コラム

2025.12.03

DORとは?宿泊業の収益を左右する“1室あたり平均人数”の考え方

DORとは?宿泊業の収益を左右する“1室あたり平均人数”の考え方

DORとは?宿泊業の収益を左右する“1室あたり平均人数”の考え方

ホテルの経営を預かる方にとって「どの客室がどれだけ効率よく収益を生んでいるか」を把握することは重要です。そこで注目される指標が、1室あたりの平均人数を示す「DOR」です。

この記事では、DORの基本的な意味や計算方法をはじめ、OCCやADR・RevPARなど他の主要指標との違いと役割を整理します。さらに、DORを戦略的に高めることで「1室あたりの収益性」を引き上げるための施策も紹介しますので、客室運用の最適化を図りたい経営者・支配人はぜひ参考にしてください。

ホテル経営におけるDORとは

DORは「1室に何名が泊まっているか」を示す指標です。客室の利用効率や売上構造を把握するうえで欠かせず、稼働率だけでは見えない収益の改善点を明確にします。

DORの意味

DOR(Double Occupancy Ratio)は、「宿泊人数÷販売客室数」で求める1室あたりの平均宿泊人数を示す指標です。ツインやダブル利用・家族利用がどれだけあるかを数字で把握できるため、収益構造を読み解くうえで役立ちます。

稼働率が高くても、一人利用が多ければ売上は伸び悩みますが、DORを確認すれば客室の「使われ方」が明確にわかります。DORは「同伴係数」と呼ばれることもあり、客層の傾向をつかむ指標としても活用できます。ファミリーやペア利用を増やしたいホテルにとって、改善の出発点となる重要な数値です。

DORの計算式

DORの計算式はとてもシンプルで、「DOR=宿泊人数÷販売客室数」で求めます。ここでの宿泊人数とは、実際にチェックインした総人数を指し、販売客室数は販売対象となった客室数の合計です(清掃中や休止中の客室は含めません)。

たとえば、ある日の宿泊人数が120名で、販売客室数が80室の場合、DORは「120÷80=1.5」です。つまり、1室あたり平均1.5名が宿泊している状態を示します。稼働率が同じでも、DORが1.2と1.8では売上に大きな差が生まれます。ペア利用が増えれば客室単価が変わらなくても収益が伸びやすくなるため、ホテル運営の改善余地を探る指標として確実に押さえたい計算方法です。

DORとOCCの違い

OCC(稼働率)は「どれだけ客室が埋まっているか」を示す指標で、販売客室数に対して何室が実際に利用されたかを表します。一方、DORは「1室に何人が泊まっているか」を示す数値で、客室がどのように使われているかに焦点を当てています。

OCCが高いのにDORが1.0前後で推移している場合、シングル利用が中心で室単価が伸びにくい状況と判断できます。逆に、同じ稼働率でもDORが高ければ、同伴利用が増えて売上の伸びが期待できる状態です。

また、「OCC×DOR」で延べ宿泊者数のイメージがつかめるため、両指標を組み合わせると客室運用の改善点が見えやすくなります。OCCの基本は既存記事でも詳しく解説していますので、合わせて確認すると理解が深まります。

【関連記事】ホテルの稼働率(OCC)とは?経営成功の鍵となる稼働率向上のポイントを解説!

DORとADR・RevPAR・LOSの関係

DORは、単独で見るだけでは不十分です。ADR・RevPAR・LOSと組み合わせることで、初めて収益構造の全体像が掴めます。複数指標をつなげることで改善の優先順位が明確になります。

主要指標のおさらいと相互関係

ホテルの収益構造を正しく把握するには、複数の指標を組み合わせて分析することが欠かせません。ADR(平均客室単価)は「宿泊売上÷販売客室数」で求め、1室あたりの売上を示す指標です。

【関連記事】ホテルのADRとは?計算方法から収益を最大化する活用法まで徹底解説!

RevPARは「OCC×ADR」で算出し、販売可能客室1室あたりの収益を把握できます。

【関連記事】RevPAR(レブパー)とは?ホテル経営の収益力を測る指標を徹底解説!

