コラム

2026.05.27

ホテル経営のリスクとは?倒産データと失敗10類型・資金試算

ホテル経営のリスクとは?倒産データと失敗10類型・資金試算

開業を決めて物件も押さえた。ところが、収益計画を見直すと、稼働率が少し下がるだけで手元資金が1年ほどで尽きる。開業前の資金計画や、経営中の収支の悪化で、そんな状況に気づく方は少なくありません。ホテル経営のリスクは、倒産の件数だけを見ても、自館の危うさまでは分からないからです。

この記事では、帝国データバンクの最新の倒産データを踏まえて、失敗の10類型と、先に確認したい項目を整理します。あわせて、リスクを減らす3つのアクションと、外部に相談する時期の目安も紹介します。

記事内のホテル資金ショート試算を使えば、損益分岐の稼働率と、稼働率が下振れしたときに手元資金が何か月持つかを、自館の数字で確認できます。

30秒でわかるホテル経営のリスク(10類型)

ホテル経営のリスクは、資金・集客・人材・法令・承継と再生の5領域に分けて見ると、失敗の原因を追いやすくなります。

客室売上 − 変動費 − 固定費(返済含む) =月次の資金収支
ホテル経営のリスクを見る3つの時期
開業前に見る→資金計画・立地
運営中に見る→予約経路・人件費・口コミ
承継・再生で見る→外部に相談する時期

⚠️ たとえば、稼働率が計画より下がると、固定費の重い施設ほど手元資金が早く尽きます。自館の資金ベースの損益分岐と、資金が持つ期間は、ホテル資金ショート試算で確認できます。

🎯 この記事はこんな方に向けて書いています
開業を検討していて、失敗の型を事前に知っておきたい方
経営中だが収支の改善が進まず、廃業のリスクを考え始めた経営者・オーナー
事業承継や再生を考えていて、判断の時期を知りたい方

ホテル経営のリスクは今どうなっているか

宿泊業の倒産は2年連続で増えている

帝国データバンクの調査では、2025年に発生した宿泊業の倒産(負債1000万円以上・法的整理)は89件でした。前年の78件から11件、率にして14.1%増え、2年連続の増加です。さらに、法的整理を経ない休廃業・解散が178件あり、倒産と合わせると、1年で267件の宿泊事業者が事業をやめた計算です(確認日は2026年11月2日)。

倒産の件数だけでは、ホテル経営のリスクは測れません。休廃業・解散は倒産の約2倍あります。ただし、休廃業・解散には黒字のまま事業をやめるケースも含まれるため、すべてが経営難とは限りません。

ホテル経営のリスクを示す倒産件数の推移

次の表は、ホテル・旅館経営業者に絞った集計です。宿泊業全体の89件とは、対象の範囲が違うため、件数は一致しません。2025年は81件で、コロナ禍の2020年に次ぐ水準でした。負債総額は242億5900万円で、3年ぶりに減っています(観光経済新聞が報じた帝国データバンクの調査)。なお、2024年は、前年比8件増という報道から逆算した件数です。

年倒産件数補足
2020年118件コロナ禍の年
2024年73件―
2025年81件前年から8件増(+11.0%)

ホテル経営のリスクをめぐる倒産要因の変化

近年の倒産には、複数の要因が重なっています。ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保の融資)の返済、2024年以降に強まった人手不足、食材や光熱費などのコスト高です。さらに、要因が判明した倒産のうち、老朽化・修繕・故障が関わるものは、直近5年で58件(14.6%)ありました。

一方、訪日客が増え、高単価・高付加価値の施設に投資が集まっています。設備更新の余力がない老舗旅館や中小のビジネスホテルは、この流れに乗れないため、事業をやめる例が出ています。つまり、需要が戻っても、体力の差で明暗が分かれる局面です。また、倒産・廃業の75.3%は、三大都市圏以外の地方で起きました。

ホテル経営のリスク10類型|失敗の型から逆算する

ホテル経営のリスク10類型と5領域の対応

そこで、ホテル経営のリスクを、失敗の型で10に分けました。10類型は、次の5領域に対応します。また、各項目には、起きることと、先に確認することを付けています。なお、ここで挙げる状況は典型例であり、特定の施設の実例ではありません。

