コラム

2026.05.14

ホテル業界のM&A最新動向|事業承継・再生・新規参入で押さえるべき実務ポイント

ホテル業界のM&A最新動向|事業承継・再生・新規参入で押さえるべき実務ポイント

「後継者がいない」「設備投資が追いつかない」「このまま単独経営を続けるべきか不安」——。
ホテル・旅館業界では、こうした課題を背景にM&Aによる事業承継や再生が急増しています。

近年は国内外の投資家や異業種企業の参入も活発化しており、M&Aは単なる売却ではなく、“経営改善”や“成長戦略”として活用されるケースも増えています。

この記事では、ホテルM&Aの最新動向や成功のポイント、失敗しないための注意点を、宿泊業界の実例を交えながら解説します。

ホテルM&A完全ガイド|事業承継・新規参入の動向・注意点・流れを解説

📌 この記事でわかること

ホテル・旅館業界が直面する後継者不足・老朽化・人手不足の構造的課題
M&Aが活発化している理由と、買収・売却それぞれの具体的なメリット・注意点
成約までの6ステップと、失敗しやすいポイント
事業承継の危険度を自己診断できるツール(約2分)
🎯 この記事はこんな方に向けて書いています
後継者がおらず、宿泊施設の売却・承継を検討しているオーナー・経営者
M&Aで宿泊業に新規参入したい投資家・異業種の経営者
ホテル・旅館のM&A動向を体系的に把握したい支配人・財務担当者
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ホテル・旅館業界の現状と課題

回復基調の市場規模

ホテル・旅館業界はコロナ禍で大きな打撃を受けた。しかし現在は力強い回復軌道を描いている。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、日本人延べ宿泊者数は2023年7〜9月期にコロナ前2019年比で約9割まで回復した。さらにJNTO(日本政府観光局)の発表では、2025年3月の訪日外国人客数が単月で3,400万人を超え、コロナ前を上回る過去最高水準を更新している。

📊 市場規模:回復のポイント

指標 2019年比 傾向
日本人宿泊者数(2023年Q3) 約90% 回復中 📈
訪日外国人客数(2025年3月) 100%超 過去最高 🔥
国内ワーケーション需要 増加傾向 認知度向上 📈

参照:宿泊旅行統計調査|観光庁訪日外客統計|JNTO

業界が抱える3つの構造的課題

市場の回復とは裏腹に、ホテル・旅館業界は深刻な構造問題を抱えている。この3つの課題こそが、M&Aを加速させている根本的な背景だ。

① 後継者不足

中小規模の旅館・ホテルオーナーの平均年齢は60代以上が多数を占める。後継者候補がいない施設が全体の約6割にのぼるとも言われており、廃業か売却かの二択を迫られるケースが急増している。

② 老朽化と設備投資

多くの施設で建築から30年以上が経過し、耐震補強・バリアフリー化・空調更新などの改修費が経営を圧迫している。単独での資金調達が困難なため、M&Aによる資本注入が現実的な選択肢となっている。

③ 慢性的な人手不足

少子高齢化と賃金停滞が若年層の業界離れを加速させている。ホスピタリティ業界の有効求人倍率は全業種平均を大きく上回り、スタッフ不足が客室稼働率と顧客満足度の双方を下押ししている。

⚠️ 「廃業より承継」——放置コストの実態
後継者不在のまま廃業を選んだ場合、地域経済への影響だけでなく、長年培ってきた顧客基盤・ブランド・雇用がすべて消滅する。一方でM&Aによる事業承継を選べば、従業員の雇用継続・地域への価値提供・創業者利益の回収という三方良しの結果を得られる。


ホテルM&Aの最新動向

M&A件数は増加の一途

コロナ禍を契機に、ホテル・旅館業界のM&Aは急激に活発化した。感染症による宿泊者激減で資金繰りが悪化した施設が売却を決断する一方、資本力のある企業が成長戦略として買収を進めた結果、業界再編が加速している。老舗旅館の事業承継や地方物件の取得・リブランドなど、多様な形のM&Aが進行している。

買い手の多様化:同業だけではない

以前は同業ホテルチェーンによる規模拡大が主流だった。しかし現在は異業種・投資ファンド・海外企業など買い手が多様化し、それぞれ異なる戦略目的でM&Aを活用している。

