【2026年版】最新ホテル業界の課題7選|原因と解決策
「稼働は戻ったのに利益が残らない」と感じていませんか。ホテル・旅館業界は、需要が回復した一方で人材・コスト・DXの供給側の制約が経営を圧迫する新しい局面に入っています。
本記事では、2026年のホテル業界が直面する7つの構造課題と、それぞれの背景・対応策を解説します。課題優先順位診断ツールを使えば、自施設のリスクが高い課題を3分で確認できます。
2026年のホテル業界は、需要回復の一方で7つの構造課題が経営を圧迫しています。
⚠️ 1つの課題だけを解決しても、連鎖する他の課題に打ち消されることがあります。課題優先順位診断で自施設のリスクを3分でチェックできます。
「需要不足」だけでは説明できないホテル業界の構造課題
需要は戻った。問題は「供給力」と「利益を残す力」にある
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計によれば、訪日外国人旅行者数はコロナ禍前の水準を上回り、宿泊需要は大きく回復しました。かつてホテル業界では「いかに需要を作るか」が大きな経営課題でしたが、現在は状況が変化しています。
問題は、需要があるにもかかわらず、人手不足によって客室を十分に稼働できないこと、人件費や原材料費の上昇によって売上が利益につながりにくいこと、設備投資やDXの遅れによって生産性を高められないことです。つまり2026年のホテル業界では、「需要を増やす」だけでは経営課題を解決できません。供給力・収益性・販売対応力・生産性を同時に改善していくことが、持続的な成長の鍵になっています。
7つの課題を4つの構造に分類する
この4つの構造を頭に入れておくと、7つの課題がバラバラの問題ではなく、経営の異なる側面に現れた症状であることが見えてきます。
7つの課題は「バラバラ」ではなく、循環的に連鎖している
だからこそ、単発の施策だけでは連鎖を断ち切れません。
本記事では、この4つの構造から見た7つの課題を整理し、それぞれの背景と対応の方向性を解説します。個々の課題への具体的な打ち手は、後述する専門記事へのリンクマップから確認できます。
この記事が特に刺さる方
・複数の課題が同時に押し寄せていて、どこから手をつけるべきか整理したい
・業界全体の構造を俯瞰したうえで、自施設の立ち位置を把握したい
・新規開業・事業承継にあたって業界の全体像を理解しておきたい
——心当たりがある方は、このあとの7課題の整理と診断ツールが参考になります。
課題①人手不足・採用難
採用の難しさと定着率の低さが同時に進む
宿泊業・飲食サービス業では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査が示す通り、平均賃金が全産業平均を下回る水準で推移しています。加えて早朝・深夜勤務やシフト制の不規則さが若年層の応募をためらわせる要因になっており、採用の難易度は年々上がっています。
採用できたとしても、早期に離職してしまうケースは珍しくありません。人員が不足した現場では残ったスタッフの負担が増え、それがさらなる離職につながることがあります。この「採用しても定着しない」悪循環が、人手不足を一時的な問題ではなく構造的な課題にしています。人手不足対応の具体的な打ち手は「ホテル人手不足対策|原因と即効対策・採用戦略」で詳しく解説しています。
採用より定着施策への投資を
新規採用には求人広告費・エージェント手数料などのコストがかかります。採用だけに投資を集中させるより、既存スタッフの定着率を高める施策(評価制度・キャリアパスの明示・オンボーディング強化)を並行して進める方が、中長期的な費用対効果は高くなる傾向があります。宿泊業に特化した人材会社・採用支援会社を活用する方法もあります(詳細は記事末の関連サービスをご参照ください)。
課題②人件費・原材料コストの高騰
複数のコスト要因が同時に進行している
2025年10月の最低賃金引き上げに加え、電気・ガス・水道等のエネルギーコストも高止まりが続いています。食材・アメニティなどの原材料費も同様に上昇傾向にあり、これらのコスト要因が同時に進行していることが、多くの施設で利益率を圧迫する要因になっています。
「売上は伸びているのに利益が残らない」構造
RevPAR(販売可能客室1室あたり売上)が伸びていても、コスト構造が変化しているために手元利益が思うように残らない——これは多くの施設に共通する悩みです。売上の最大化だけでなく、コスト構造を継続的に点検し、GOP・GOPPARといった利益指標で管理する体制を持つことが今後より重要になります。詳しくは「ホテルの利益率を上げる方法」をご覧ください。
