コラム

2026.09.14

ロイヤルティプログラムとは?ホテル・旅館の設計5ステップ

ロイヤルティプログラムとは?ホテル・旅館の設計5ステップ

ロイヤルティプログラムとは、繰り返し利用してくれる顧客に特典を提供し、直接予約でのリピートを促す会員制度のことです。特典を豪華にしたのに、会員が増えるほど利益が減るという相談は、支援の現場でも珍しくありません。

この記事では、会員制度の3タイプ、設計の5ステップ、特典ROIの考え方、会員データの活用法をまとめました。直販で浮いた手数料を特典にどう回すかは、仮置きの数字で試算しています。

記事内のリピート率向上ROIシミュレーターを使えば、5項目の入力で、リピート率の改善による年間の増収額と売上ベースのROIを確認できます。

30秒でわかるロイヤルティプログラム(会員制度)

ロイヤルティプログラムとは、宿泊客に特典を提供し、「また選びたい」と思わせて直接予約でのリピートを促す仕組みです。

会員制度は3つのタイプから選ぶ
幅広い客層・頻度重視→ポイント型
高単価・常連重視→ステータス型
長期滞在・近隣リピート→サブスク型

⚠️ 特典は豪華にするほど良いわけではありません。そのため、原価とリピート効果のバランス(ROI:投資対効果)で設計します。効果の目安はリピート率向上ROIシミュレーターで試算できます。

🎯 この記事はこんな方に向けて書いています
既存顧客のリピート率を高めたい経営者・マーケティング担当者
会員制度の新規導入や作り直しを検討している方
OTA(オンライン旅行会社)への依存を減らし、収益を安定させたい方

ロイヤルティプログラムとは?仕組みと必要性

ロイヤルティプログラムの基本とリピーターの価値

繰り返し利用してくれる顧客にポイントや会員特典を提供し、継続的な利用(リピート)を促す仕組みを、ロイヤルティプログラムと呼びます。実際、ホテル・旅館では会員制度やポイントプログラムとして導入され、OTA(Online Travel Agency:オンライン旅行会社)経由ではなく、自社と直接つながる顧客を増やす役割も担います。

なぜ今ロイヤルティプログラムでリピーターを増やすのか

当社の見方では、新規客の獲得は、リピーターの維持より販促費がかかりやすくなります。つまり、OTA手数料が利益を圧迫するなか、自社で直接つながるリピーターを増やすことは、収益構造そのものを改善する打ち手です。また、顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)で捉えると、リピーター1人の価値は、1回きりの新規客とは大きく違います。そのため、直接予約を増やす施策と組み合わせると効果が高く、ホテル公式予約・直接予約を増やす方法も参考になります。

OTAと直販で、手取りはどう違うか(試算)

会員がOTA経由から直販に移った場合を想定し、仮置きの数字で、同じ宿泊単価でも手取りがどう変わるかを見ます。手数料は10%と仮置きし、ここでの手取りは手数料を引いた額なので、変動費は引いていません。

項目OTA経由直販(会員)
宿泊単価50,000円50,000円
手数料(10%と仮置き)▲5,000円0円
手取り(手数料控除後)45,000円50,000円

たとえば、この差額が月100件発生すると、年間では600万円規模の差になる計算です(5,000円×100件×12か月)。ただし、直販側にも決済手数料や特典の原資がかかるので、実際の差はこれより小さくなります。

国内客が伸びにくいなかでの、リピーターの価値

観光庁の宿泊旅行統計調査(確認日は2026年10月29日)によると、2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊(確定値)で、前年比は+0.3%でした。内訳は、日本人が▲2.7%、外国人が+9.4%です。日本人客が減っている以上、すでに来てくれた顧客を再訪につなげる意味は大きくなります。なお、訪日客の動きは日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計で月ごとに確認できます。

「特典が豪華=成功」ではない
よくある誤解が、「特典を豪華にすればリピーターが増える」というものです。実際には、特典のコストが利益を上回ると、会員が増えるほど赤字になります。つまり、成否を分けるのは特典の豪華さではなく、収益とのバランスをとった「設計」です。

会員制度の3タイプ|ポイント・ステータス・サブスク

ロイヤルティプログラムの3タイプは、顧客の再訪動機で選ぶ

ホテル・旅館のロイヤルティプログラムは、大きく3つのタイプに分けられます。それぞれ仕組みもコスト構造も違うため、自施設の規模や顧客層に合うものを選ぶことが第一歩です。

