(スタッフブログ)収益改善の現場事例|利益が残らない3つの場面
こんにちは、運営受託担当のTでございます。
売上は戻っているのに、月末に手元へ残るお金が増えない。収益改善の相談で、いちばんよく聞く悩みです。
複数の宿泊施設の現場に関わるなかで見てきた収益改善の場面を、施設が特定できない形で3つにまとめました。
「収益改善の現場事例」を読む前に
先にお断りです。ただ、事例といっても、特定の施設の成果や実績の数字を載せるものではありません。複数の現場で繰り返し見た場面を組み合わせ、施設が分からない形にまとめました。また、本文の数字は、すべて仮の数字です。
それでも、収益改善の相談に乗るたびに「あの施設と同じだ」と感じる場面があります。そこで、その共通点を書き留めておくことにしました。
収益改善は「大きな施策」より「数字の見方」から動く
ホテルの収益改善というと、新しい販促や単価の引き上げのような、大きな施策を思い浮かべるかもしれません。もちろん、それも大切です。ただ、実際に現場へ入ってみると、最初に動いたのは数字の見方だったという場面が多くありました。
実際、ここから紹介する3つの場面は、どれも特別な施策から始まったわけではありません。つまり、数字の並べ方を変えたところが出発点でした。
場面1:売上は伸びたのに、利益が残らない
月報では売上が前年を上回り、「好調」と報告されていました。ところが、オーナーへの報告のたびに「それで、利益はどうなの?」と聞かれ、支配人が答えに詰まってしまう。実際、この状態は、決して珍しくありません。
費用を前年同月と並べると
そこで私が最初にお願いしたのは、売上ではなく費用を、前年同月と項目ごとに並べることでした。ここでの営業費用は、人件費・OTA手数料・水光熱費・原価などの運営費用で、減価償却費や賃料は含めません。残りは、営業収入から営業費用を引いた額で、GOP相当として扱います。たとえば、仮の数字で示すと、次のようになります。
| 項目(月間・仮置き) | 前年 | 今年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 営業収入 | 1,000万円 | 1,100万円 | +100万円 |
| 営業費用の合計 | 700万円 | 810万円 | +110万円 |
| 残り(GOP相当) | 300万円 | 290万円 | ▲10万円 |
売上の月報では見えない動き
つまり、売上は10%伸びたのに、残りは10万円減っています。また、費用が増えた110万円の内訳は、OTA手数料が35万円、人件費が45万円、水光熱費が15万円、原価が15万円です。増えた予約の多くがOTA経由だったため、ポイント原資や広告費まで含めた実質の手数料率が上がっていました。
しかし、売上の月報だけでは、収益改善の手がかりになる動きは見えません。そのため、費用を項目ごとに並べて、初めて利益の漏れ先が分かります。GOPの改善は、ここから始まります。なお、科目の見方は、ホテルの経費とは?科目別の割合・経費率の目安と削減方法で整理しました。GOPの見方は、GOPとは?ホテルの利益の見方と改善策をご覧ください。OTAごとの手数料の違いは、OTA手数料の比較をご覧ください。
場面2:人件費を抑えたのに、現場が回らなくなる
人件費率が高いから、シフトを削る。収益改善の場面で、よく出てくる判断です。ただ、総額だけを見て削ると、忙しい時間帯の人手が足りなくなります。すると、残業や応援が増えて、かえって負担が膨らむことがあります。
時間帯ごとの配置を見る
ここで見たのは、人件費の総額ではなく、時間帯ごとの配置と、1人時あたりの販売室数でした。特に、清掃とフロントを分けて見ると、人が余っている時間帯と、足りていない時間帯が別々に浮かび上がります。
削るのではなく、動かす。仮の数字で見てみます。清掃の人数は合計10人のまま、時間帯ごとの割り当てだけを変えた場合です。
| 時間帯 | 清掃する客室数 | 見直し前 | 1人あたり | 見直し後 | 1人あたり |
|---|---|---|---|---|---|
| 10〜12時 | 40室 | 4人 | 10.0室 | 5人 | 8.0室 |
| 12〜14時 | 30室 | 6人 | 5.0室 | 5人 | 6.0室 |
午前は4人から5人へ、午後は6人から5人へ。1人あたりの客室数がそろい、忙しい時間帯の負担が下がります。たとえば、このように寄せるだけでも、現場の負担感が和らぐことがあります。なお、人件費の適正な比率と進め方は、ホテル人件費の適正比率と削減実践にまとめています。
場面3:数字は出ているのに、会議で使われない
月次の数字は毎月出ています。それなのに、収益改善の会議では「今月は忙しかったですね」で終わってしまう。数字が支配人のところで止まり、現場まで下りていない状態です。
ここで効くのは、難しい指標ではなく、管理者が自分の言葉で数字を説明できる状態です。仮に会議で見る数字を1つに絞るなら、OTA経由比率です。前年同月が50%、今月が58%なら、「8ポイント増えて、実質の手数料が上がりました」と言える管理者のもとでは、現場から「こうしたほうがいいと思います」という声が上がりやすくなります。
なお、現場の声が上がる環境づくりについては、(スタッフブログ)「言える現場」をつくるということにも書きました。実際、数字と声は、セットで動きます。
3つの場面に共通していた収益改善のコツ
場面は違っても、収益改善が動き出した現場には共通点がありました。
売上ではなく、費用を項目ごとに並べて見る。実際、利益の漏れ先は、売上の月報には出てきません。
総額ではなく、比率や1人あたりの数字で見る。稼働が変われば総額は動くので、比べるときは割り戻します。
数字を、管理者が自分の言葉で説明できるようにする。つまり、説明できて初めて、現場の判断に使われます。
💡 ここがポイント:収益改善は、施策を足すことだけではありません。まず、今の数字を、判断できる形に並べ直すところから始まります。
収益改善で最初に確認したい3つの数字
「結局、毎月どの数字を見ればよいのか」という質問をよく受けます。まずは、次の3つで十分です。
| 確認する数字 | 何が分かるか | 関係する場面 |
|---|---|---|
| 科目別の対売上比 | 費用が増えている科目 | 場面1 |
| OTA経由比率・実質手数料率 | 販売経路ごとの利益の違い(ポイント原資・広告費込み) | 場面1・3 |
| 1人時あたりの販売室数 | 時間帯ごとの人員配置の効率 | 場面2 |
どれも、収益改善のために特別なツールを買わなくても、表計算ソフトで始められます。ただし、大切なのは、毎月同じ形で並べ続けることが前提です。
収益改善でお悩みの施設様へ
売上は伸びているのに利益が残らない、人件費やOTA手数料が適正か分からない、何から着手すべきか決められない。そうした施設様には、現状の数字から改善の優先順位を整理するお手伝いができます。まずは現状をお聞かせください。
私たちが現場で目指しているのは、一度の収益改善で終わらせることではありません。数字の見方を、現場の人が自分で使える形で残していくことが目標です。
「どんな施策を打つか」の前に、「今の数字をどう並べるか」。収益改善を考えるとき、私たちはこの順番を大切にしています。
現場に飛び込むのが好きで、支配人経験はあるが世代的にはまだまだ若手です!
どんな現場でも、まずは笑顔のあいさつから。スタッフの方々と一緒に動きながら、数字の裏にある現場の声を拾っていきます。
夢は、現場の「やってみよう」が数字になる瞬間に、いちばん近くで立ち会うこと。宿の未来を、現場から一緒につくっていきます。