課題③OTA依存と販売コスト
OTAは集客力と引き換えに手数料負担を伴う
OTAは新規顧客獲得に有効な重要チャネルであり、それ自体が問題なのではありません。本質的な課題は「OTA依存」そのものよりも、顧客獲得コストや顧客データを自社でコントロールできない販売構造にあります。特定チャネルへの依存度が高まるほど、この構造は強まります。OTA(オンライン旅行代理店)は幅広い顧客層への露出という強みを持つ一方、送客手数料が発生するため、予約が増えるほど手数料負担も増える構造になっています。OTAへの依存度が高い施設ほど、この手数料負担が利益率に与える影響も大きくなります。OTAの仕組みそのものについては「OTAとは?仕組みや主要サービスを解説」で詳しく解説しています。
直販強化は「単発の施策」では成果が出にくい
直販比率を上げたいと考える施設は多いものの、自社サイトのデザイン変更だけで終わってしまうケースも見られます。直販強化には、リピーター育成・予約フローの改善・価格戦略の統一など、複数の取り組みを組み合わせて進めることが重要です。
課題④インバウンド対応の遅れ
多言語・決済・文化対応の体制整備が課題
訪日外国人観光客の増加に対して、多言語でのWeb予約対応、キャッシュレス決済、スタッフの異文化対応トレーニングといった体制整備が追いついていない施設は少なくありません。これらの対応が不十分なまま広告投資だけを増やしても、実際の滞在満足度が伴わず、低評価レビューにつながるリスクがあります。
インバウンド依存のリスクも踏まえた設計を
インバウンド需要は政府の観光施策もあり中期的な増加が見込まれていますが、為替変動や地政学リスク、感染症の再流行といった不確実な要素も伴います。インバウンドに過度に依存すると、外部環境の変化による収益変動が大きくなるため、国内需要とのバランスを意識した集客設計が中期的な経営安定につながります。
課題⑤国内客の価格離れ
「以前は泊まれた宿が、今は手が届かない」という声
インバウンド需要の回復に伴い、都市部・観光地の一部では客室単価が上昇傾向にあります。この価格上昇によって、これまで利用していた国内客の一部が「価格で離れる」という現象が見られるようになりました。すべての施設・エリアで一様に起きている現象ではありませんが、客単価戦略を検討するうえで意識しておくべき視点です。
実際、総務省の消費者物価指数(宿泊料、2020年基準)は、2025年(年次)で164.6(前年比+6.8%)となり、1990年以降で最高水準を更新しています。これと並行して、観光庁「旅行・観光消費動向調査」による日本人の国内延べ旅行者数の伸び率は、前年(+8.5%)から2025年には+2.5%へと鈍化しました。宿泊費の上昇は、国内旅行需要に影響を与える要因の一つとして注視されています。
客層に応じたプラン設計でバランスを取る
国内客とインバウンド客では、重視する価値(価格帯・サービス内容・滞在スタイル)が異なる傾向があります。単一の価格帯・プラン設計にこだわらず、客層に応じたプランを用意することで、両方の需要を取り込みやすくなります。集客チャネル別の施策は「集客アイデア20選」でも紹介しています。
課題⑥設備老朽化と投資判断
後回しにされがちな設備投資
人手不足や利益圧迫といった目先の課題に対応することに追われ、設備投資が後回しにされる施設は少なくありません。しかし、客室・水回り・共用部の老朽化を放置すると、顧客満足度の低下や口コミ評価の悪化につながり、中長期的な集客力に影響します。
限られた資金の中での優先順位付けが鍵
すべての設備を一度に更新できる施設は多くありません。稼働率や収益への影響が大きい箇所(客室内設備・水回り等)から優先的に投資判断を行い、金融機関への説明資料としても使える中長期の投資計画を持っておくことが重要です。事業計画・資金調達の考え方は「ホテル経営の基礎知識」もあわせてご覧ください。
課題⑦DX・生産性向上
「ツール導入」と「DX」は別物
予約サイトの導入自体は多くの施設で進んでいますが、PMS(宿泊管理システム)・レベニューマネジメントツール・顧客データ基盤を本格的に活用できている施設は限定的です。背景には、投資余力の不足、IT人材の不足、既存業務フローとの衝突という3つの障壁があります。
