コラム

2026.04.24

ホテル・旅館の利益率|業界平均とコスト構造・改善アクション完全解説

ホテル・旅館の利益率|業界平均とコスト構造・改善アクション完全解説

稼働率は悪くないのに、利益が残らない——その原因のほとんどは、人件費・OTA関連コスト・食材費・光熱費という4つのコスト構造を把握しないまま運営が続いていることにあります。

これらは合計で売上の75〜85%を占めることも珍しくありません。RevPARやADRといった数字を管理していても、「4つのコストがそれぞれ売上の何%を占めているか」まで定期的に追えている宿は多くないのが現状です。

この記事では、国内ホテル・旅館の利益率の業界平均と目安、コスト構造の分解方法、そして「何から手をつけるべきか」の優先順位を、診断ツールつきで解説します。読み終えたあとには、自社の利益率と年間の改善余地がおおよそ数字で見えるようになります。

📌 この記事でわかること
ホテル・旅館の利益率の業界平均と、RevPAR・ADR・OCCとの関係性
コスト構造を分解して「どこで利益が漏れているか」を特定する方法
利益率が上がらない宿に共通する失敗パターンと改善の優先順位
🎯 こんな方向けです
稼働率は悪くないのに、利益が残らないと感じているオーナー・GM
RevPAR・ADR・OCCの数字は追っているが、収益構造の全体像がつかめていない方
OTA依存・人件費・固定費の何から手をつけるべきか判断できていない方
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ホテルの利益率とは?ADR・OCC・RevPARとの関係

利益率の定義

ホテル・旅館の利益率とは、売上高に対して最終的に手元に残る利益の割合です。

利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

経営判断の現場では「売上がいくらか」より「利益がいくら残るか」の方が本質的な指標です。稼働率が高くても、コスト構造が崩れていれば利益は出ません。

RevPAR・ADR・OCCとの関係性

収益管理の3大指標について整理します。

指標 定義 利益率との関係
ADR(平均客室単価) 販売された客室の1室あたり平均料金 ADRが上がると限界利益が直接改善。コスト変動が少ない分、利益率への貢献が最も大きい
OCC(稼働率) 全客室のうち販売できた割合 稼働率を上げるには変動コスト(清掃・OTA手数料等)も増加。単純な稼働向上だけでは利益率は改善しにくい
RevPAR(客室当たり収益) ADR × OCC。1室が1日に生む平均収益 RevPAR向上の「質」が重要。ADR主導で上がるRevPARは利益率改善に直結。稼働主導では効果が薄い場合がある

業界平均と自社比較:利益率の目安はどこか

国内ホテル・旅館の利益率目安

観光庁・宿泊業の経営統計を踏まえると、業態別のおおよその目安は以下の通りです。

業態 営業利益率の目安 備考
シティホテル・ビジネスホテル 5〜12% 規模・立地で大きく差が出る
旅館(温泉・観光地) 3〜10% 食事提供コストが利益率を圧迫しやすい
民宿・小規模宿 1〜8% 人件費コントロールが鍵

「業界平均6%」という数字がよく使われますが、自社の数字が平均より低い場合、その差がそのまま「年間の機会損失」です。たとえば年商2億円の宿が利益率3%の場合、平均6%に引き上げるだけで年間600万円の利益増加余地があります。

💡 ポイント:RevPAR視点で見る利益率 RevPARが高い宿が必ずしも高収益とは限りません。RevPARが高くても、OTA手数料・人件費・原価が積み上がれば利益率は低下します。RevPARと利益率を同時に改善する戦略が本質です。

業態別・立地別の利益率の差はなぜ生まれるか

業態によって利益率が異なる背景には、コスト構造の違いがあります。以下に業態・立地ごとの特徴を整理します。

業態・立地 利益率目安 利益率を下げる主因 利益率を上げるポイント
都市型シティホテル 8〜15% 高い人件費・賃料。稼働率の週末集中 平日法人需要の安定確保。直販比率の向上
ビジネスホテル 5〜12% OTA依存・価格競争によるADR低下 法人契約・リピーター直販。動的料金設定
温泉旅館(観光地) 3〜10% 食材費(2食付き25〜30%)・大勢の調理スタッフ 食材原価の管理精度向上。料理単価の見直し
リゾートホテル 5〜15% 繁閑差が大きく閑散期の固定費が重い。設備維持費 閑散期の法人・合宿需要開拓。ADR最優先戦略
民宿・小規模宿 1〜8% オーナー家族の労働コストが不可視化されやすい OTA手数料の削減。体験型コンテンツによる単価向上