領域該当する類型
資金①初期投資と資金計画/⑤収益指標の管理
集客②コンセプトとターゲット/③OTA(オンライン旅行代理店)依存/⑦口コミ/⑧立地と市場
人材④採用難と離職
法令⑥法令対応
承継・再生⑨事業承継/⑩再生の遅れ

失敗①|初期投資が重く、資金がショートする

ホテル経営のリスクの入口は、資金計画です。「良い施設をつくれば客は来る」という前提で、収益計画を甘く見積もったまま、改装や設備に投資するパターンです。ところが、売上は立っているのに、手元の資金が先に尽きます。さらに、設備の更新や修繕の費用を計画に入れていないと、数年後に大きな出費が重なります。

先に確認すること:まず、最悪・標準・最良の3シナリオで資金繰りを作り、稼働率が下振れしたときに資金が何か月持つかを数字にします。

失敗②|コンセプトとターゲットが合っていない

たとえば、誰でも泊まれる宿を目指すと、誰にも選ばれない宿になりやすくなります。客室タイプも価格帯もばらつくため、口コミでは「普通」と評価され続けます。新規の予約が伸びず、OTA頼みが深まります。

見るべき点:周辺の競合の客単価・口コミ・稼働状況を並べて、空いているポジションを探します。そのうえで、施設設計・価格・販売を同じターゲットから逆算します。

失敗③|OTA依存と値下げ競争に陥る

OTAに集客を任せきると、手数料が利益を削ります。また、稼働率を守るために値下げを重ねると、安い宿という位置づけが固定され、価格を戻せなくなります。

先に出す数字:売上ベースのOTA比率と、手数料やポイント原資を含めた実質の負担率です。見直しの目安は、後述のアクション②に書いています。また、直接予約を増やす実務は、ホテル公式予約・直接予約を増やす方法で整理しています。

失敗④|採用難と離職がくり返される

スタッフが定着しないと、サービスの質が落ち、口コミが下がり、予約が減ります。残ったスタッフの負担が増えて、さらに離職が続きます。なお、人手不足は帝国データバンクも近年の倒産要因にあげています。

見るところ:離職が続いている部署と、その部署の業務量です。そのうえで、業務の標準化と配置の見直しから進めます。また、人件費の見方は、ホテル人件費の適正比率と削減実践で整理しています。

失敗⑤|収益指標を管理していない

稼働率だけを追うと、「忙しいのに儲からない」状態に陥ります。そのうえ、ADR(客室平均単価)やRevPAR(販売可能客室1室あたり収益)を見ていないと、繁忙期に単価を上げ損ねても気づけません。たとえば、仮置きの数字で、ADR 10,000円・稼働率70%ならRevPARは7,000円です。つまり、稼働率が同じでもADRが1,000円違えば、RevPARは700円変わります。

毎月そろえるもの:ADR・RevPAR・OCC(稼働率)を、毎月同じ形で記録します。また、ADRの基礎は、ホテルのADRとは?で確認できます。

失敗⑥|法令対応が後手に回る

旅館業法・消防法・食品衛生法など、守るべき法令は多岐にわたります。たとえば、改装や設備の変更をしたのに、許可の内容や点検の手続きが後回しになれば、行政指導や営業停止の対象になり得ます。

動く順番:改装や増築の前に、所管の保健所や消防へ、手続きの要否を聞きます。ただし、どの手続きが必要かは、自治体によって異なります。必要な許可の全体像は、ホテル経営に必要な許可と資格で確認できます。

失敗⑦|口コミを放置して評判が落ちる

Googleマップや各OTAの口コミを放置したり、否定的な口コミに感情的に反論したりすると、予約前のお客様が離れます。一方で、口コミは現場の改善点を知らせてくれる情報でもあります。

見るポイント:すべての口コミに返信する担当と期限が決まっているか。指摘の多い内容を、現場の改善に回す流れがあるか。この2点を見ます。

失敗⑧|立地と市場の見立てが甘い

ホテル経営のリスクは、立地の見立てにも潜んでいます。「温泉地に近いから」「駅から近いから」という見立てだけで立地を決め、競合の密度や客層を数字で確かめないケースです。そのため、開業後に、想定した客層が来ないと分かります。

調べること:観光庁の宿泊旅行統計調査で地域の稼働の傾向を見て、競合の価格と予約状況を並べます。また、開業準備の進め方は、ホテル開業は「立ち上げ方」で利益が決まるをご覧ください。

