅館・1泊2食型施設の場合は設計が異なります
都市型ホテルと異なり、旅館は食材原価が大きく、価格調整が粗利に直結します。単純なADRアップが正解とは限りません。宿泊単体ではなく食事・滞在価値を含めた利益設計が必要です。また部屋・料理・人員がセットで動くため、ホテルより在庫調整の柔軟性が低く、オーバーブッキング戦略は慎重に判断する必要があります。「1泊単価の最大化」ではなく「滞在価値の最大化」という視点が、旅館のRMでは重要です。

ステップ4:効果検証とPDCA

設定した目標(予算・予測)に対して実績がどうだったかを比較する予実管理を実施します。予測と実績にズレが生じた場合は原因を深堀りしましょう。

ズレの主な原因としては、競合ホテルの予期せぬ値下げ・突発的な需要の発生・自身の価格設定ロジックのミスなどが考えられます。分析結果を次の需要予測や価格コントロール戦略にフィードバックし、精度を継続的に高めて収益最大化につなげましょう。

【実例】稼働率は高いのに利益が残らなかったケース
あるシティホテル(55室)では、支援開始前の稼働率は高水準を維持していましたが、その中身は単価の低い団体予約が中心でした。「部屋が埋まっている=好調」と判断していたため、個人・直販の比率改善には手が回らず、忙しいのに利益が残らない状態が続いていました。顧客セグメントの見直しと販売チャネルの最適化により、WEB売上は60%増を達成しています。

RMがうまくいかない施設の共通点
「繁忙期でも値上げすると予約が入らなくなるのでは」「稼働が落ちたら困る」——この不安から値下げを続けた結果、利益が残らない構造が定着してしまうケースが非常に多いです。支援現場で見えてきた失敗パターンには共通点があります。①「売るために下げる」発想から抜けられず、値上げへの心理的抵抗が強い ②現場は稼働を埋めたい・経営は利益を出したい、という方針の分断 ③「感覚の方が当たる」というデータへの不信感 ④最初だけ取り組んで運用が止まる——この4つです。RMは一度設計して終わりではなく、継続運用できる体制づくりが成否を分けます。


利益を伸ばす宿経営術

自社運用か外部委託か:効率的な運用体制の構築

ツール導入による自動化と効率化

手動でのデータ集計・分析には限界があり、人的ミスや時間的コストがボトルネックとなります。レベニューマネジメントシステム(RMS)やAIツールを導入すれば、競合価格・需要予測・最適価格の提示を自動化でき、戦略立案や付加価値の高い業務に時間を割けます。

主なRMSにはPROPERA・レベニューアシスタント(リクルート)・ANDPLUS・メトロエンジンなどがあります。自施設の規模・PMSとの連携可否・サポート体制を比較して選定しましょう。

専門チームによるコンサルティング・アウトソーシング

「ツールを導入しても使いこなせない」「データ分析に基づく戦略立案のノウハウがない」という場合は、専門チームへのコンサルティングやアウトソーシングが有効です。専門家に運用を任せれば、迅速かつ正確にRMサイクルを軌道に乗せられます。外部の客観的な視点が入ることで、自社では気づきにくかった価格設定や販売チャネルの改善点も明確になります。


よくある質問(FAQ)

レベニューマネジメントは大規模ホテルだけのものですか?
規模は問いません。客室数が少ない旅館・民宿でも、需要の高い日に適正価格で販売し、閑散期に早割プランで安定稼働を確保するというRM思考は有効です。ツールを使わない手動運用から始めることもできます。
まずどこから手をつければいいですか?
PMSやサイトコントローラーのデータを引き出し、過去12ヶ月の稼働率と平均単価の推移をグラフ化することから始めてください。「いつが強く、いつが弱いか」の傾向を可視化するだけで、価格設定の見直しポイントが見えてきます。
ダイナミックプライシングを導入するだけで十分ですか?
ダイナミックプライシングはRMの戦術の一つに過ぎません。需要予測・在庫管理・チャネル戦略などの全体戦略がなければ、価格だけを動かしても収益は最大化されません。DPはRMという戦略の中で機能する道具です。
価格を変動させると顧客からクレームが来ませんか?
リスクはありますが設計で軽減できます。「早期予約特典」「会員限定価格」など価格差に納得感を持たせる仕組みを作ることで、不公平感を大幅に解消できます。
効果が出るまでどのくらいかかりますか?
データの整備状況によりますが、本格的な効果が出始めるまで一般的に3〜6ヶ月程度かかります。まず需要の高い繁忙期・イベント時の価格設定の見直しから着手し、早期に効果を実感することをおすすめします。

まとめ

収益を最大化するこの経営戦略は、データと需要予測に基づいて「誰に・いつ・いくらで・何室売るか」をコントロールします。

実践の4つのポイントは以下の通りです。

  • RevPARをKPIの中心に置き、OCCとADRのバランスを最適化する
  • 内部データと外部情報を組み合わせた需要予測の精度を高める
  • 高需要日は攻め・低需要日は守りの価格戦略を使い分ける
  • PDCAを継続して予測精度と収益を改善し続ける

リロホテルソリューションズの支援実績

シティホテル(55室) 旅館(30室)
WEB売上 60%増

・人単価・ADRの内容を大幅改善
・販売戦略をビジネス→ビジネス&ファミリーに見直し
・OTA依存から直販強化へシフト
利益改善 8,800万円

・低稼働リカバリープランの販売強化
・高稼働日の経路制限により自社比改善
・OTAセール対抗プランを公式限定販売

支援施設全体では、3〜6ヶ月でRevPAR15〜30%改善、稼働率+8〜15pt程度の改善が見られます。特にOTA依存度が高い施設ほど改善幅が大きい傾向があります。

レベニューマネジメントの支援からWEB販売戦略の立案・実装・代行まで一貫して対応しています。短期的なトレーニングも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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