タイプ仕組み向いている施設注意点
ポイント型宿泊金額に応じてポイントを付与し、次回利用で割引・特典に交換幅広い客層・宿泊頻度の高い都市型ホテル付与率が高すぎると原価を圧迫する。失効ルールの設計が重要
ステータス型利用実績で会員ランクが上がり、上位ほど優遇が手厚くなる高単価・リゾート・常連を大切にする旅館ランク基準が緩いと特別感が薄れる。原価のかからない特典設計が鍵
サブスク型月額・年額を支払うと、定額で宿泊や特典が受けられるワーケーション・長期滞在・近隣リピート需要のある施設稼働率が高いと採算が崩れる。利用上限の設計が不可欠

3つのタイプは排他的ではないので、「ポイント型をベースにステータス型を重ねる」といった組み合わせも有効です。そのため、重要なのは、自施設の顧客がどんな動機で再訪するのかを見極めることです。「うちの客層だと、どのタイプが合いますか」という質問をよく受けますが、まずは再訪した顧客の来訪間隔と客単価を並べると、答えが見えてきます。

ロイヤルティプログラム設計5ステップ

ロイヤルティプログラム設計の全体像

思いつきで特典を並べると、うまくいきにくくなります。そこで、次の5ステップを順番に踏むと、収益とのバランスがとれた制度に仕上がります。

STEP内容
1目的とKPI(重要業績評価指標)を1つに絞る(来訪頻度・客単価・直接予約のどれを最優先にするか)
2顧客を分析しターゲットを定める(再訪している顧客の属性・来訪間隔・客単価を分析)
3収益を試算しながら特典を設計する(原価のかからない優遇を軸に、赤字リスクを抑える)
4運用ルールと失効設計を決める(ポイント付与率・有効期限・ランク維持条件を明文化)
5効果測定と改善を回す(KPIを定期測定し、STEP3の特典設計に戻して磨き続ける)

このうち最もつまずきやすいのがSTEP1です。実際、目的が曖昧なまま特典を盛り込むと、コストばかりかさんで効果が分散します。そのため、まずは1つの目的に絞ることが、成功の起点になります。

制度設計で確認したい景品表示法と個人情報

さらに、STEP4の制度設計では、法令面にも注意が必要です。景品表示法では、取引に付随して提供する経済上の利益は景品類として扱われ、総付景品の上限は、取引価額が1,000円以上なら取引価額の10分の2(1,000円未満は200円)です。この上限は消費者庁の景品規制のページで確認できます(確認日は2026年10月29日)。ポイントが値引きとして扱われるか、景品類に当たるかは、自館での利用に限るか、他社と交換できるかなど、仕組みによって判断が分かれるので、専門家に確認してください。

また、会員データでメールを配信するときは、個人情報保護法と特定電子メール法(事前の同意)への対応が必要です。サブスク型で料金を前払いで受け取る場合は、資金決済法の前払式支払手段に当たることもあります。そのため、いずれも設計の段階で専門家に確認してください。

特典設計の落とし穴と特典別ROI

ロイヤルティプログラムの特典は、ROIで評価する

特典を選ぶときは「喜ばれるかどうか」だけでなく、ROI(投資対効果)で評価します。同じ「会員特典」でも、原価のかかり方とリピートの押し上げ効果は、まったく違うので、評価の軸を分けます。次の表の評価は、当社の見方です。「原価ほぼ無」は直接の原価で、清掃の段取りや次の販売機会といった機会費用は含みません。

特典の例原価リピート効果ROI評価
早期チェックイン・レイトチェックアウト・部屋指定ほぼ無中〜高◎ 非常に高い
客室アップグレード低(空室時)高◎ 高い(空室活用が前提)
館内利用券・ウェルカムドリンク中中○ 中程度(館内消費を促す)
宿泊料金の直接値引き高短期的のみ△ 低い(単価低下を招く)

つまり、原価のかからない「体験・優遇系」の特典ほどROIが高く、値引き系はROIが低くなりやすい傾向があります。特に、値引きは客単価を自ら下げるうえ、値引きがないと選ばれない顧客を育ててしまうリスクもあります。

試算:直販で浮いた手数料5,000円を、どう使うか

そこで、先ほどの仮置き(宿泊単価50,000円、OTAなら手数料10%の5,000円)で、直販に誘導して浮いた5,000円を、特典に回した場合を比べます。なお、ポイント還元は5%、値引きは10%と置き、直販側の決済費用は含めません。ポイント還元は、全額が使われる前提です。