失敗⑨|事業承継を先送りにする

後継者の問題を先送りにすると、オーナーの体調や年齢をきっかけに、事業を続けられなくなります。資産価値のある施設でも、承継の計画がなければ廃業に進みます。また、従業員や地域、常連のお客様への影響も小さくありません。

整理しておくこと:後継者の有無と、M&A(合併・買収)も含めた選択肢が、文書になっているかです。詳しくは、ホテル業界のM&A最新動向と事業承継の実務ポイントで整理しています。

失敗⑩|経営悪化からの再生が遅れる

ホテル経営のリスクは、判断の遅れでも大きくなります。「もう少し様子を見れば戻る」と判断を先送りにして、資金が尽きてから専門家に相談するパターンです。しかし、その時点では、選べる手が大きく減っています。実際、後述の試算例(仮置き)では、稼働率が60%に下がると、約15.8か月で資金が尽きます。一方、早く動いた宿には、支援者のもとで再生した例もあります(帝国データバンクの調査より)。

先に見る数字:赤字が続いている期の数と、資金が持つ月数です。また、早い段階の相談先と進め方は、旅館・ホテル再生完全ガイドで整理しています。

【ツール】ホテル資金ショート試算

資金ベースで見る計算の前提

まず、計算の前提を決めます。月次の資金収支は「客室売上−変動費−固定費」です。会計上の損益とは違い、借入の返済を固定費に入れ、現金が出ていかない減価償却費は除く、資金ベースの考え方になります。変動費は、OTA手数料・清掃・アメニティなど、売上に応じて増える費用です。一方、固定費には、人件費・賃料・借入の返済など、稼働率に関わらず出ていく費用を入れます。

ただし、計算の対象は客室売上のみです。旅館の料飲・宴会・温浴の収入は含みません。また、人件費は全額を固定費として扱います。

また、資金ベースの損益分岐の稼働率は、固定費÷(満室売上×(1−変動費率))で求めます。満室売上は、客室数×30日×ADRです。

稼働率が下振れすると、資金はいつ尽きるのか

次に、仮置きの数字で試算します。30室、ADR 10,000円、変動費率25%、月の固定費500万円、手元資金1,500万円です。つまり、満室なら、1か月(30日)で900室夜が売れる計算になります。

稼働率月次の資金収支手元資金が持つ期間
80%+40万円黒字
70%▲27.5万円24か月以上
60%▲95万円約15.8か月
50%▲162.5万円約9.2か月

資金ベースの損益分岐は、稼働率74.1%です。つまり、計画の稼働率が80%なら資金は増えても、60%に下がると毎月95万円ずつ減り、手元資金は約15.8か月で尽きます。現場では「計画どおりに埋まれば大丈夫」という声をよく聞きます。ただし、見るべきは、下振れしたときの月数です。

ホテル資金ショート試算ツール

そこで、自館の数字を入れると、資金ベースの損益分岐の稼働率と、稼働率ごとの月次の資金収支・資金が持つ期間を出します。1か月は30日で計算します。

🧮 ホテル資金ショート試算
5項目すべてに入力して「試算する」を押してください。客室売上のみで計算します(旅館の料飲・宴会・温浴の収入は含みません)。固定費には、人件費と借入の返済を含めてください。

ホテル経営のリスクを減らす3つのアクション

アクション①:財務を月次の数字で見える化する

まず、月次のキャッシュフロー・ADR・RevPAR・OTA手数料率・人件費率の5つを、毎月同じ形で記録します。それだけで、利益を圧迫している項目が見えてきます。

✅ 自力でできること:Excelで、月次の経営指標(KPI)のシートを作ります。なお、ADRは客室売上÷販売客室数、RevPARは客室売上÷販売可能客室数です。
📘 専門家に任せたいこと:複数期の財務を並べて、回収できる投資と削るべき費用を仕分けること。金融機関に出す資料づくりも含みます。

アクション②:OTA依存度を測り、直接予約を育てる

まず、全予約に占めるOTA経由の割合を、売上ベースで出します。当社の目安では、6割を超えたら警戒のラインです。そこで、自社サイトの予約ボタンの位置、公式サイト限定の料金、リピーター向けの特典を、1つずつ整えます。

