コラム

2025.12.12

GOPとは?ホテル経営を変える“本当の利益率”の見方と改善方法

GOPとは?ホテル経営を変える“本当の利益率”の見方と改善方法

「売上は戻ってきたのに、なぜか利益が残らない」そんな悩みを抱えるホテル経営者は少なくありません。特に、近年は人件費やエネルギーコストが上昇し、売上高(Top line)だけを追っても経営の健全性を判断しにくい状況です。

そこで注目すべき指標が、ホテルならではの本当の利益率を示すGOPです。本記事では、GOPの正しい意味と計算方法、業態ごとの適正な目安、そして、すぐに実務に生かせる改善の視点をわかりやすく解説します。経営のボトルネックを把握し、利益を生み出す構造を理解して、経営に役立てるヒントを得てください。

ホテル経営におけるGOPとは?

GOP(Gross Operating Profit)は、ホテル運営の収益性を測る中心的な指標です。宿泊・料飲・館内サービスなど、運営によって得られた利益を「本業部分だけ」で可視化できる点が特徴で、総支配人や経営層が日々のマネジメント判断に使う重要な数値です。

  • GOPの定義
  • GOPと一般企業の営業利益の違い
  • ホテル経営におけるGOPの役割

順に解説します。

GOPの定義

GOPとは「営業総利益(Gross Operating Profit)」のことで、ホテルが運営によって得た収益から、変動費・人件費・営業に直接関係する経費を差し引いた利益のことです。客室部門、料飲部門、スパや宴会など、各部門の稼働状況やコスト効率がそのまま反映されるため、運営の実力が最もわかりやすく表れます。

ホテルの収支は、売上の変動が激しく固定費も大きい構造ですが、GOPの把握により、「どの部門が利益を押し上げているか」「どこが重荷になっているか」が明確になります。GOPは、日々の改善や戦略立案の基盤として不可欠な指標です。

GOPと一般企業の営業利益の違い

一般企業における損益計算(P/L)上の「営業利益」は、売上から売上原価・販管費・減価償却費・地代や家賃などを差し引いた「本業の最終利益」を表します。一方でホテルのGOPは、減価償却費や家賃など、所有・投資に紐づく費用を含めない点が大きな違いです。

ホテル業界では「運営(オペレーション)」と「所有(アセット)」が分離しているケースが多く、運営事業者がコントロールできるのは、販売力・稼働・人件費・サービス効率などの領域です。そのため、運営側の実力を正しく測るには、投資要素を排除したGOPが最適で、マネジメント判断の中心として扱われています。

ホテル経営におけるGOPの役割

GOPは、ホテルの「運営効率」「収益構造」「戦略の的中度」を判断する軸となる指標です。OCC・ADR・RevPARなどの売上関連KPIはもちろん重要ですが、それらが最終的にどれだけ利益に結びついたかを示すのがGOPです。

総支配人や経営者は、GOPを見ることで「稼働を上げるべきか」「単価を上げるべきか」「コストを削るべきか」といった改善の方向性を判断できます。また、部門別GOPを比較すると収益性が高いサービスや、負荷が大きい業務も把握できます

収益改善の最適な方法を検討するうえで、GOPは欠かせない指標です。

GOPと関連指標の関係性

GOPは重要な指標ですが、単独で見ても経営改善は進みません。ADR・OCC・RevPARなど、売上を構成するKPIとの関係性を理解することで、どこを改善すべきかが明確になります。

  • ADR(客室単価)
  • OCC(客室稼働率)
  • RevPAR
  • リピート率

以下で順に確認していきます。

ADR(客室単価)

ADRは「1室あたりの平均販売単価」を示し、GOPを押し上げる最もわかりやすい要素です。単価が上がれば、その分だけ売上総利益も増加し、運営に回せる原資が増えます。

特に人件費や清掃費など、客室数に比例して発生する変動費は、売上単価が変わっても大きく変動しないため、客室単価向上の収益改善効果は非常に大きいです。値上げだけでなく、付加価値のあるプラン設計やアップセル施策により、無理のない範囲でADRを引き上げることがGOP改善の近道になります。

【関連記事】ホテルのADRとは?計算方法から収益を最大化する活用法まで徹底解説!