たとえば都市型シティホテルとリゾートホテルは、ともに利益率が高い帯に入ることがありますが、その背景はまったく異なります。都市型は稼働率の安定が強みであり、リゾートは繁忙期の高ADRが利益を支えています。つまり、自社の業態特性を踏まえたうえで「どのコストを削り、どの売上を伸ばすか」を判断することが重要です。

また、観光庁の宿泊旅行統計調査や日本旅館協会の経営実態調査によれば、国内宿泊施設全体の平均営業利益率は5〜7%前後で推移しており、規模・立地・業態によって2〜15%の幅があるとされています。

コスト構造の解剖:どこに利益が漏れているか

ホテルのコスト4区分

利益率が低い宿では、決まってコストの「漏れポイント」があります。現場経験から整理すると、以下の4区分で構造を見ることが有効です。

コスト区分 売上比の目安 よくある問題点
人件費 30〜45% 繁閑差に関わらず固定的な人員配置。閑散期の無駄コスト
OTA手数料・販促費 15〜25% 基本手数料に加え、クーポン原資・ポイント負担・システム利用料が積み上がり、実質20〜25%に達することも
原材料費(食材) 20〜30% 2食付き旅館では売上の25〜30%に達することも。原価管理が甘いと利益率に直撃
固定費(光熱・修繕等) 10〜20% 設備老朽化による突発修繕で利益が吹き飛ぶケース多数

OTA実質コストが利益率に与える実数インパクト

OTAのコスト負担は「基本手数料」だけではありません。クーポン原資・ポイントプログラム負担・システム利用料・掲載型広告費などを合算すると、実質的な販促コストは売上の20〜25%に達するケースが少なくありません。年商2億円・OTA依存度70%の宿で試算すると:

OTA流通売上:2億 × 70% = 1億4,000万円
基本手数料(15%):約2,100万円
クーポン原資・販促費(+7%相当):約980万円
※クーポン割引原資・ポイント付与原資・システム利用料・掲載広告費の合算 実質OTAコスト合計:約3,080万円/年(OTA流通売上比 約22%)

この実質コストを直販・自社サイト比率を10%pt引き上げることで圧縮すると、年間約440万円のコスト削減が現実的に見込めます(2億円 × 10%pt × 22% = 440万円)。「手数料だけ」で計算していると、本来の削減余地を大きく見誤ります。

利益率が下がる原因3つ

コスト4区分を把握したうえで、現場で繰り返し見られる「利益率が下がる構造的な原因」を3つ整理します。これらは単独ではなく、複合的に発生するケースが多いです。

原因① OTA依存による「見えないコスト」の蓄積 基本手数料だけに目が向きがちですが、クーポン原資・ポイント付与・掲載広告費を合算すると実質20〜25%のコストが発生します。そのうえ、OTAの割引施策に参加するたびにADRも下落します。「稼働率は高いのに利益が薄い」という状況の多くは、このOTA依存コストの複合的な積み上がりが原因です。
原因② 繁閑差に対応していない固定コスト構造 人件費・光熱費・清掃費は繁忙期に合わせて設計されがちです。その結果、閑散期(稼働率40〜50%程度)でも同水準のコストがかかり続けます。たとえば年間稼働率65%の宿でも、繁忙期と閑散期のコストが同じであれば、閑散期の2〜3か月で年間利益の大半が失われます。
原因③ 食材原価の「どんぶり勘定」 2食付きの旅館では、食材費が宿泊売上の25〜30%を占めることがあります。しかし食材原価を料理ジャンル別・メニュー別に管理していない施設は多く、廃棄ロス・仕入れロットの非効率・季節食材の価格変動が利益率に直撃します。食材費の1〜2%改善だけで、年商2億円規模の宿なら年間200〜400万円の利益改善につながります。

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失敗パターン:利益率が改善しない宿に共通する3つの罠

失敗パターン① 稼働率を上げれば利益が出ると思い込む

❌ よくある思い込み
「空室をなくせば収益は上がる」——しかし稼働率を上げるためにOTA割引を乱発すると、ADRが下落し、手数料コストが増加。利益率は逆に悪化します。

