GOPとは?ホテルの利益の見方と改善策【2026年版】
月次の売上は前年を上回っているのに、営業費用を並べると利益が減っている。GOPとは、そうした運営の実力を数字で映す、ホテルの収益指標です。
この記事では、GOPとは何か、計算方法、業態別の傾向、RevPAR・ADR・OCCとの関係、GOPPARとの違いを整理しました。売上が10%伸びてもGOPが減る試算も載せています。
記事内のホテルGOP簡易診断に5項目を入れれば、自館のGOP率と稼働の状態がわかります。
GOPとは、売上ではなく「どれだけ利益を残せているか」が分かる経営指標です。
⚠️ 売上が伸びても、OTA手数料・人件費・原価が同じペースで膨らめばGOPは横ばい、場合によっては減ります。自館の数字はホテルGOP簡易診断で確認できます。
GOPとは?定義と計算方法
GOPとは何か:基本の考え方
GOPとは、Gross Operating Profit(営業総利益)の略で、ホテルの運営で稼いだ収益から運営費用を引いた利益のこと。ホテル業界では売上の次に必ず確認される数字です。なお、国際基準のUSALIでは部門別収益・費用を積み上げる多層構造で定義されますが、本記事では、月次の現場管理で使いやすい簡略版「営業収入−営業費用」で説明します。
持ち家か賃貸かといった建物の事情を外して、「運営のうまさ」だけを取り出せる。GOPの一番の特徴はここにあります。たとえば、同じ売上でも、シフトの組み方や仕入れの管理が違えばGOPは大きく変わります。だからこそ、オーナーと運営会社の間でもGOPが成績表として使われています。
計算例:月間売上1,000万円・営業費用700万円の場合
(GOP率30%)
減価償却費・賃料・固定資産税・金利は営業費用に入れません
一般企業の「営業利益」との違い
| 項目 | GOPの考え方 |
|---|---|
| 含めるもの | 客室・料飲・宴会等の営業収入、人件費・材料費・水光熱費等の営業費用 |
| 含めないもの | 減価償却費・賃料・固定資産税・金利など、所有・投資に紐づく費用 |
| 背景 | ホテル業界は「運営」と「所有」が分離しているケースが多く、運営側がコントロールできる範囲の収益力を評価するため |
💡 ここがポイント:運営委託契約では、GOPが運営会社のインセンティブフィー(成功報酬)の算定基礎になることがよくあります。そのため「どの費用を営業費用に入れるか」は契約や会計方針ごとに微妙に異なります。他館や前年と比べる前に、まず費用の範囲をそろえておくこと。つまり、ここがずれたままでは、比較しても判断を誤ります。
業態別に見るGOP率の傾向
「うちの業態なら何%が適正か」という質問をよく受けますが、一律の答えはありません。客室数、ADR、OCC、料飲比率、人員配置。どれか一つ違うだけでGOP率は動きます。そこで下の表では、業態ごとに費用がどこに寄りやすいかをまとめました。
| 業態 | 構造的な特徴(傾向) |
|---|---|
| ビジネスホテル | 客室収益中心で効率が高く、GOP率は比較的高めになりやすい |
| リゾートホテル | 施設が広くサービス種類が多く、固定費・人件費が重くなりやすい |
| シティホテル | 料飲・宴会比率が高く原価率・人件費率が上がりやすい |
| 旅館 | 料飲・温浴など運営負荷の大きいサービスが多く、比較的低めになりやすいが個別差が大きい |
同じ業態でも差は大きく、AHLA(米国最大級のホテル業界団体)の公表資料を見ても、地域や規模によってGOP率はかなり開いています。
業態の平均と比べるより、自館の前年同期比・予算比、同規模の同業態との比較を優先してください。また、下の診断ツールでは、業態ごとの傾向を参考基準に自館の数値と照らし合わせられます。
GOPと関連指標(RevPAR・ADR・OCC)の関係
GOPとは利益の最終結果なので、単独で眺めても、何を直せばよいかは見えてきません。そこで、まずは売上を形づくる3つのKPIとの関係を整理しておきます。
| 指標 | 定義・評価すること | GOPとの関係 |
|---|---|---|
| ADR | 客室売上 ÷ 販売客室数(単価の質) | 単価が上がれば原資が増え、GOPを直接押し上げる |
| OCC | 販売客室数 ÷ 販売可能客室数(稼働) | 固定費回収の土台。一定稼働がないとGOPが伸びにくい |
| RevPAR | ADR×OCC(単価×稼働の総合スコア) | GOPを左右する重要な売上KPIの一つ |
| GOP | 営業収入−営業費用(コスト込みの収益力) | 売上KPIが利益として残ったかの最終評価 |
OCC・ADR・RevPARは、どれも売上側の数字。コストは一切入っていません。つまり、この3つが上向いているのにGOPが伸びないなら、疑うべきはコスト構造です。詳細はRevPARとは?、ホテルのADRとは?、稼働率(OCC)とは?もご覧ください。
【ツール】ホテルGOP簡易診断
なぜ売上が増えてもGOPが増えないのか
「稼働も単価も悪くないのに、利益が増えない」。売上を伸ばすことと利益を残すことは、似ているようで別の仕事です。実際、原因をたどると、たいてい次の3つのどれかに行き着きます。
| パターン | 典型的な症状 |
|---|---|
| ①売上側 | OTA依存で手数料が重い、直販率が低い、繁忙期でもADRを上げられない |
| ②コスト側 | シフトの過剰配置、清掃委託費の生産性の低さ、食材ロス・仕入れ単価の放置 |
| ③構造 | 売上増とコスト増が連動し、部門別損益が見えていない |
試算例:売上が10%伸びてもGOPが減るケース