OCC(客室稼働率)

OCCは「客室がどれだけ販売されたか」を示す指標で、固定費回収の観点でGOPと密接に関係します。ホテルは固定費の割合が高く、一定以上の稼働が確保できないと利益が圧迫されやすい構造になっています。

稼働率が低い状態では、単価を上げてもGOPが伸びにくいため、需要予測に基づく価格調整や販路の最適化による基礎稼働の確保が重要です。OCCはGOPを支える土台といえるでしょう。

【関連記事】ホテルの稼働率(OCC)とは?経営成功の鍵となる稼働率向上のポイントを解説!

RevPAR

RevPARは「販売可能客室1室あたりの収益」を表し、GOPとの相関が最も強い指標です。RevPARは「OCC×ADR」で決まるため、単価と稼働の両面で改善が進むとGOPも大きく上昇します。

売上と稼働のバランスを最もよく反映するKPIであり、日々の販売戦略の結果がわかる実戦的な数値です。RevPARが改善するほど、運営効率が高まり、ホテルの収益構造が安定していきます。

【関連記事】RevPAR(レブパー)とは?ホテル経営の収益力を測る指標を徹底解説!

またホテル経営では、客室単価や稼働率に加えて「DOR(同伴係数)」もKPIの1つとなります。詳しい情報は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】DORとは?宿泊業の収益を左右する“1室あたり平均人数”の考え方

リピート率

リピート率は「再訪してくれる顧客の割合」を示し、GOPに間接的ながら大きく貢献する指標です。リピーターが増えると、新規顧客獲得にかかる広告費やOTA手数料を抑えながら売上を維持でき、粗利率が改善します。

また、口コミや紹介によって追加の集客効果も期待できるため、結果的にOCCとRevPARの底上げにもつながります。マーケティング効率を高めるうえで、リピート率の管理は欠かせません。

業態別の平均GOPはどれくらい?

GOP率は、ホテルの「健康状態」を示す重要な指標ですが、適正値は業態によって大きく異なります。まずはビジネス、リゾート、旅館などタイプごとの傾向を理解し、自社ホテルの位置づけの把握をしましょう。

業態によりGOPの“基準値”は異なる

ホテルのGOP率には、業態別に明確な差があります。客室中心の運営か、飲食などの付帯サービスが多いかによって構造が変わるため、同じ利益率を比べても前提が全く異なるからです。

まずは、下記の一般的な目安を確認し、自社のホテルがどの水準に位置しているかを把握することが重要です。

業態一般的なGOPの目安特徴
ビジネスホテル40~60%・客室収益中心で効率が高く、利益が出やすい・人件費比率も低い
リゾートホテル20~40%施設が広くサービス種類が多いため、固定費・人件費が重くなりやすい
シティホテル10~30%・客室に加えて「料飲・宴会」の比率が高く、原価率・人件費率が上がりやすい・施設規模も比較的大きく、固定費がかさむ点もGOPが伸びにくい要因
旅館5~15%料飲や温浴など運営負荷が大きいサービスが多く、利益率は低めだが客単価は高い

このように、業態によって利益を出しやすい構造が異なるため、自社のホテルをどの水準と比較するかを見極めることが重要です。

※GOP率は、会計基準やホテルの構造によって変動します。上記は一般的な運営GOPの目安です。

平均GOPと自ホテルを比較すべき理由

平均GOPを把握すると、自社のホテルが「適正な利益を出せているのか」を客観的に判断できます。稼働・単価は良くてもGOPが低い場合、コスト構造や業務効率に課題があるなどの可能性が見えてきます。

改善の方向性を決めるための確かな基準となるのが、業態別GOPとの比較です。

GOPで自ホテルの課題を可視化・改善する

GOPを算出すると、自社ホテルの収益構造がどこで止まっているのかが明確になります。売上側・コスト側の両面を分解し、改善すべきポイントを特定することで、限られたリソースでも大きな成果が得られます。

GOPの算出方法

GOPは「営業収入−営業費用」で求めるシンプルな指標ですが、その中身の正しい理解が重要です。営業収入には、客室売上・料飲売上・宴会・スパなど、ホテル運営によって得られるすべての収入が含まれます。

一方、営業費用に含まれるのは、人件費・材料費・水光熱費・クリーニング費・広告宣伝費など、日々の運営に必要な経費です。

重要なのは、GOPには「所有・投資に関わる費用が含まれない」という点です。具体的には、固定資産税・減価償却費・賃料・金利などは計算対象外となり、あくまで「運営の実力」を純粋に測るための利益指標として扱われます。