特典の設計特典の費用(1予約)浮いた5,000円のうち手元に残る額
A:ポイント還元5%2,500円2,500円
B:宿泊料金10%値引き5,000円0円
C:原価のかからない優遇(レイトチェックアウトなど)ほぼ0円(人件費などは含まず)約5,000円

Bは手数料を丸ごと特典に回すので、OTA経由と手取りが同じになります。直販に誘導する意味が消えてしまうため、特典の費用は、浮いた手数料の範囲内に収める設計にします。

未使用ポイントは「負債」になりうる
未使用のポイントは、会計上、契約負債(従来はポイント引当金)として扱われる場合があります。有効期限・上限・失効条件を設計し、残高を定期的に把握してください。処理は会計士・税理士に確認します。

会員データの活用法

ロイヤルティプログラムで貯まる会員データの3つの価値

ロイヤルティプログラムの本当の価値は、特典そのものより会員データの蓄積と活用にあるため、設計の段階からデータの取り方を決めておきます。OTA経由の予約では、宿側に顧客情報がほとんど残りません。一方、自社会員であれば、来訪履歴・嗜好・連絡先を直接持てます。

活用の視点内容
① 最適タイミングの再訪促進来訪間隔のデータから、「そろそろ次の旅行を考える時期」に合わせて案内を送る
② 嗜好に合わせた提案過去の予約プランや館内利用の傾向から、その顧客が好むプランを優先的に案内する
③ 優良顧客の特定と優遇客単価・来訪頻度から「LTVの高い顧客」を特定し、限られた販促リソースを集中させる

旅館で相性のよい、館内消費に連動するポイント付与

旅館では、温泉の追加湯・マッサージ・体験プランなど、館内消費に連動するポイント付与が特に相性がよいので、客室単価の引き上げとリピート率の向上を同時に狙えます。

ロイヤルティプログラムとシステム連携

PMS(Property Management System:宿泊管理システム)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)と連携し、分析やメール配信を自動化できるため、担当者の負荷を抑えながら精度を保てます。

会員データ活用の関連記事

会員データを軸にした再訪促進の考え方は、リピーターを増やすには?ホテル経営を安定させるためのポイントでも解説しています。価格戦略との連携は、レベニューマネジメントとは?ホテル・旅館の価格戦略もあわせてご覧ください。

ロイヤルティプログラムで毎月見る3つの数字

数字を増やしすぎると続きません。そこで、次の3つを、毎月同じ形式で記録するところから始めてください。

直販に占める会員の比率:会員制度が直接予約の増加につながっているかを見ます。比率が伸びないときは、特典か登録導線に原因があるため、見直します。
会員の再訪間隔:平均の間隔より長く空いている会員は、再訪が遠のいているので、案内を送る対象です。
ポイント残高:未使用ポイントの総額を、月ごとに並べます。つまり、残高が膨らむ月は、有効期限と交換条件を見直すサインです。

【ツール】リピート率向上ROIシミュレーター

リピート率の改善で、年間いくら増えるか

現在のリピート率を改善できたとき、年間でどれだけ増収するかを試算します。なお、ここでのリピート率は、年間の延べ宿泊客数のうち、2回目以降の利用が占める割合です。自館のCRMの来訪回数から、人泊ベースで出した値を入れてください。新規客の人泊数は減らない前提で、リピート率が上がった分を追加の宿泊として計算します。

💰 リピート率向上ROIシミュレーター
5項目すべてに入力して「計算する」を押してください。年間宿泊客数・客単価・現在と目標のリピート率・年間運用コストを入れます。結果は売上ベースで、手数料や変動費は引いていません。

失敗パターンとうまくいく設計

ロイヤルティプログラムでありがちな失敗パターン

失敗パターン典型的な症状
特典が魅力的すぎて赤字化高いポイント還元や大幅値引きを設定し、会員が増えるほど利益が減る
目的が曖昧で効果が分散「とりあえず作る」で始め、頻度・単価・直販のどれも動かない
会員登録のハードルが高すぎる入力項目が多く、特典も分かりにくいため、そもそも会員が集まらない
失効ルールがなく負債が膨張有効期限を設けずポイントを積み上げ、将来まとめて費用化する
作って終わりで効果測定をしないKPIを測らず特典も見直さないまま、コストだけが続く