✅ 自力でできること:公式サイト限定プランの設定と、Googleビジネスプロフィールの整備は、無料で始められます。
📘 専門家に任せたいこと:OTAでの掲載順位の対策、レベニューマネジメントの仕組みづくり、動的な価格設定の実装です。

アクション③:早めに外部の目を入れる

経営の課題を社内だけで抱えると、気づいたときには選択肢が減っています。「まだ大丈夫」と思える段階こそ、外部の診断を受けるタイミングです。

💡 相談の目安(当社の見立て):①売上は保てているのに、利益率が下がり続けている。②離職が続いている。③OTA依存が高止まりしている。④事業承継を先送りにしている。⑤借入の返済が始まり、資金繰りが厳しい。当てはまる項目が多いほど、早めに外部の診断を受ける価値があります。

内製でできることと、専門家に任せたいこと

次の表は、当社の整理です。ただし、施設の規模や体制によって、線引きは変わります。

領域内製対応専門家推奨
月次KPIの記録(稼働率・ADR)◎―
口コミ返信・日常の顧客対応◎―
動的価格設定・レベニューマネジメント△◎
キャッシュフロー3シナリオ分析△◎
旅館業法・消防法の適合確認✗◎
事業再生・金融機関との交渉✗◎
事業承継・M&Aのスキーム設計✗◎

専門家の活用は、費用ではなく、経営者が接客とサービス設計に集中するための投資と考えることもできます。そのため、内製で足りる領域と任せる領域を分けておくと、どちらも中途半端になりません。

よくある質問(FAQ)

ホテル経営のリスクの基本について

ホテル・旅館の倒産が増えているのはなぜですか? ▼
A. コロナ禍で借りた資金の返済、人手不足、コスト高が重なっているためです。加えて、高単価の施設に投資が集まるなか、設備更新の余力がない施設が苦しくなっています。要因の詳細は、本文の第1章で整理しています。
倒産と休廃業・解散は何が違うのですか? ▼
A. 倒産は、帝国データバンクの集計では、負債1000万円以上の法的整理を指します。一方、休廃業・解散は、法的整理を経ずに事業をやめることです。実際、2025年の宿泊業では、倒産が89件、休廃業・解散が178件で、休廃業・解散のほうが約2倍でした。

開業前・運営中のホテル経営のリスク対策について

開業前に、最低限そろえたい数字は何ですか? ▼
A. 最悪・標準・最良の3シナリオの資金繰り計画、資金ベースの損益分岐の稼働率、稼働率が下振れしたときに手元資金が何か月持つか。この3つです。本記事の試算ツールで、目安を出せます。
OTA依存は、どのくらいから見直すべきですか? ▼
A. 一律の基準はありません。ただし、売上ベースの比率と、手数料やポイント原資を含めた実質の負担率の両方で判断します。当社の目安は、本文のアクション②に示しています。
経営が厳しいと感じたら、いつ専門家に相談すべきですか? ▼
A. 資金が尽きる前に相談するほど、選べる手が多く残ります。具体的には、赤字が続き始めた段階や、借入の返済が始まる前が目安です。そのため、資金繰りの月数が見えているうちに、外部の診断を受けてください。

まとめ:ホテル経営のリスクは数字で先に見る

ホテル経営のリスクを減らす要点

ホテル経営のリスクは、起きてから対処するより、数字で先に見るほうが選べる手が多く残ります。そして、10類型は、資金・集客・人材・法令・承継と再生の5領域に分けて整理できます。

まず、稼働率が下振れしたときに手元資金が何か月持つかを確かめること。次に、OTA比率と人件費を、毎月同じ形で記録すること。この2点から始めてください。自館の数字は、ホテル資金ショート試算で数分あれば確認できます。

ホテル経営のリスクを整理したい方へ

リロホテルソリューションズでは、開業前の資金計画から、開業後の収支の見直し、承継・再生の相談まで、運営支援の専門家が無料相談を受けています。まずは、いまの数字のどこに無理があるかを、一緒に整理します。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
全国50施設以上のホテル・旅館を運営するグループ企業のノウハウを活かし、宿泊施設の売上向上とGOP最大化を支援するコンサルティング会社。
価格戦略、OTA運用、人件費最適化、業務効率化まで踏み込み、利益の残るホテル経営を実現します。

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