この構造を整理することで、自社ホテルのGOPの位置づけを正確に把握できるようになるでしょう。

GOP算出後に見るべき「売上側の課題」

GOPを算出したら、まず売上構造のどこに伸び悩みがあるかを確認します。客室部門の収益が弱い場合、単価(ADR)が適正か、競合と比較してポジションがずれていないかのチェックが必要です。

また、集客導線に偏りがあるケースも多く、OTA依存が進んでいると手数料率が重く、利益率の低下につながります。直販率が低いホテルは、まずここを改善するだけでもGOPが大きく改善するのが一般的です。

稼働率(OCC)の変動も売上側の主要課題です。季節変動・平日週末の差・曜日ごとの稼働傾向を分析し、「需要が取れていない日」に集中して施策を打つと、効率的に売上を積み上げられます。

改善の方向性としては、価格戦略の再設計、需要期・閑散期のダイナミックプライシング、魅力的なプラン設計(カップル・ファミリー向け)などが挙げられます。どの指標に課題があるのかを分解して確認することで、利益向上に向けた最適な打ち手が明確になるでしょう。

GOP算出後に見るべき「コスト側の課題」

売上側の改善と並行して、コスト構造も必ず可視化します。営業費用の中で比率が高い経費は、主に次の4点です。

  1. 人件費
  2. 材料費
  3. 水光熱
  4. 委託業務費など

部門別にどの費用が重いのかを洗い出し、「費用は発生しているのに利益貢献が弱い部門」があれば、優先的に改善する必要があります。

また、よくあるムダとしては、主に下記の5点が挙げられます。

  1. 清掃委託費の生産性低下
  2. シフトの過剰配置
  3. 食材ロス
  4. 仕入れ単価の改善余地
  5. エネルギー管理の不徹底など

これらは日常運営の中で見落とされがちですが、改善すれば速やかにGOPに反映される領域です。

また、売上とコストの相関を理解することもポイントです。たとえば、売上に比例してコストも増える構造は健全とはいえません。逆に売上が多少落ちたとしても、利益率を維持できる体制が理想です。

こうした視点で「どの費用を先に改善すべきか」を決めると、無理のないGOP向上につながります。

GOP向上は「売上改善」+「コスト改善」の両輪で行う

GOPを最大化するには、売上側とコスト側の両方からのアプローチが欠かせません。短期的に効果が出やすいのは、下記の5項目です。

  1. 販売チャネルの比率調整(直販率アップ)
  2. ADRの最適化
  3. ダイナミックプライシング
  4. 料飲(F&B)部門のメニュー構成比の見直し
  5. 繁閑に応じた清掃・シフトの調整など

また、上記に加えて、エネルギーコストの低減も効果が表れやすい施策です。

中長期的には、顧客満足度の向上によるリピート率アップ、業務効率化やDXによる生産性改善が大きな効果を生みます。具体的な施策は下記の通りです。

  1. 予約管理システムの統合
  2. チェックイン業務の簡略化
  3. 業務フローの見直しなど

売上とコストの両面から改善を進めることで、GOPの底上げが継続的に行えるようになり、結果としてホテル全体の収益基盤が安定していきます。

GOP改善はリロホテルソリューションズに相談を

GOPを高めるには、販売・運営・人員配置・コスト管理など、複数の要素を一体的に最適化する必要があります。しかし、日々のオペレーションを抱える中小ホテルでは、課題の優先順位を判断したり、改善策を体系的に進めたりするのが難しいケースも少なくありません。

リロホテルソリューションズでは、全国のホテル・旅館の運営支援で培ったデータと知見をもとに、「どこを改善すればGOPが最も伸びるのか」を可視化し、現場で実行できるレベルまで落とし込んだ戦略を伴走型で提供しています。

直販率の向上、販売単価の最適化、人件費・清掃・エネルギーのコスト改善など、ホテルごとに異なる課題に合わせて具体的な施策を提案できる点も強みです。収益改善を加速させたい場合は、一度ご相談いただくことで、新たな打開策を見いだせる可能性があります。

まとめ

GOPは、ホテルの収益構造を最もわかりやすく示す指標です。売上とコストを分解して分析することで、自館のどこに改善余地があるのかが明確になり、限られたリソースでも、効果的な経営判断が可能になります。

また、課題は客室の単価戦略・稼働率・直販率から、人件費やエネルギーコストまで多岐にわたり、体系的に進めるには専門的な視点が欠かせません。
収益改善をスピーディに進めたい場合は、運営支援に強みを持つリロホテルソリューションズへご相談ください。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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