ツールを導入しただけで満足し、データが活用されないまま放置されるケースも見られます。DXを成果につなげるには、ツール導入そのものではなく、業務プロセスをデータドリブンに再設計する視点が欠かせません。DX推進の体系的な進め方は「ホテルDX導入の進め方」で詳しく解説しています。
なぜホテルの課題は解決しにくいのか
課題同士が連鎖する構造
7つの課題は、それぞれ独立した問題ではありません。たとえば人手不足によって現場が疲弊すると、新しいツールを導入してもDX推進の余力がなくなります。DXが遅れれば、データに基づいた収益改善の打ち手が打てず、利益率の改善も遅れます。利益が伸び悩めば、設備投資や採用への再投資余力も細っていきます。このように、課題は一方向ではなく循環的に影響し合っています。
【図解】課題が連鎖する典型パターン
この連鎖を断ち切るには、個別の課題に場当たり的に対応するのではなく、どの課題から着手すれば連鎖を止められるかという視点で優先順位を決めることが重要です。次の章の診断ツールで、自施設のリスクが高い課題を確認してみましょう。
運営現場で実際に起きていること
統計データだけでは見えてこない3つの場面
当社グループが運営・支援する宿泊施設でも、次のような課題が見られることがあります。代表的な3つのケースを紹介します。
ケース①:人が足りず、売れる部屋を売れない
予約は入っているのに、深夜帯のフロント要員が確保できず、一部客室の販売そのものを制限せざるを得ない——というケースが見られます。稼働率の数字だけを見ると「まだ余裕がある」ように見えますが、実際には人員配置の制約が販売機会そのものを奪っています。これは求人広告を増やすだけでは解決せず、シフト設計や多能工化とセットで見直す必要がある課題です。
ケース②:DXを導入したのに、現場負担が増える
PMSやレベニューマネジメントツールを導入したものの、既存の業務フローとかみ合わず、結局データ入力の二重作業が発生し、現場がExcel管理に戻ってしまう——というケースも見られます。ツール選定の段階で現場の運用イメージを詰め切れていないと、「導入した」という事実だけが残り、負担はむしろ増える結果になります。
ケース③:予約は増えたのに、利益が増えない
OTA経由の予約数は伸びているにもかかわらず、手元に残る利益がほとんど変わらない、あるいは減っているというケースが見られます。原因を辿ると、直販強化の具体策に着手できないまま特定チャネルへの依存が続き、手数料負担が売上の伸びを相殺しているケースが多く見られます。稼働・予約件数という「見えやすい数字」だけを追うと、この構造には気づきにくくなります。
共通しているのは、いずれも「課題は認識しているが、単発の施策や部分的な対応に留まっている」という状態です。次の章では、こうした現場の課題を、専門記事別の対応策にマッピングして紹介します。
課題別の対応記事マップ
7課題×専門記事の対応表
本記事は課題の全体像を俯瞰する「ハブ記事」です。それぞれの課題への具体的な対応策は、以下の専門記事で詳しく解説しています。自施設の優先課題が定まったら、該当する記事で具体策を確認してください。
| 課題 | 対応する専門記事 | 主な打ち手 |
|---|---|---|
| ①人手不足・採用難 | 人手不足対策完全ガイド | 定着率向上・採用チャネル開拓 |
| ②人件費・原価高騰 | 利益率改善の打ち手 | GOP管理・コスト構造の点検 |
| ③OTA依存と販売コスト | OTAの仕組みと活用 | 直販比率の向上・手数料最適化 |
| ④インバウンド対応 | 集客アイデア20選/OTAの仕組み | 多言語対応・キャッシュレス決済 |
| ⑤国内客の価格離れ | 集客アイデア20選 | 客層別プラン設計 |
| ⑥設備老朽化・投資判断 | ホテル経営の基礎知識 | 投資計画・資金調達の設計 |
| ⑦DX・生産性向上 | DX導入の進め方 | PMS・CRM三層整備 |
このほか、事業承継・M&Aを検討中の方は「事業承継・M&A」、旅館特有の課題については「旅館経営の始め方」、外部の専門知見の活用は「ホテルコンサル活用法」もあわせてご覧ください。本記事に登場した専門用語は「ホテル業界用語完全辞典」で体系的に解説しています。
課題対応で陥る失敗パターン
内製の対応でよく見られる典型パターン
内製で対応を進める施設は多い一方、複数の専門課題が重なると、優先順位付けや実行リソースの確保が難しくなるケースがあります。支援現場で繰り返し見られる典型的な失敗パターンを整理します。
❌ 失敗パターン①:「採用さえできれば解決する」という思い込み