さらに、LOS(平均滞在日数)は、ゲストがどれくらい滞在する傾向があるのかを示す数値です。

この中で、DORは「人数」の視点を補う指標として位置づけられます。OCCやADRだけではわからない「客室の使われ方」を捉えられるため、同伴利用が増えるほどADRやRevPARの底上げにもつながる「隠れKPI」として機能します。

DORがADRとRevPARに与える影響

DORが上がると、1人あたりの料金がやや下がったとしても、1室あたりの売上(ADR)が上がりやすくなります。たとえば、2名利用が増えれば単価は抑えめでも、総額では高くなるため、同じ稼働率でも売上が伸びる状態です。

結果として、RevPARの上昇にもつながりやすく、客室単価の改善が難しい中小ホテルにとって、収益を底上げする有効なアプローチとなります。OCCが横ばいでも売上が増えるため、客室運用の改善策として大きな効果を生む指標です。

LOSとDORを掛け合わせて「客層像」をつかむ

LOS(平均滞在日数)とDORを組み合わせると、客層構成をつかむうえで一定の傾向が見えてきます。

たとえば、DORが1.0前後のときは、単身利用の比率が比較的高い傾向にあります。ただし、ビジネスでも工事・長期出張など連泊が発生するため、LOSだけで利用目的を特定することはできません。

一方で、DORが1.5〜2.0に近づくほど複数名利用が増えやすく、レジャー寄りの需要が一定割合を占めている可能性があります。  また、DORがさらに高い場合はファミリー層の比率が上がりやすいなど、宿泊構造を読み解くための参考材料になります。

いずれも立地や料金帯など複数要因と合わせて捉えることが重要です。

この分析を行うことで、どの層を増やしたいのか、どの客室タイプやプランを強化すべきかがクリアになり、料金戦略や販促の方向性も定めやすくなるでしょう。DORとLOSは、客層を正確に理解するうえで欠かせない組み合わせです。

国内ホテルのDORの目安と傾向

国内ホテルのDORは、立地や業態、客層によって大きく変わります。自社の位置づけを把握するためには、全国平均だけでなく、タイプ別・地域別の傾向を踏まえての比較が重要です。

全国的な平均DOR

全国的なDORは、観光庁「宿泊旅行統計」に掲載されている「延べ宿泊者数」と「延べ客室数」を使って算出できます。たとえば、年間の延べ宿泊者数が1億人、延べ客室数が7,000万室であれば、DORは「1億÷7,000万=約1.4」といった具合です。

国土交通省観光庁の宿泊旅行統計調査報告によると、昨年(令和6年)1年間の延べ宿泊者数は6億5,900万人であり、利用客室数は4億500万室でした。1年間の全国的なDORは「延べ宿泊者数」÷「延べ客室数」なので、約1.6になります。

ただし、これは公式に公表される数値ではなく、あくまで「参考値」として扱うものです。業態や立地、季節によって数値の変動が大きいため、自社のDORが全国平均と比べてどの位置にあるかを判断する「目安」として活用するのが適切です。

参照:国土交通省観光庁|宿泊旅行統計調査報告

ホテルタイプ別の目安

DORは、ホテルのタイプによって大きく異なります。まず、ビジネスホテルはシングル利用が中心となるため、DORは1.0〜1.3程度に落ち着くケースが一般的です。OCCが高くても人数が伸びないため、収益改善には客室単価の調整やペア利用プランの強化が有効になります。

次に、シティホテルはビジネスとレジャーが混在し、週末はカップルや家族連れが増加します。DORは平日と休日で差が出やすいものの、平均すると1.3〜1.6前後で推移しやすい傾向があります。

リゾートホテルではファミリーやグループ利用が多く、DORが1.5〜2.0程度と高めになるのが特徴です。客室タイプ(ツイン・和洋室)の構成比によっても変動し、大人数利用に適したホテルほどDORが上昇します。