買い手の種類 主な目的 代表的な動き
同業ホテルチェーン 規模拡大・ブランド力強化 アパグループなど大手の積極買収
異業種(不動産・小売) 本業とのシナジー創出 三菱地所によるホテル事業参入など
投資ファンド 収益性向上・再生売却 Blackstoneによる近鉄系ホテル取得
アジア系海外企業 インバウンド需要の取り込み 日本の観光資産を国際ブランドで再生

M&Aの目的も多様化している

事業承継の手段に留まらず、M&Aは多角的な経営戦略ツールとして活用が広がっている。デジタルノウハウを持つ企業の買収によるWebマーケティング力の強化、人材確保、民泊・OTAシステムのプラットフォーム強化など、目的の幅が急速に広がっている。これはホテル業界が「運営力・テクノロジー・ブランド」を複合的に競う時代に入ったことの証左だ。


売却側・買収側のメリットと注意点

売却側のメリット

✅ 売却して得られる主な効果

後継者問題の根本解決——廃業リスクなく事業を次世代へ継承できる
従業員の雇用継続——長年支えてきたスタッフの生活を守れる
創業者利益の確保——売却資金をリタイア後の生活費・新規事業資金に充当できる
経営資源の集中——多角化していた場合、売却でコア事業に資源を集約できる

売却側の注意点

⚠️ 売却前に整備すべき3点

財務・法務・契約関係の情報整理を徹底し、正確なデータを準備する
旅館業法などの許認可の確実な引き継ぎを事前に確認する
条件交渉・税務対策はM&A仲介会社・弁護士・会計士などの専門家に依頼する

買収側のメリット

✅ 買収で得られる主な効果

ゼロからの立ち上げより効率的・迅速に事業を取得できる
立地・設備・運営ノウハウ・即戦力人材を一度に獲得できる
複数施設運営でスケールメリットを享受し、仕入れ・販促コストを削減できる
新地域・新顧客層へのスピーディーな参入が実現できる

買収側の注意点

⚠️ 買収後に失敗しやすい3つのポイント

デューデリジェンスの甘さ:簿外債務・許認可の欠如・老朽設備の見落としが後から経営を直撃する
シナジーの過大評価:期待していた相乗効果が実現せず、事業計画が崩れるケースが多い
PMI(統合プロセス)の軽視:組織文化・システム・人事制度の融合には時間と労力がかかる。このプロセスを怠ると経営上の大きな負担となる

売買双方に共通する注意点

株式譲渡か事業譲渡かというM&Aの手法の違いにより、手続きや税務リスクの所在が大きく変わる。売却側と買収側で認識の差異が生じやすいポイントであるため、早期に専門家を交えてすり合わせることが不可欠だ。また旅館業法に基づく許認可の引き継ぎ、温泉権の有無、従業員の同意取得なども宿泊業特有の確認事項として必ず押さえておく。


M&Aの大まかな流れ(6ステップ)

承継スケジュール表:全体像を把握する

ホテル・旅館M&Aは一般的に6〜18ヶ月かかる。各ステップの目安期間とチェックポイントを押さえることで、準備の抜け漏れを防げる。

📋 M&A承継スケジュール表
売却・買収どちらの立場かを選択すると、各ステップのポイントが切り替わります。

ホテル・旅館M&A事例紹介

①【異業種参入】三菱地所×ロイヤルパークホテルズ

概要

不動産大手の三菱地所が、ホテル事業の運営力強化と経営資源の効率配分を目的に、グループ傘下の三菱地所ホテルズ&リゾーツ(ロイヤルパークホテルズを経営)を完全子会社化したケース。

項目内容
手法株式交換(簡易株式交換)
背景親会社の三菱地所が既に54.4%保有→完全子会社化で意思決定を一本化
ポイント株主総会承認不要で手続き完了。異業種参入ではなくグループ内再編型

②【同業再編】ブリーズベイホテル×ホテル小田急静岡

概要

小田急電鉄が事業環境の変化と業績低迷を理由に「ホテルセンチュリー静岡」の全株式(94.72%)を売却したケース。買収側はホテルの買収・再生を専門とするブリーズベイホテル。

項目内容
手法株式譲渡
背景成長見込みなしと判断した親会社が売却を決断
ポイント買収側は再生専門会社。施設の立て直しにノウハウを持つ買い手との組み合わせが成功要因