現場でよく見るのが、繁忙期に定員近くまで売れているのに利益が残らないケース。原因の多くは、低価格OTA販売 × 手数料 × 稼働コスト増加のトリプル損です。

失敗パターン② 人件費を「削れないコスト」と諦める

❌ よくある思い込み
「スタッフを減らせば品質が落ちる」——しかし問題は人数ではなく、繁閑差を無視した固定シフト設計にあります。

週単位の稼働予測をもとにシフトを最適化するだけで、人件費の5〜10%削減に成功している宿は珍しくありません。これは「削減」ではなく「適正化」です。

失敗パターン③ RevPARは高いのに利益が出ない

❌ よくある思い込み
「RevPARが業界平均を上回っているから大丈夫」——RevPARはあくまで客室売上効率の指標。OTA手数料・人件費・食材コストを差し引いた「手残り」を把握しないと経営判断を誤ります。

RevPARと利益率を連動させて管理するには、GOP(グロス・オペレーティング・プロフィット)やNOI(純営業利益)まで視野に入れた収益管理の仕組みが必要です。

内製の限界とプロとの差

自社対応で行き詰まる3つのポイント

多くの宿が「自社で何とかしよう」と動き出しますが、以下のポイントで限界が見えてきます。

① データを取っても「判断基準」がない 稼働率・ADR・RevPARの数字を記録していても、「この数字は良いのか悪いのか」「どの数字から手をつけるべきか」の判断基準がなければ改善は進みません。業界横断のベンチマークデータを持つ専門家との差がここに出ます。
② 施策は実行できても「効果検証」ができない 「ADRを上げてみた」「OTA比率を下げてみた」——施策は実行できても、その効果が利益率にどう反映されているか正確に検証する仕組みがないと、PDCAは回りません。
③ 繁忙期対応に追われ、構造改革に手が回らない 現場が繁忙期に入ると、コスト構造・料金設計の見直しは後回しになります。これが慢性的に続くと、利益率の低い状態が「常態化」します。

プロとの差:何が違うのか

観点 自社内製 専門家・BPO活用
料金設計 経験則・感覚ベース 市場データ・競合動向に基づく動的設計
コスト分析 月次PL確認のみ 週次・日次でKPI管理し、異常値を即検知
OTA戦略 手数料を所与として運用 チャネル別収益性を計算し、直販比率を設計
改善スピード 繁忙期に先送り 閑散期に構造改革を実行するサイクル設計

「プロに頼む=コストが増える」と思われがちですが、適切な専門家支援で利益率が2〜3%改善すれば、年商2億円の宿で400〜600万円の利益増加につながります。支援コストを上回るリターンが出るかどうかが判断基準です。

【ツール②】3年累計機会損失シミュレーター

5問に答えるだけで、現状のまま運営を続けた場合に3年間で失われる累計利益を可視化します。さらに「料金設計・コスト管理・チャネル戦略・現状把握」の4軸スコアで、最優先の改善ポイントを判定します。

⏳ 3年累計機会損失シミュレーター

利益率を上げる実務アクション

アクション① ADR引き上げによる限界利益改善

利益率改善で最もコスト効率が高いのがADRの引き上げです。稼働率を上げるには変動コストが増加しますが、ADRは上げてもコストはほぼ増えません。年商2億円・OTA比率60%の宿でADRを8〜12%改善すると、年間利益は700〜1,000万円規模で改善する試算になります。

✅ 実務ポイント①:繁忙期の出し惜しみをやめる 旅行需要が高い週末・連休は、OTA最安値に縛られず公式サイトで高単価設定を先行させる。需要予測と連動したレートコントロールが基本です。具体的には、OTAの最安値保証条件を外し、公式サイト限定プランを繁忙期に+10〜15%高く設定する施策から始めるのが現実的です。
✅ 実務ポイント②:ダイナミックプライシングの導入 需要に応じてリアルタイムで料金を変動させる「ダイナミックプライシング」は、ADR引き上げの最も効果的な手法です。導入の手順は、①需要カレンダーの作成(過去稼働データから繁閑パターンを可視化)→ ②料金帯の設計(最低価格・標準価格・ピーク価格の3段階)→ ③OTAとの料金連動設定、という流れが一般的です。適切に運用することで、ADRを年間平均10〜20%引き上げた事例も珍しくありません。

アクション② OTA依存度の段階的引き下げ

OTA比率を10%pt下げると、クーポン・販促費を含む実質コスト22%ベースで年商の約2.2%相当の削減効果があります。年商2億円なら年間約440万円規模の効果です。ただし一気にOTA比率を下げると稼働率が落ちるリスクがあるため、以下のステップで段階的に進めることが重要です。

ステップ 施策 目安効果 優先度
1 公式サイトへの予約ボタン設置・UI改善 直販比率+3〜5%pt ★★★ 最優先
2 リピーター向け会員特典・メール会員施策 直販比率+3〜5%pt ★★★
3 LINE公式アカウント・再来訪促進 直販比率+2〜3%pt ★★☆
4 OTAクーポン参加条件の見直し・離脱 手数料コスト-2〜5% ★★☆