人手不足を採用の問題として捉え、求人広告への投資だけを増やす施設は少なくありません。しかし定着率を改善しない限り、採用しても離職が続くサイクルから抜け出せません。
❌ 失敗パターン②:DX投資が「ツールの導入」で止まる
PMSや予約システムを導入したものの、データが活用されないまま放置されているケースがよく見られます。ツール導入そのものはDXではなく、業務プロセスを見直してこそ意味があります。
❌ 失敗パターン③:OTA依存を放置したまま「直販を増やしたい」と願う
直販比率を上げたいと考えていても、自社サイトのデザイン変更程度で終わってしまうケースが見られます。直販強化はリピーター育成・予約フロー改善・価格戦略の統一など、複数施策の組み合わせが必要です。
❌ 失敗パターン④:現場の意見だけで大きな判断をしてしまう
従業員の意見を尊重することは重要ですが、現場の声だけに沿って判断すると、現状維持に偏り、抜本的な見直しが進みにくくなることがあります。経営判断として進めるべき領域と、現場の意見を反映すべき領域を分けて考える必要があります。
❌ 失敗パターン⑤:短期成果に偏り、長期投資を後回しにする
短期的に数値が改善する施策ばかりを優先し、DX・人材定着・設備投資といった長期的な取り組みを後回しにするパターンです。短期的には改善して見えても、数年後にDX未整備・人材流出・設備老朽化が同時に表面化するリスクがあります。
⚠️ 課題解決を進めるうえで生じやすい3つの壁
7つの課題に取り組もうとするとき、多くの施設が次の3つの壁に直面します。①客観性:日々の業務に追われる現場では、自施設の課題を業界水準と比較する視点を持ちにくい。②専門知見:レベニュー・人事制度・DX推進など専門領域ごとに高度な知識が必要だが、すべてを内部人材で揃えるのは容易ではない。③実行リソース:課題は見えていても、実行に割ける時間と人手が足りない——これが現場でよく聞かれる声です。こうした状況では、外部支援も選択肢になります。
🔍 外部支援を検討すべきケース
次のような状況では、外部の専門知見の活用が有効な選択肢になります。①自施設のデータだけでは他施設と比較した立ち位置が分からない(業界ベンチマークの不足)、②課題が複数あり、どこから着手すべきか優先順位を判断しづらい(全体最適のロードマップ設計の不足)、③戦略は描けても実行・モニタリングまで手が回らない(伴走実行支援の不足)。これらに心当たりがある場合は、外部の視点を取り入れることで打ち手の精度とスピードが上がりやすくなります。コンサル活用の判断基準もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
ホテル業界の課題に関するよくある疑問
まとめ:構造課題は「全体最適」で解く
2026年のホテル業界は、需要回復という追い風の一方で、人手不足・人件費高騰・OTA依存・インバウンド対応・国内客の価格離れ・設備老朽化・DX遅延という7つの課題に直面しています。これらは独立した問題ではなく、互いに連鎖して経営を圧迫するため、個別最適の対応だけでは根本解決に至りにくい構造です。
解決の鍵は、課題の優先順位を客観的に把握し、人材・コスト・DX・投資の各視点から全体最適のロードマップを描くことです。本記事で紹介した「課題優先順位診断」を活用し、自施設の現在地を可視化するところから始めてみてください。
支援実績の一例
当社グループが運営・支援に携わった施設では、複数の課題への対応を段階的に進めた結果、稼働率や収益指標の改善につながった事例があります。改善幅は施設の状況や取り組み範囲によって異なるため、まずは自施設の現状を診断ツールで確認し、個別にご相談いただくことをおすすめします。
株式会社リロホテルソリューションズでは、業界課題の俯瞰分析から優先順位設計、打ち手の実行支援までを一貫して支援しています。ご相談は任意ですので、まずは診断ツールで自施設の現在地を確認いただくだけでも構いません。
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人材・採用の領域では、宿泊現場出身のスタッフが対応する株式会社エキップ(リロホテルソリューションズのグループ会社)が、採用・定着・育成をワンストップで支援しています。
【監修者情報】
全国50施設以上のホテル・旅館を運営するグループの実践ノウハウを活かし、宿泊施設の収益改善を専門に支援するコンサルティング会社。
価格戦略、OTA運用、業務効率化までを一貫して支援し、多くの宿泊施設で収益改善を実現しています。