うまくいく設計に共通する、設計上の3つの原則

原価のかからない特典を軸にする:レイトチェックアウトや部屋指定などの優遇なら、客単価を落とさずにリピートの理由をつくれるので、費用も抑えられます。
直販の手数料削減分を、特典の原資にする:会員限定の料金や特典の費用は、浮いた手数料の範囲内に収めるので、直販の手取りが守られます。
来訪間隔や嗜好のデータで、案内を絞る:一律のばらまきは反応が薄くなりやすいので、再訪しそうな時期の会員に、好みに合う提案をします。

うまくいく施設は、特典の豪華さではなく、顧客のデータを見て設計しています。

内製の限界とプロの使いどころ

ロイヤルティプログラムを自社だけで運用する難しさ

ロイヤルティプログラムは「設計して終わり」ではなく、データを見ながら継続的に改善し続けて初めて成果が出ます。しかし、この継続運用こそが、内製の最大の壁になります。

⚠️ 内製対応の限界
会員データはあるのに、分析する人手とスキルが足りないため、放置される
ROIを試算しないまま特典を据え置くので、赤字の特典に気づけない
担当者の感覚で運用されるため、退職・異動でノウハウが失われる

内製と専門家の使いどころ

具体的には、専門家は、データ分析の基盤、特典ROIの設計力、CRMやMA(Marketing Automation:マーケティング自動化)ツールの運用を組み合わせ、データで回し続けて成果を出すところまで踏み込みます。ただし、すべてを外部に委ねる必要はありません。たとえば、設計の初期段階だけ専門家の知見を借りる、といった部分的な活用も有効です。

よくある質問(FAQ)

ロイヤルティプログラムの制度設計についての質問

ロイヤルティプログラムは小規模な施設でも導入できますか? ▼
A. 導入できます。ただし客室数が少ない施設では、ポイントシステムのような大がかりな仕組みより、原価のかからない優遇(部屋指定・レイトチェックアウト・手書きメッセージなど)を軸にした、シンプルな常連優遇から始めるのが現実的です。
ポイント型・ステータス型・サブスク型のどれを選べばよいですか? ▼
A. 自施設の顧客がどの動機で再訪するかで選びます。価格を重視する幅広い客層にはポイント型、特別扱いを喜ぶ高単価・常連層にはステータス型、近隣リピートや長期滞在の需要にはサブスク型が向きます。ただし、1つに絞らず、組み合わせるのも有効です。
特典はどのくらい豪華にすべきですか? ▼
A. 豪華さよりROI(投資対効果)で判断します。原価のかからない優遇はROIが高く、宿泊料金の直接値引きは低くなりやすい傾向があります。特典の費用は、直販で浮いた手数料の範囲内に収めてください。

ロイヤルティプログラムの運用についての質問

リピート率を上げると収益はどれくらい変わりますか? ▼
A. 条件によって変わります。たとえば、年間1万人泊・客単価12,000円の施設で、リピート率が20%から25%へ上がり、新規客の人泊は減らないと仮定すると、追加は約667人泊、売上ベースで約800万円です。手数料や変動費は引いていないので、手残りは別に確認します。記事内のシミュレーターで、自施設の数字に置き換えて試算できます。
ポイントの有効期限は設定すべきですか? ▼
A. 設定をおすすめします。未使用ポイントは会計上、契約負債(従来はポイント引当金)として扱われる場合があり、有効期限がないと費用が膨らみます。他社のポイントや物品と交換できる仕組みなど、景品類に当たるおそれがある場合は、専門家に確認してください。

まとめ:リピーターは設計で育てる

ロイヤルティプログラムの要点と次の一手

ロイヤルティプログラムの成否は、特典の豪華さではなく「設計」で決まります。当社の見方では、新規客の獲得にはリピーターの維持より販促費がかかりやすいなか、自社と直接つながるリピーターを増やすことは、OTA手数料に圧迫されない収益構造への転換そのものです。

会員制度はポイント型・ステータス型・サブスク型の3タイプに大別でき、自施設の規模と顧客層に合わせて選びます。また、設計は「目的を1つに絞る→顧客を分析→収益を試算して特典を設計→運用ルールと失効設計→効果測定と改善」の5ステップで進めます。特に、会員制度の真価は、特典そのものより、来訪間隔や嗜好といった顧客データを蓄積し、最適なタイミングで再訪を促せることにあります。

まずは自施設の顧客がどんな動機で再訪するのかを見極め、リピート率向上ROIシミュレーターで収益への影響を試算するところから始めてください。また、株式会社リロホテルソリューションズでは、ロイヤルティプログラムの設計から、会員データの分析・活用、直接予約の強化、リピート率の改善まで一貫して支援しています。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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