アクション③ 繁閑差を利用したコスト最適化

閑散期の稼働率が50%以下になるなら、人員シフト・清掃体制・光熱費のコントロールを繁閑に連動させることが有効です。「繁忙期に合わせた固定費」から「需要連動型コスト構造」への転換が利益率改善の根本です。具体的には以下の基準が目安になります。

✅ コスト最適化の数値目標 人件費:売上比35〜40%以内(繁閑連動シフト設計で5〜10%削減余地あり)/光熱費:稼働率に連動したゾーン別管理で10〜15%削減/清掃費:外注委託と稼働予測の連動で閑散期コストを20〜30%圧縮。これらを同時に進めることで、年商2億円規模では年間300〜600万円のコスト改善が見込まれます。

ケーススタディ:利益率3%の宿と10%の宿、何が違うか

同じ年商2億円規模・客室30室の温泉旅館で、利益率3%(利益600万円)と利益率10%(利益2,000万円)の宿が実際に存在します。その差を生んでいる要因を比較します。

比較項目 利益率3%の宿(年利益600万円) 利益率10%の宿(年利益2,000万円)
OTA依存度 75〜80%。クーポン常時参加で実質手数料22〜25% 50%以下。公式サイト・電話直販が30〜40%を占める
ADR管理 年間ほぼ固定料金。繁忙期も値上げしない 繁閑・曜日・需要に応じてADRを±15〜20%変動させている
人件費比率 売上比45〜50%。閑散期も繁忙期同水準のシフト 売上比35〜38%。稼働予測に連動したシフト設計
食材原価管理 原価率を月次でも把握していない。廃棄ロスが多い 料理ジャンル別に原価率を管理。目標28%以内で運用
利益率の把握頻度 年次決算でのみ確認。月次PLは税理士任せ 月次PLを自社で管理。主要KPIを週次でモニタリング

この比較で明らかなのは、売上規模の差ではなく、コスト管理の精度と料金設計の意識の差が利益率の差を生んでいるという点です。年商が同じでも、年間利益は1,400万円の開きになります。利益率10%の宿が特別な設備や立地に恵まれているわけではなく、「何を数字で管理し、どこに意思決定を集中させるか」の違いが積み重なった結果です。

利益を伸ばす宿経営術

よくある質問

利益率と利益額、どちらを優先して管理すればいいですか?
経営の健全性を見るには利益率、実際の資金繰りを判断するには利益額(絶対値)が重要です。両方を月次で把握することが基本です。RevPARが高くても利益率が低い場合は、コスト構造の見直しが先決です。
利益率が低い原因がOTAなのか人件費なのか判断できません。
まず売上に対する各コストの割合(コスト比率)を算出してください。OTA手数料・クーポン原資・販促費の合計が売上の18%以上、人件費が40%以上であれば、それぞれが利益率を圧迫している可能性が高いです。本記事のツール①で概算を確認することをお勧めします。
RevPARが上がっているのに利益が増えない理由は何ですか?
RevPARは客室売上効率の指標であり、コストを引いた「利益」は含まれません。RevPARが上昇しても、OTA手数料・食材コスト・人件費が同時に増加していれば利益率は改善しません。RevPARの「質」——つまりどのチャネルで、どのコスト構造で売れているかを分析することが重要です。

まとめ:利益率改善は「どこから手をつけるか」が9割

📋 この記事のポイント
ホテル・旅館の利益率は業界平均6%。業態・立地によって1〜15%の幅があり、自社の数値との差が「改善余地額」に直結する
利益率を下げる3大原因は「OTA依存コストの複合的蓄積」「繁閑対応できていない固定費構造」「食材原価のどんぶり勘定」
利益率改善の優先順位は「ADR引き上げ(+8〜12%目標)→OTA手数料削減(直販比率+10%pt)→人件費・食材費の適正化」の順が効果的
同じ年商2億円・30室でも、利益率3%と10%の宿では年間1,400万円の利益差。差を生むのは管理精度と料金設計の意識
内製では「判断基準・効果検証・構造改革」の3点で限界が生じやすい。専門家支援のROIを試算してから判断する

まずは本記事のツール①で自社の利益率を概算し、ツール②で3年累計の機会損失を確認してみてください。「どこに問題があるか」が見えれば、打ち手は自ずと絞られます。それでも判断に迷う場合は、宿の健康診断(無料)で専門家に相談することをお勧めします。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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