旅館の場合、和室や大部屋を持つ施設が多く、2.0以上になる事例も少なくありません。客層や部屋タイプの影響がダイレクトに反映されるため、自社のDORを評価する際は「タイプ別の標準値と比べて高いのか低いのか」という視点を持つことが重要です。

地域別・客層別に見るDORの違い

DORは、地域によっても大きな差が生まれます。大都市圏では単身ビジネス利用が多く、DORが1.0〜1.2にとどまるケースが一般的です。

これに対し、観光地ではレジャー需要が一定割合を占めるため、複数名利用が増えやすく、DORが1.5〜2.0前後になるケースも見られます。ただし、地方の宿泊施設では平日の集客確保としてビジネスプランを用意するなど、用途が混在することも多く、必ずしもレジャー一色とは限りません。

また、朝夕バイキングを備えるファミリーに人気の宿泊施設では、繁忙期を中心にDORが2.0を超えることも珍しくありません。このように、DORは立地だけでなく、客層構成、料金設定、提供サービスなど複数要因で変動します。

加えて、インバウンド需要の影響も考慮が必要です。海外からの旅行者は複数名で行動するケースが多く、インバウンド比率が高い地域ではDORが上がりやすい傾向にあります。特に北海道・沖縄・京都では、海外からの家族旅行やグループ旅行が多く、国内平均を上回る要因となっています。  

さらに、OCCの動きとDORが連動する地域もあり、繁忙期は人数が増えてDORが上がる一方、閑散期は単身利用が増えて下がるなど、季節変動も大きく影響します。自社ホテルのDORを評価する際は、地域特性と客層構成を合わせて考えることが欠かせません。

DORがホテルの売上・利益率に直結する理由

DORは、客室単価や収益構造に直接影響する重要な指標です。同じ客室数・同じ稼働率でも、人数の違いによって売上と利益率が大きく変わるため、改善効果が出やすい点が特徴です。

DOR改善がGOPを押し上げるロジック

DORが上がると、客室数を増やさずに人数を増やせるため、固定費をほぼ増やさず売上を伸ばせます。たとえば、シングル利用中心でDORが1.0のままでは客室稼働だけが伸びても収益が頭打ちになりますが、同伴利用が増えて1.3や1.5に上がれば、追加コストを抑えながら室単価が高まり、GOPマージンも改善します。

つまり、DORは固定費型ビジネスであるホテル経営において、利益率を押し上げる効果が大きい効率改善のカギとなる指標です。

DORシミュレーション

DORが変わると、同じ稼働状況でも「宿泊人数の構造」が大きく変わります。ここでは、下記の前提でDOR1.0/1.5/2.0の3パターンを比較してみましょう。

  • 客室数30室
  • OCC70%(=稼働客室21室)
  • ADR10,000円

なお、ADRが一定のため客室売上は同じですが、延べ宿泊者数や1人あたり単価の違いから、どのように客層が変化するかの把握ができます。

DOR延べ宿泊者数宿泊売上1人あたり単価
1.021人210,000円10,000円
1.531.5人210,000円6,666円
2.042人210,000円5,000円

単身利用が中心(DOR1.0)の場合と比べ、カップル・ファミリー利用が増える(DOR1.5〜2.0)ほど延べ宿泊者数が増え、1人あたりの単価は下がります。ただし、表の数値だけでは「どちらが収益性が高いか」を判断できず、DORはあくまで客層構造を読み解くための指標です。

表だけを見ると「DORが低いほど1人あたり単価が高く、利益率が良さそう」と感じられるかもしれません。しかし、実際の収益はDORの数字だけでは判断できません。

まず、DORが上がるほど2名・3名利用が増え、1室あたりの宿泊売上は確実に伸びます。さらに、複数名利用の場合は、食事・売店など館内消費が自然と増えるため、付帯収益まで含めた総売上ではプラスに働くケースも多いです。

つまり、DORの高低を単純に良し悪しで判断するのではなく、自社ホテルの客層構成や季節要因と合わせて読むことで初めて意味を持ちます。DORは稼働構造を把握し、収益改善の方向性を考えるための指標です。