③【事業承継・再生】HMIホテルグループ×ホテル三日月

概要

コロナ禍で利用客が激減し、老朽化対応資金の調達も困難になったホテル三日月グループが、コロナ後の需要回復をにらむHMIホテルグループに承継したケース。

項目内容
手法事業承継
結果「三日月」ブランド継続・従業員雇用維持を実現
ポイント地元に根付いたブランドを守りながら経営権を移転できた承継成功例

④【ファンド主導】Blackstone×近鉄グループ系ホテル

概要

米大手投資ファンドのBlackstoneが近鉄不動産からホテルを取得し、売却後は近鉄側が運営受託するという「売却+運営委託」の複合型スキーム。

項目内容
手法資産売却+運営委託(セール&リースバック的構造)
背景コロナによるコスト削減・運営体制見直しが売却の動機
ポイント資産は手放すが運営を継続できる。資金繰り改善と運営継続の両立が可能なスキーム
利益を伸ばす宿経営術

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よくある質問(FAQ)

ホテルM&A・事業承継に関するよくある疑問

M&Aと廃業、どちらを選ぶべきですか?
A. 後継者問題や経営難が理由であれば、まずM&Aによる事業継続を検討すべきです。廃業は従業員の雇用消滅・顧客基盤の喪失・創業者利益の放棄を意味します。一方でM&Aは、売却資金の取得・雇用継続・ブランド存続という三方良しを実現できる手段です。施設の状態や財務状況によって選択肢は変わるため、まず専門家に相談して自施設の市場価値を確認することをおすすめします。
M&Aにかかる費用はどれくらいですか?
A. 仲介手数料・デューデリジェンス費用・法務費用などが主なコストです。仲介手数料は成功報酬型が多く、売買金額の3〜5%程度が目安です。ただし案件規模や仲介会社によって大きく異なります。初期相談は無料の会社が多いため、まず相談ベースで進めて費用感を確認するのが現実的な進め方です。
売却価格はどうやって決まりますか?
A. 主にEBITDA倍率(営業利益ベースの企業価値算定)・純資産評価・収益還元法などで算定されます。ホテル・旅館の場合は不動産価値(土地・建物)も大きく影響します。また温泉権・旅館ブランド・客室稼働率・OTA評価なども加味されるため、一般的な事業売却より算定要素が複雑です。正確な評価にはホテル業界に精通した専門家への依頼が必要です。
M&A後、従業員の雇用は守られますか?
A. 多くのケースでは、M&A後の雇用継続が条件として契約に盛り込まれます。ただし保証期間や条件は交渉次第です。HMIホテルグループによるホテル三日月の承継事例のように、「従業員雇用を維持する」と明示して成約に至るケースも多くあります。売却側は交渉段階で従業員の処遇を明確にすることが重要です。
赤字の旅館・ホテルでも売却できますか?
A. 売却できる可能性は十分にあります。買い手がリブランド・リノベーションによる再生を前提に買収するケースは多くあります。特に立地が良い・施設規模が一定以上ある・温泉施設などの差別化資産を持つ場合は、赤字でも高い評価を受けやすいです。リロホテルソリューションズでは「90日で黒字化」を掲げた再生支援のノウハウがあり、承継後の立て直しまで一貫してサポートします。
M&A成立までどのくらいの期間がかかりますか?
A. 一般的に6ヶ月〜18ヶ月程度です。事前準備の充実度・相手先の選定スピード・デューデリジェンスの規模によって大きく変わります。売却側が財務情報・法務情報を事前に整備しておくことで、プロセスを大幅に短縮できます。早期に専門家に相談し、準備を並行して進めることが成約スピードに直結します。

まとめ:M&Aは「廃業」でも「現状維持」でもない第三の選択肢

ホテル・旅館業界はコロナ禍からの回復基調にありながら、後継者不足・老朽化・人手不足という構造的な課題を抱えている。こうした課題に直面した施設が増えている今、M&Aは「廃業でも現状維持でもない第三の選択肢」として急速に存在感を高めている。

M&Aを成功させる2つの大前提

事前準備の徹底:売却側は財務・法務・許認可情報を整備し、買収側はM&Aの戦略的意図と求める施設の基準を明確にする
専門家の活用:条件交渉・デューデリジェンス・税務・PMIは自社のみでの完結が困難。経験豊富な専門家のサポートが成否を分ける

リロホテルソリューションズは「90日で黒字化」を合言葉に、40施設以上のリゾート地・過疎地宿泊施設の再生に取り組んできた宿泊業のプロ集団だ。単なるM&A仲介にとどまらず、承継後の運営立て直し・売上改善・DX化まで一貫してサポートする。M&Aを検討している投資家への収支予測支援も提供している。

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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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