実際に起こりがちな動きを、仮の数字で再現してみます。前年よりADRも稼働も上がり、営業収入は1,000万円から1,100万円へ増えました。ところが、増えた予約の多くがOTA経由だったうえ、時給改定と繁忙期の応援人員が重なっています。
| 項目(月間) | 前年 | 今年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 営業収入 | 1,000万円 | 1,100万円 | +100万円 |
| OTA手数料 | ― | ― | +35万円 |
| 人件費(時給改定・応援人員) | ― | ― | +45万円 |
| 水光熱費 | ― | ― | +15万円 |
| 食材・アメニティ原価 | ― | ― | +15万円 |
| 営業費用 合計 | 700万円 | 810万円 | +110万円 |
| GOP(GOP率) | 300万円(30.0%) | 290万円(26.4%) | ▲10万円 |
売上は10%増えたのに、GOPは10万円減っています。売上の月報だけなら「好調」で終わってしまう月でしょう。だからこそ、費用を項目ごとに前年と並べて、ようやくどこから利益が漏れているかが見えてきます。
ホテルGOP簡易診断
GOPとは営業収入から営業費用を引いた額で、GOP率はそれを営業収入で割った割合です。5項目を入力すると、GOP・GOP率と稼働面の状態を判定します。なお、上の試算のように費用項目ごとの分解が必要な場合、人件費率やOTA比率まで含めた確認は無料相談で対応しています。
GOP改善の具体策|売上側とコスト側の両輪
短期・中長期の具体策
GOPとは売上側とコスト側の両方で動く数字なので、上げる手段も両方にあります。そこで、すぐ着手できるものと、仕組みから変える必要があるものに分けて整理しました。
| 時間軸 | 具体策 |
|---|---|
| 短期 (数週間〜数ヶ月) | 直販率アップでOTA手数料を圧縮/ダイナミックプライシングでADR最適化/料飲メニュー構成比・原価率の見直し/繁閑に応じた清掃・シフト調整/水光熱費の管理徹底 |
| 中長期 (半年〜数年) | リピート率アップで広告費・OTA手数料を削減/PMS統合で現状把握の精度向上/チェックイン簡略化・DXで生産性改善/業務フロー見直しで属人化を解消 |
実務では、利益の薄い売上(手数料の高いチャネル経由の予約など)を減らす方が、新しい売上を積み上げるより早くGOPに効くことが少なくありません。売上を増やすには広告費も営業の手間もかかる一方、つまり、コストの見直しなら今の売上を保ったまま始められます。ただ、片方だけではいずれ頭打ち。最終的には両方を並行して回すことになります。
なお、詳しい施策はホテルの売上最大化、OTA手数料の比較、ホテル・旅館の利益率もあわせてご覧ください。
現場でまず毎月確認したい3つの数字
部門別の損益をいきなり整えようとすると、たいてい途中で止まります。そこで、まずは次の3つを、毎月同じ形式で記録するところから。これだけでもGOPが動いた理由はかなり読めるようになります。
内製の限界とプロとの差
部門別の損益が見えない。コストのムダに気づけない。担当者が替わると管理が崩れる。そのため、どれか一つでも当てはまるなら、まずは部門別にコストと利益を分け、月次で自動集計できる形を作るところから始めてください。
GOP改善の事例(匿名)
支援事例から2つ紹介します。施設名は伏せ、数字も幅を持たせています。
| 施設タイプ | 実施した施策 | 改善幅の目安 |
|---|---|---|
| シティホテル(80室程度) | 直販強化とレベニューマネジメントの見直し | GOP率 +3〜6pt程度 |
| 温泉旅館(45室程度) | シフト再設計と仕入れ管理の見直し | 人件費率 ▲2〜3pt程度 |
どちらも、最初に手をつけたのは「数字を毎月同じ形で並べる」ことでした。実際、施策そのものより、そこで時間がかかる施設が多い印象です。
GOPPARとの違いと使い分け
GOPと混同されやすい指標にGOPPAR(GOP ÷ 販売可能客室数)があります。GOPとは施設全体の利益額のこと。これに対してGOPPARは、客室1室あたりに割り戻した利益です。規模の違う施設どうしでも同じ土俵で比べられます。そのため、自館の月次レビューにはGOP、複数施設の横並び比較や投資判断にはGOPPARを使います。この使い分けが実務では定着しています。
よくある質問(FAQ)
GOPとは何かに関する質問
GOP改善と指標の使い分けについて
まとめ:GOPを軸に利益の残る体質へ
売上は戻ったのに利益が残らない。そんなときは、GOPの追いかけ方を変えてみてください。GOPとは「営業収入−営業費用」、つまり運営でどれだけ稼げたかを示す数字です。RevPAR・ADR・OCCといった売上側の指標と並べて見ること。そして業態の平均値よりも、自館の前年同期比・予算比で毎月追いかけること。この2点が改善の出発点になります。
自館のGOP率がどの位置にあるかは、上のホテルGOP簡易診断で数分あれば確認できます。
GOP改善に取り組みたい方へ
リロホテルソリューションズでは、部門別GOPの可視化から、全国同業態とのベンチマーク比較、施策ごとの改善幅の試算まで、運営支援の専門家が伴走します。「どこから手をつければGOPが最も伸びるか」を、現場で実行できるレベルまで一緒に落とし込みます。
【監修者情報】
全国50施設以上のホテル・旅館を運営するグループ企業のノウハウを活かし、宿泊施設の売上向上とGOP最大化を支援するコンサルティング会社。
価格戦略、OTA運用、人件費最適化、業務効率化まで踏み込み、利益の残るホテル経営を実現します。