中小ホテルがDORを高めるための施策

DORを高めるには、客層の整理・客室タイプの見直し・料金設計・情報発信の最適化が欠かせません。現状を把握したうえで、同伴利用を増やす仕組みを段階的につくることが重要です。

具体的な施策は、下記の3点です。

  • ターゲットと客室タイプをDOR目線で見直す
  • 料金・プラン設計で同伴利用を増やす
  • OTA・自社サイトの情報設計を工夫する

順に解説します。

ターゲットと客室タイプをDOR目線で見直す

まず、現在どの客層が多いのかを把握するために、DORとLOSを基準に整理します。単身ビジネスが中心ならDORは1.0付近、カップルやファミリー利用が増えているなら1.5〜2.0の数値が見えてきます。この分析を踏まえ、客室構成を見直す方法が効果的です。

たとえば、シングル主体のフロアの一部をツインやトリプルへ転換したり、コネクティングルームを訴求したりすることで、同伴利用の増加が可能です。

また近年では、ホテルの開業や改装で融資審査を受ける際に、自治体や金融機関が1室に何人泊まる想定なのか(DOR)を事業計画の前提として確認するケースが増えています。

DORを踏まえて客室タイプや定員を設計しておくと、実際の集客力だけでなく、将来的な投資判断の面でもプラスに働くでしょう。

料金・プラン設計で同伴利用を増やす

料金設計は、DOR向上に直結する重要な要素です。カップルやファミリー向けに「2名以上でお得」「3名は割安」といった価格設定にするだけでも、同伴利用を促進できます。


また、子ども料金や添い寝設定、追加ベッドの料金も見直す価値があるでしょう。設定次第で「家族4人で泊まると割安感がある」という印象を作れれば、DORと室単価の両方を押し上げられます。


基本となる考え方は「1名利用でも満足、2名以上ならさらにお得」と感じてもらうことです。単価を大きく下げずに人数を増やすことで、売上と利益率の改善につながります。

OTA・自社サイトの情報設計を工夫する

OTAでは、人数検索や子ども有無の条件でヒットしやすい設定を整えることが重要です。ファミリールームや和洋室の写真、添い寝条件のわかりやすい説明は、同伴利用を増やす大きな後押しになります。

自社サイトでも、DORを意識した客室紹介や家族向けの特集ページを用意すると、予約動線が整い、同伴利用の増加につながるでしょう。

DOR改善はリロホテルソリューションズに相談を

ここまで紹介してきたように、DORは客室運用の質を示す重要な指標であり、客層分析や料金設計、プラン造成まで幅広い領域と結びついています。ただ、DORを戦略的に高めるには、部署横断の改善や販売設計の見直しが必要で、現場だけで進めるのは難しいケースも少なくありません。

リロホテルソリューションズでは、こうした課題に対して、収益改善・ホテル再生に特化した専門チームが伴走します。DOR・ADR・RevPARなど複数指標を掛け合わせた分析をしたうえで、客室タイプの活かし方や販売戦略、集客導線の最適化まで一貫して支援します。

自社のDORを改善し、収益性を高めたいと考えているホテル経営者にとって、弊社のサポートは確かな成果につながるはずです。

まとめ

DORは、稼働率だけではわからない客室利用の質を示す指標で、収益改善の重要な手がかりになります。ADRやRevPARと組み合わせて分析することで、ホテルが強化すべき客層や販売戦略が明確になります。
客室タイプの見直しや料金設定の工夫など、中小ホテルでも取り組める改善策は少なくありません。より精度の高い戦略設計を進めたい場合は、ホテル運営を熟知したリロホテルソリューションズのサポートを活用すれば、成果への道筋が描きやすくなるでしょう。

株式会社リロホテルソリューションズ
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【監修者情報】
株式会社リロホテルソリューションズ
「90日で黒字化」を目標に、全国リゾート地・過疎地の宿泊施設を運営してきたプロ集団です。
あらゆる課題を抱える宿泊施設様のご支援を行い、売上の確保だけでなく、収益確保や運営効率まで一貫したご支援を行います。

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